【親子でめぐる登録有形文化財】康成・漱石・芥川…文学者の息吹残る鎌倉文学館へ<美術館・博物館編2>

 高崎経済大学地域科学研究所特命教授、NPO産業観光学習館専務理事の佐滝剛弘氏による「登録有形文化財」Web上ショートトリップ。休日に足を伸ばせば見学できる文化財を紹介する。第6回は「鎌倉文学館」。

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【親子でめぐる登録有形文化財】康成・漱石・芥川…文学者の息吹残る鎌倉文学館へ<美術館・博物館編2>
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 高崎経済大学地域科学研究所特命教授、NPO産業観光学習館専務理事の佐滝剛弘氏による「登録有形文化財」Web上ショートトリップ。11月は「学び舎編」として、原則無料で見学できるキャンパス内の文化財を4か所紹介した。12月は、親子で行きたい首都圏の美術館や博物館を取り上げている。

 美術館・博物館編の第1回は、東京都世田谷区にある「五島美術館(ごとうびじゅつかん)」を紹介した。今回は、美術館・博物館編の第2回として、神奈川県鎌倉市にある「鎌倉文学館」を取り上げる。

「登録有形文化財」って何?
基礎からわかる!親子でめぐる登録有形文化財

<学び舎編>の一覧
第1回 東京大学
第2回 学習院大学
第3回 横浜国立大学
第4回 国際基督教大学


文士の息吹が残る「鎌倉文学館」



 冬でも暖かな日差しが降り注ぐ鎌倉・由比ヶ浜。湘南の海を背に、江ノ電の由比ヶ浜駅から住宅街を歩いて7~8分、小さなトンネルを抜けると、豪華な邸宅が目の前に広がります。昭和初期に建てられた加賀百万石の前田家の別邸である壮大な洋館は、現在、鎌倉市が所有・運営する鎌倉文学館として一般公開されています。

 鎌倉は、豊かな自然や長い歴史を有する古都。横須賀線が開通して東京から訪れやすくなると、鎌倉に滞在したり、住まいを移す文人が次第に増えました。「鎌倉文士」という言葉も生まれたほどです。鎌倉にゆかりのある文学者といえば、川端康成、久米正雄、夏目漱石、芥川龍之介、与謝野晶子、吉屋信子など、優に300人を越えます。鎌倉にゆかりのある数多くの文人の足跡を紹介するために、旧加賀家別邸をそのまま利用して開館したのが鎌倉文学館です。

 鎌倉は文人を引き寄せただけでなく、旧大名家や貴族などの華族にとっても東京に近い貴重な保養地でした。加賀家は明治の中頃にこの地を手に入れ、和風の邸宅を築きます。火事での焼失などを経て、現在の洋館が完成したのは、1936年(昭和11年)のことです。戦後はデンマーク公使や佐藤栄作元首相などが別荘として使った時期もありましたが、1983年(昭和58年)に鎌倉市が寄贈を受け、文学館として整備しました。

 建物は高台に南に面して建てられており、二階建て。ベランダからは湘南の海を一望できます。木組みを壁に残す「ハーフティンバー」という様式が使われ、スパニッシュスタイルも見られる一方、切妻の屋根の造りなどは和風のテイストも併せ持っていて、とても落ち着いたたたずまいです。本館前には芝生と生垣に覆われた広い庭園があり、その先には初夏から秋にかけて色とりどりの花をつけるバラ園もあります。

 鎌倉を愛した華族が贅を凝らして建てた建築に身を置いて、やはり鎌倉を愛した文学者たちの息吹を感じる、そんな贅沢な時間がこの文学館では過ごせます。館内では年に数回特別展が開かれますが、2017年12月16日から2018年4月15日までは、「鎌倉文学館収蔵品展 『作家と歩く鎌倉2 その2 由比ヶ浜・材木座方面』」が開かれます。

 なお、鎌倉文学館のすぐ近くには、作家の吉屋信子の住まいをそのまま公開している「吉屋信子記念館」があり、こちらも2017年に主屋と門および塀が登録有形文化財に登録されました。設計は、五島美術館と同じ、吉田五十八(よしだ いそや)です。公開日は限られていますが、こちらもお勧めのスポットです。

 次回は「美術館・博物館編その3:遠山記念館」をご紹介します。

鎌倉文学館


場所:神奈川県鎌倉市長谷1-5-3
開館時間:
 3月~9月 9:00~17:00(入館は16:30まで)
 10月~2月 9:00~16:30(入館は16:00まで)
休館日:毎月曜日(祝日の場合は開館)、年末年始(12月29日~1月3日)、展示替期間、特別整理期間など
※5・6月、10・11月は月1回の休館日を除き開館
観覧料:展覧会によって異なるため、Webサイトで確認すること
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 地域の歴史や文化と深く結びつき、築50年以上の歴史的建造物や施設が登録される国の登録有形文化財。民家や病院、工場、駅舎、市庁舎などさまざまな建物や施設1万1千件が登録されている。その多様性や活用法など登録有形文化財の概要を、本連載著者である佐滝剛弘氏が豊富な写真とともにわかりやすく伝える一般書「登録有形文化財 保存と活用からみえる新たな地域のすがた」(勁草書房)が、2017年10月に刊行された。新聞書評欄はもちろん、各専門誌でも好評だ。子ども、保護者にぴったりな“新発見連続”の一冊。

佐滝 剛弘(さたき よしひろ)
(高崎経済大学地域科学研究所 特命教授/NPO産業観光学習館 専務理事)
1960年、愛知県生まれ。東京大学教養学部(人文地理専攻)卒業。NHK報道局・編成局などで、「NHKスペシャル」「クローズアップ現代」など数多くの紀行番組を制作。現在、NPO産業観光学習館で群馬・埼玉県の絹産業を中心とした観光振興策の策定やツアーの企画・引率を行っている。世界遺産は60か国およそ400件、国登録有形文化財はおよそ1万件を踏破。どんな年代の人にもわかりやすく、知的好奇心を喚起する解説には児童生徒からも定評がある。おもな著作は「高速道路ファン手帳」(中公新書ラクレ 2016)「それでも、自転車に乗りますか?」(祥伝社新書 2011)「世界遺産の真実―過剰な期待、大いなる誤解―」(祥伝社新書 2009)など。

《佐滝剛弘》

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