「スポーツ嫌いじゃダメですか?」鈴木大地長官が日本人に持ってほしい危機感

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スポーツ庁 鈴木大地長官
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  • スポーツ庁 鈴木大地長官(右)
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  • スポーツ庁 鈴木大地長官は水泳選手時代にソウル五輪男子100m背泳ぎで金メダルを獲得(1988年9月24日)
スポーツ庁の調査によると、運動やスポーツが「嫌い」もしくは「やや嫌い」な中学生の割合は16.4%でした(平成28年度現在)。

それを受けてスポーツ庁は今年3月に策定した第2期「スポーツ基本計画」で、5年かけて「スポーツ嫌い」の生徒を8%に半減させる目標を打ち出しました。しかし、「スポーツで嫌いで何がいけないんだ」など計画に反発する声もありました。そもそもスポーツに興味がない人は、スポーツ庁の役割や存在意義すら疑問視することも。

そこでスポーツ庁の鈴木大地長官に聞いてみることにしました。かつて水泳選手として活躍した鈴木長官は1988年ソウル五輪に出場。競泳男子100m背泳ぎで金メダルを獲得しています。スポーツ庁が創設されると初代長官に就任しました。

鈴木長官、スポーツ嫌いじゃダメですか?(聞き手はCYCLE編集部・大日方航)

前回の【スポーツ庁 鈴木大地長官に聞く】:スポーツで稼ぐ空気を生み出す?

---:スポーツに興味ない人の中では、「スポーツ庁の存在意義が感じられない」という声もあるようですが、いかがでしょうか。

鈴木大地長官(以下、鈴木長官):こういう仕事をしているとスポーツ関係者と話をしたり、仕事をする機会が圧倒的に多い。だからこれまで、「スポーツに興味がない、関心がない」という人と話をするチャンスがなかったのです。

そして今、それに反論してくれる人がいることはありがたいことだと思っています。「そういう人たちから意見を聞ける」という意味では一歩前進しています。「なぜスポーツに関心がないのか、なぜ嫌いなのか」をよく聞いて、分析し、それに対してこれから対策を立てればいいなと思っています。

いろいろ聞いてわかってきたのが、「スポーツ嫌い」というより「体育嫌い」だということです。特に学校での保健体育の授業や部活動など、若いころのスポーツとの接し方が、生涯のスポーツライフに影響する。我々はよく研究・分析し、対策を立てていかなくてはいけない。「体育の授業はあまり好きではなかったけれど、今は楽しくスポーツジムに通っている」という人もたくさんいますよね。

スポーツは私たちの生活に広く関係しています。決してスポーツ庁の存在意義がないわけではなく、皆さんの陰で存在意義を出せると思います。それから、スポーツをしない人は、スポーツに取り組まなくても、どういった形であれ将来的に健康な体を保ち、できるかぎり周囲の迷惑にならないように生きていければいいと思います。運動をしないまま生涯を送ると、なかなか難しいかと思いますが。

---:「スポーツ嫌い」「体育嫌い」な人への施策としては、どういったものを考えられていますか。

鈴木長官:まず体育とスポーツの違いですが、「体育」はもともと教育、さらには軍事教練からきています。例えば礼節を重んじ、行進や整列をして何かするなど、それはそれで教育的価値のあるものです。

しかし「スポーツ」はそれだけではなく、これまでの教育的価値のあるものにプラスして、楽しむものという部分を若い人たちにも訴えかけていきたいです。スポーツ(sports)の語源はラテン語で「気晴らし」とか「楽しみ」という意味があるのです(デポルターレ deportare)。今回、体を動かす本来の「楽しみ」を体感できるように保健体育の学習指導要領にも反映できたことは、大きな前進であると思います。

運動神経というものは、だいたい小学校卒業くらいまで伸びていくそうです。おじいちゃんや、おばあちゃんになってから一輪車に乗ろうとしてもなかなか難しい。しかし、子どもならすぐ覚えてしまう。運動神経が完成する時期である小学生になる前、つまり幼児期の段階でもっと運動神経をつくってしまうような取り組みをしていきたいです。

今の幼児期以下の日本人は、好きか嫌いかは別にして「みんな運動をできるようにしてしまおう」と。好き嫌いにまで踏み込むつもりはないですが、とりあえず「運動ができる」という日本人が増えていった方がいいと思います。


---:福井県の話ですが、小中学校で実施される「全国体力調査」で、圧倒的な成績を誇るそうです。でも2016年度の調査で「体育の授業が楽しい」と答えた中学2年生男女の割合が全国平均を下回ったと言う報道がありました。「とりあえず運動ができる」という状態をつくりだせたとしても、運動嫌いの学生の割合は変わらないか、むしろ増える可能性もあるのでは?

鈴木長官:運動ができればいつでも好きになる機会があると思います。運動嫌いで苦手だと、スポーツをやったこともない人も多いと思いますが、できるのであればちょっとしたことで、友だちとの付き合いや職場でスポーツをやってみるか、というようになってくるのではないでしょうか。

自分自身の意識とは別に、何かスポーツに触れるきっかけがたくさん出てくると思うのです。(スポーツは)やったらやったで、案外楽しかったりしますから。

---:スポーツ嫌いのままではダメなのでしょうか?

鈴木長官:嫌いでもいい。強制はしない。そこまで国がやるべきものではないです。

ただ、運動をしないことにより生活習慣病になるリスクは高まってしまいます。そういう時には、医療費として国民全体に多少自分がコストをかけてしまっていることになりますよね。昨今、国民医療費は右肩上がりなので、このまま上がり続けたらどうなのか、という危機感を日本人として持っていただきたいです。

「日本人としての責務」とまでは言いませんが、若く健康なうちはわかりにくくても「この先どういう世の中になっていくのだろう?」と考えるきっかけになればいいと思います。

(了)

競泳選手時代のスポーツ庁 鈴木大地長官。1988年ソウル五輪男子100m背泳ぎで金メダルを獲得 (c) Getty Images

●鈴木大地(すずき だいち)
1967年3月10日生まれ、千葉県習志野市出身。元水泳選手。スポーツ庁初代長官。1988年ソウル五輪男子100m背泳ぎで金メダルを獲得。当時、スタートからしばらくもぐったままで水中を進む「バサロ泳法」が話題になる。1993年順天堂大学大学院体育学研究科コーチ学専攻修了。2003年9月から世界オリンピアンズ協会理事を3期に渡り務め、2013年4月より日本オリンピアンズ協会会長に就任。同年6月から日本水泳連盟会長を3年間兼任した。2015年10月より現職。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会理事も務める。2017年7月に国際水泳連盟(FINA)理事に就任することがFINA総会で承認された。

【スポーツ庁 鈴木大地長官に聞く】スポーツ嫌いじゃダメですか?

《大日方航@CycleStyle》

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