【親子でめぐる登録有形文化財】数奇な運命に注目、国際基督教大学を訪ねて<学び舎編4>

教育・受験 その他

車庫
  • 車庫
  • 書院
  • 泰山荘の中心的な施設である「高風居」※高はハシゴダカ
  • 泰山荘の入口となる表門
 高崎経済大学地域科学研究所特命教授、NPO産業観光学習館専務理事の佐滝剛弘氏による「登録有形文化財」Web上ショートトリップ。原則、無料で見学でき、休日に足を伸ばせば見学できる文化財を紹介する。

 第1回の「東京大学」第2回の「学習院大学」第3回の「横浜国立大学」に続く、第4回は「国際基督教大学」。一般にはあまり知られていない「登録有形文化財」を、親子一緒に訪ねてみてはいかがだろうか。

登録有形文化財って何?



 登録有形文化財は、古い建物や施設を活用しながら緩やかに保存していこうという制度のもと、全国各地で登録が進んでいる文化財です。現在、日本で1万1千件を超える国の登録有形文化財があります。

 登録されるのは築50年以上経っていて、その地域の景観上重要なものや二度と建てることが難しい建物や施設です。国宝や重要文化財よりも、もう少し軽い感覚で登録される、「(ヘビーではなく)ライトな文化財」と言ってよいかもしれません。実はみなさんが誰でも知っているものも登録されています。たとえば東京なら、東京タワー。大阪なら通天閣。どちらも都市のシンボル的存在ですね。また、旅館やレストランなど、施設の中で泊まれたり食事ができる文化財もかなりあります。

登録有形文化財・学び舎編その4:国際基督教大学(ICU)



 登録有形文化財の学び舎をめぐる旅の4回目は、国際基督教大学です。

 「ICU」の略称で知られる国際基督教大学は、眞子さま、佳子さまの入学でさらに注目された大学ではないでしょうか。私自身は今から40年近く前の大学受験時、当時まだ非常にめずらしかったリベラルアーツ(教養教育)の学部があるということで、志望校の候補のひとつに入っていた大学でした。今も学部は教養学部のみ。三鷹市の郊外、武蔵野の雑木林の中に校舎が点在するキャンパスは、なんと東京ドーム13個分の広さを誇る「規模は小さいけれど敷地はビッグな大学」です。

山田敬亮の別荘「泰山荘」



 このキャンパスの一番奥に「泰山荘(たいざんそう)」と呼ばれる一角があり、ここにある6つの建物が登録有形文化財となっています。泰山荘は戦前の日産財閥で活躍した実業家山田敬亮の別荘として建てられたもので、建物の多くは個々に移築されたものです。

 泰山荘の中心をなすのが、「高風居(こうふうきょ※たかはハシゴダカ)」と名付けられた茶室。畳一畳分の書斎に茶室と水屋を付け加えた草庵(そうあん)です。「草庵」とは、藁や茅の屋根がふかれた建物のことです。

 この小さな書斎は、もともと北海道の名付け親として知られる探検家の松浦武四郎厳島神社や伊勢神宮など全国の社寺から集めた古材を用いて、晩年に神田の自宅の一角に建てたもので、彼の死後、「私が死んだら燃やしてくれ」と家族に伝えていたにもかかわらず、紀州徳川家の当主徳川頼倫(よりみち)の手により命永らえ、最終的に泰山荘に運ばれたという数奇な運命をたどりました。

 また、昭和初期に建てられた「書院」は二間の座敷が配された上品な建物で、今も大学の行事に使われています。同じ時期に造られた自動車をしまう「車庫」も、文化財としてはめずらしいものです。木造の寄棟造の建物で、建てられた当時、車をこうして収納していたことから、いかに大切なものだったかがしのばれる建物です。

 ほかに、「」や「表門」、「待合(茶室に付属する建物で、名前の通り茶席に招かれた客が茶室に入る前に待つために建てられたもの)」などが点在していて、ここが大学のキャンパスの中であることを忘れさせてくれます。

 普段は非公開ですが、10月の学園祭に合わせて公開され、事前予約をすれば高風居の中も学生スタッフの案内で見学することが可能です。

きっかけは登録有形文化財、親子キャンパス散歩のススメ



 以上4回にわたって都内と横浜にある大学内の登録有形文化財をご紹介しました。一口に「学び舎」と言っても、校舎だけでなく、厩舎に石碑、そして茶室と、バラエティに富んだ施設が残されているのです。それらを見て歩くだけでも、まったく新しい“キャンパス散歩”ができることを知っていただけたのではないでしょうか。

 大学を中心に訪ねた、リセマム連載コラム「親子でめぐる登録有形文化財」学び舎編。次回からは、内部を見学できる博物館・資料館・美術館などを紹介します。どうぞお楽しみに!
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 地域の歴史や文化と深く結びつき、築50年以上の歴史的建造物や施設が登録される国の登録有形文化財。民家や病院、工場、駅舎、市庁舎などさまざまな建物や施設1万1千件が登録されている。その多様性や活用法など登録有形文化財の概要を豊富な写真とともにわかりやすく伝える初めての一般書として、本連載著者である佐滝剛弘氏による「登録有形文化財 保存と活用からみえる新たな地域のすがた」(勁草書房)が2017年10月に刊行された。地方創生や観光資源の再発見に注目が集まる中、登録有形文化財にも光が当たりつつある。「世界遺産や国宝などの著名な建物は見飽きた」「もっと身近な文化財を知りたい」という子ども、保護者にぴったりな“新発見連続”の一冊。

佐滝 剛弘(さたき よしひろ)
(高崎経済大学地域科学研究所 特命教授/NPO産業観光学習館 専務理事)
1960年、愛知県生まれ。東京大学教養学部(人文地理専攻)卒業。NHK報道局・編成局などで、「NHKスペシャル」「クローズアップ現代」など数多くの紀行番組を制作。現在、NPO産業観光学習館で群馬・埼玉県の絹産業を中心とした観光振興策の策定やツアーの企画・引率を行っている。世界遺産は60か国およそ400件、国登録有形文化財はおよそ1万件を踏破。どんな年代の人にもわかりやすく、知的好奇心を喚起する解説には児童生徒からも定評がある。おもな著作は「高速道路ファン手帳」(中公新書ラクレ 2016)「それでも、自転車に乗りますか?」(祥伝社新書 2011)「世界遺産の真実―過剰な期待、大いなる誤解―」(祥伝社新書 2009)など。

《佐滝剛弘》

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