ITとともに進化する通信教育…難関大に強いZ会の受験指導

 Z会がなぜ難関大学に強いのか、そして新たに投入されたサービスの狙いは何かについて、Z会の宮原渉氏に聞いた。

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Z会の宮原渉氏
  • Z会の宮原渉氏
  • インタビューに応えるZ会の宮原渉氏
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 難関大学の入試に強いことで知られるZ会。創業から86年の長きにわたり、添削指導による通信教育で多くの受験生をサポートし、リセマムが実施したイード・アワード「通信教育」でも高い満足度を獲得している。また、長年培ってきた通信による添削指導をベースに、近年はICTの活用にも積極的に取り組み、今年5月からは「CYCLEZ(サイクルズ)」および「COACHERZ(コーチャーズ)」という2つのオンライン個別指導を新たに開始。Z会OB・OGも個別指導講師として活用するなどして、多様化する受験生のニーズに応え、学習効果のさらなる向上にも努めている。

 Z会がなぜ難関大学に強いのか、そして新たに投入されたサービスの狙いは何かについて、Z会の宮原渉氏に聞いた。

◆東大・京大合格者の1/3を占めるZ会の合格力

--Z会の大学受験生向けのサービスと合格実績についてお聞かせください。

 大きく分けて、「通信教育」「教室」「映像」の3つのサービスがあります。通信教育は、志望大別に、主要5教科の個別試験対策を行う「本科」、東大・京大やセンター試験、小論文など演習重視の対策を行う「専科」、塾予備校の季節講習のように特定の科目・分野を短期間で集中的に対策できる「特講」の3つの講座群があります。本科を例にあげると、月に1度2回分の教材が届き、テキストと映像講義(3月~8月)で入試重要ポイント・解答へのアプローチを学んだ後、実際に添削問題を解き、答案を作成して送付。答案が返却されたら、その添削指導と解説冊子、ヘルプサービス「教えてZ会」などを利用して、復習・定着させるというサイクルを繰り返します。出題される問題はすべてZ会オリジナルで、「徹底的に思考」してもらう出題にこだわり、大学合格のその先の、将来にわたって活用できる力を身に付けていただきます。

 通信教育のほかに、首都圏と関西圏、静岡県三島市での「教室」事業や、Z会の教室「東大進学教室」の講座を映像化したサービスも提供しています。合格者数(*)は、2016年度の実績で東大が1,137人、京大が901人です。

*通信教育受講生、映像コース受講生、教室本科生・講習生、および提携塾のZ会講座受講生の集計。模試のみの受験生は含まない。取材時、2017年度のデータは集計中のため2016年度の実績を記載した。

インタビューに応えるZ会の宮原渉氏
インタビューに応えるZ会の宮原渉氏

--東大・京大合格者の1/3はZ会員が占めていますが、東大・京大に特化したサービスはあるのでしょうか。

 東大・京大を第一志望とする生徒さん向けには、通信教育の講座として、本科「東大コース」「京大コース」をはじめ、専科の「東大即応演習」「京大即応演習」。特講では「大学受験スタートシリーズ(東大講座あり)」「過去問添削講座(東大・京大講座のみ開講)」「直前予想演習講座(東大・京大講座あり)」を用意しております。

 これらの講座群に加えて、進路指導を行うサービスとして「Z会プレミアクラス」を2014年度から提供しています。

 こちらは、教科指導とは別の、模試などの成績に基づいた戦略・戦術的な指導を提供するサービスです(成績認定制。本科ないし専科1講座以上の受講が条件)。毎週の濃密な情報提供と、Z会進路スタッフおよび東大生・京大生を中心としたプレミアクラスOB・OGによる学習・進路相談がサービスの中心となります。

 教材と進路指導サービスの組合せは、特に地元に塾がない地方の生徒さんからの期待が大きいと実感しています。近年は大学側が多様な学生を集めたいと考え、たとえば東大は地方出身の学生を募集しようと力を入れているにも関わらず、ネット上にあふれる情報の取捨選択ができず、また効果的な進路指導を受けられず、第一志望の受験を諦めてしまう生徒さんが多くいるという現状があります。実際に通信教育のサービスを通して生徒さんとやり取りをしていると、地方の生徒さんのポテンシャルの高さには目を見張るものがあり、ぜひこうしたサービスを積極的に活用して、より高みにチャレンジしてほしいと思っています。

 なお、プレミアクラスは成績認定制ですが、情報提供と簡易相談のみをLINEに切り出した「Z会東大京大入試応援」サービスもあります。こちらは成績認定とは関係なく、お友達検索してもらえれば登録可能です。

◆効果・教材・添削で高評価の理由

--満足度で評価するイード・アワード2016「通信教育」の「高校生・大学受験生」で最優秀賞を獲得され、特に「効果」「教材」「添削」で高い評価でした。この結果をどのように受け止めていますか。

 Z会の「教材」は、大学で出題された過去問の流用ではなく、段階に応じて思考力・表現力を効果的に身に付けるために「オリジナル問題」にこだわっております。また、「添削」は、Z会の指導の根幹です。そこには当然ながら、「効果」が伴うものと確信しております。Z会がこだわり抜いている強みの部分、「ここを見てほしい」という部分を評価していただき、非常にうれしいですね。

 日本の教育を考えると、大学入試は、知識の有無で合否が決まるものであってほしくないと常々思っています。解答とは、設問で問われていることに対して、自分が理解している内容を、採点官に伝わるように表現することが求められています。これは、いわば大学と志願者のコミュニケーションの手段といえます。それをブラッシュアップしていくのが我々の添削指導であり、他社と比べたときのZ会の大きな特長だと思っています。

 Z会の添削指導では、まさに同じようなコミュニケーション手段を用いて、解答に何が足りないかといった指摘を細かく行っていきますので、実戦力がつくという組み立てになっております。

◆本質的な学びと必要な学び

--Z会が考える「本質的な学び」「必要な学び」について聞かせてください。

 これからの世の中をよりよく生きていくために必要なのは、いろいろな知識を組み合わせて思考し、その思考したことを相手に伝わるように表現する力だと思います。今の教育制度は、一定レベルの知識を持った人材をたくさん養成することには非常に長けたシステムですが、そこから突き抜けて、世界で通用するような人材を輩出するに至っていない。この問題が、今後の教育制度改革の根本にあるものです。こうした現状を踏まえて、我々Z会がどのような役割を持つべきか。それは、世界で通用する人材を育てていくことだと思います。

 「先生の言ったとおりの手順で機械的にまとめました」というような解答では、ひょっとしたら大学入試でもそれなりにうまくいくかもしれませんが、将来への応用がきかないはずです。テストで点を取ることや、大学に合格することは、もちろん大きな「目的」ではありますが、長い人生でみれば「手段」の一つに過ぎなかったりします。大学に進学してから先、どう育っていくのか、我々Z会はそこまで踏み込み、そのための添削指導に取り組んでいます。

インタビューに応えるZ会の宮原渉氏
インタビューに応えるZ会の宮原渉氏

◆ITが実現するきめ細やかな個別指導

--今年5月から始まったオンライン個別指導の「CYCLEZ」「COACHERZ」について教えてください。

 Z会の教材は使いこなしていただけると非常に力がつくと思うのですが、誰からも指導を受けず、一人で添削問題に取り組むのは実際にかなりのパワーが必要で、「続けられなくなる」生徒さんが出るのが通信教育の一つの課題です。そこで自学自習に不安のある生徒さんに向けて開発したのが「CYCLEZ」です。コーチが添削問題の内容についてオンラインの個別指導を行うことで、ペースメーカーの役割を果たします。また、「わかったつもり」で終わらないように、コーチングの手法を用いて内容の理解と定着を図ります。

 もう一つの「COACHERZ」は、プロ講師による映像授業と、コーチによるオンライン個別指導の“ダブル指導”のサービスです。反転式ということで、生徒さんは事前に課題を提出し、その課題状況をコーチが確認のうえで授業を実施するので、その生徒さんに必要なことを細部にわたって指導できるのが特長です。

 いずれもコーチを務めるのは、専用のトレーニングを受けた、東大など難関大学に在籍するZ会OB・OGです。OB・OGには優秀な方がたくさんいますし、いろいろなノウハウを持っています。先程のプレミアクラスもそうですが、こうしたOB・OGの方々と一緒に協働することで、地方のポテンシャルのある生徒さんにとってプラスとなるようなサービスを作りたいと考えています。

◆入試改革を見据えた新講座「Asteria」開講

--今年3月に開講したオンライン講座「Asteria(アステリア)」は、2020年度の大学入試改革を見据えているそうですが、そのサービス内容と狙いについて教えてください。

 まず「英語4技能講座」と「数学新系統講座」を3月に開講しました。「英語4技能講座」は「聴く・読む・書く・話す」を総合的に伸ばす講座で、新大学入試にも適応しています。「数学新系統講座」は数学を「代数・幾何・解析・統計」の4領域に分け、分野間の関連性を重視するとともに、ビッグデータなど今後ますます重要になってくる「統計」の分野を強化しています。

 これら2講座の特徴としてはもう一つ、学年やカリキュラムに縛られない、自分に合ったレベルで学習を進められる「アダプティブ(適応)学習」があります。1問解くごとに、解答の正否や学習履歴、習熟度などから総合的に判断し、その人に適したレベルの問題をリアルタイムで出題する仕組みです。すべての学習はタブレットで完結します。

 先進的な試みですし、新入試がまだはっきりしない部分がありますので、我々としても現行入試との両にらみという状況ではありますが、入試改革を見据えた感度の高い保護者が多いからでしょうか、受講者の多くは新入試の対象となる中学3年生以下、それも中学1年生を中心とした生徒さんです。今の学校の授業とは別の学習にもかかわらず、どんどん演習を進めている生徒さんもいらっしゃいます。

--Asteriaで今後開講予定の講座があれば教えてください。

 7月には第3弾として、中学生を対象とした「総合探究講座」を開講します。他者と協働して世の中の課題を解決する力を養う本講座は、「協働学習」「個人学習」「探究学習」で構成されます。このうちの探究学習の初回は、マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ所長の伊藤穰一氏にご登壇いただき、7月28日にライブストリーミングを実施します。

--ありがとうございました。

 Z会の基本はあくまでも添削指導であるが、多様化する受験生のニーズには可能な限り答えていく構えだ。

 今回の取材で従来の通信教育では実現できなかった「人を介した指導」が、インターネットやタブレット、映像といったテクノロジーの進化によって可能になってきていると感じた。全国の隅々まで受験に関する情報がいきわたり、プロの授業や指導が受けられることで、大都市と地方の教育格差は小さくなっていきそうだ。
《柏木由美子》

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