どう決める?クラス替え・小学1年生のクラス…春まで親ができること

 神奈川県と埼玉県で計22年、小学校教諭として教壇に立ち、クラス担任としての経験も豊富な小田原短期大学特任講師の鈴木邦明氏に、クラス替えの方法や保護者ができることについて聞いた。

教育・受験 小学生
新しいクラス、どうやって決めてるの?(画像はイメージ)
  • 新しいクラス、どうやって決めてるの?(画像はイメージ)
  • まずは「成績順」で新クラスに子どもたちを振り分ける。(図:クラス分けイメージ)
 春の「クラス替え」は、親も子どももドキドキするもの。数年に一度、あるいは毎年迎える学校もある新しいクラス決めだが、どのように決めているのか、いつ決まるのか、そして担任はいつ決定されるのかなど、詳細を知る保護者は多くない。

 神奈川県と埼玉県で計22年、小学校教諭として教壇に立ち、クラス担任としての経験も豊富な小田原短期大学特任講師の鈴木邦明氏に、クラス替えの方法や保護者ができることについて聞いた。

クラスの決め方・クラス替え方法



 国公私立に関わらず、多くの学校において、クラス替えは基本的には成績順で行っている学校が多いです。成績順で基本的に分ける理由としては、学習の質を均等に保つことなどが関係しています。

 まず、成績順の基準となるテストなどを決めます。小学校などの場合、中学校のように定期テストがないことが多いので、学年のまとめのテストなどを用いることが多いです。

 今回は、公立小学校を例に、1クラス男女各15人、1学年3クラスの合計90人ということでシミュレーションしてみましょう。点数は、国語100点、算数100点、理科100点、社会100点の合計400点を用いるとします。

まずは「成績順」



 まず、クラス替え前の、元のクラス内の児童生徒を男女別に、それぞれ成績順で並べ、元1組の男子の1番から15番までを決めます。女子やほかのクラスも同様に進めます。

まずは「成績順」で新クラスに子どもたちを振り分ける。(図:クラス分けイメージ)
図:クラス替えのイメージ図

 その後、説明図にあるように、A組、B組、C組に順に並べていきます。A組、B組、C組は、新しい学年のクラスのことです。元1組男子はA組に成績が1番の子どもを入れたら、B組に2番、C組に3番、そしてA組に4番…と、順に入れていきます。

 つぎに、今回のケースでは、女子はC組に元1組の1番の子どもが入るようにします。元2組は、男子はB組が1番、女子はA組が1番、元3組は、男子はC組が1番、女子はB組が1番となるようにして、順に入れていきます。そうすると、基本となる3つのクラス(A組、B組、C組)が出来上がります。まずこれで、第一段階が終了です。

つぎは子ども、そして親同士の相性にも配慮



 第二段階では「調整」を行います。どのような調整を行っていくのかは、学校によっても、学年によっても異なりますが、どの学校・学年も「人間関係」への配慮した調整を行っていることは間違いないでしょう。

 まず、第一段階の結果内で、あきらかに相性の悪い子どもの組み合わせを変えていきます。それまでの担任の情報や過去の担任の情報などを参考に、同じクラスにしない方がよいと思われる組み合わせを解消していきます。多くの学校では、その学年であった大きなトラブルや親からの訴えなどを記録しておくノートなどがあり、過去の情報も含めて、人間関係の調整を行います。教員は異動などがあります。重要な情報がきちんと引き継がれるようにそういったことをしています。

 入れ替えが必要な場合も、成績に配慮しながら変更します。たとえば、順位が13番の子どもを変える必要が出てきたら、12番や14番の子どもと変えるようにするということですこのとき、子どものことだけでなく、親の組み合わせにも配慮が必要な場合は、なるべく対応します。何年も学校に通っていると、子どもだけでなく、親同士がトラブルを起こしている場合もあります。そういった情報があらかじめ学校に入っていれば、対応することが多いです。

カリスマ・スポーツ・音楽性…最後に見るのは子どもの気質



 クラス替えの最後には、子どものリーダー性」と「スポーツ」の得意不得意にも配慮します。

 まず、リーダー性については、新しいクラスの中心に立ち、みんなを引っ張っていってくれるような子どもを各クラスに置くことが多いです。リーダー性のある子どもが偏ってしまうと、学級経営や学年経営などに支障をきたす場合が出てくるためです。

 スポーツに対する積極性や得意、不得意についても同様です。運動会、球技大会など、スポーツ行事の際にあまりに差が出ないよう、足の速い子どもを分ける…などに配慮します。

 このほか、学校や学年によって配慮する場合があるものとしては、「音楽」があげられます。学校で合唱コンクールなどがある場合は、ピアノが弾ける子どもが散らばるように配慮しています。

新クラス&担任の先生、決まるのはいつ?



 これまで説明したような新しいクラス決めは、たいてい2月末から3月上旬に行われることが多いです。本決定の前に、仮でA組、B組、C組のように決めておき、その後、転入生などがあれば、逐次見直して対応します。

 どの学年をどの先生が持つのかが決まるのは、3月の末であることが多いです。学校によっては、卒業式、修了式が終わってからのこともあります。受け持つメンバーが決まった所で、教室配置などを考えながら、1組、2組、3組などを決めます。学年主任は、職員室からもっとも遠い教室に入ることが多いです。そうすれば、自分の教室に行くまでに、若い先生たちの教室を見ながら行くことができるからです。そういったさまざまなことを加味しながら、クラスや教室が決まっていきます。

事情が異なる小学1年生の新クラス



 小学1年生だけは、少し状況が違っています。新しく入学する児童について、小学校が持っている情報は多くありません。そこで、現在は幼保小連携」を推進し、小学1年生のクラスのメンバーを決める前に幼稚園・保育園の先生からさまざまな情報を入手しています。それ以外の時期でも、幼稚園・保育園と小学校はさまざまな形で交流を進めています。

 しかし、そうやって情報を入手したうえで組み合わせを作るにしても、どうしても不安が残ります。そこで、学校によっては、4月の始めの時点のクラスを仮のクラスとしている、というところもあります。その1か月の間にメンバーの特性を把握し、そのうえで5月から正式な1年生クラスとしてスタートする方法です。1年生は「学び方を学ぶ」時期であると言われます。1年生での学びは、その後に大きく影響を与えるため、クラス決めも重要であることがわかります。

1年生の配慮ポイントは月齢と地域



 小学1年生において一般的に気を配っていることは月齢地域などです。体格において4月生まれと3月生まれの差が大きいのが1年生です。そういったことから、月齢バランスも考えてメンバーを分けています。

 地域について配慮するのは、下校時のことを考えてのことです。通学への不安は、小学校に入学した時点で多くの子どもが抱いていることでしょう。ですから、下校時にはなるべく一緒に帰る子どもがいる状況となるよう、学校側が配慮します。

実は親も関係大…春までに親ができること



 ここまでクラス替えについてお話してきましたが、いかがでしたでしょうか。我が子を思い、仕組みを知ればなおさら、「来年度は〇〇ちゃんと同じクラスにしてください!」と伝えたくなることもあるでしょう。でも、直接担任に意見したとしても「そういったことはできませんので…」と断られるはずです。そこで最後に、クラス替えに不安な保護者の方に、親としてできることについて少しだけお話します。

 保護者が学校のクラス替えに積極的に意見することはできませんが、少なくとも、親としてできることは、担任に知らせておくとよい情報があれば伝えておいてください。つまり、一緒にしてほしい子の名前を伝えるのではなく、担任が把握していないような揉め事などがあれば、そのことについて事前に情報を伝えておくということです。

 最近は、小学生でもSNSなどをやっていることもあります。そういった中でトラブルを起こしている相手がいるのであれば、そのことを担任に伝えておくのです。学校内のことであれば、多くの場合、担任は承知しています。しかし、学校外の習い事、たとえば、野球やサッカーなどのスポーツの習い事でも揉め事などは知らないことが多いです。

 伝えたからといって担任は「○○さんと分けます」とは言わないはずです。けれども、組み合わせを作る際、配慮はするはずです。もちろん、担任もできれば次年度に揉めないような編成にしたいと思っています。そういったことのために、保護者が担任に情報を寄せることは悪いことではないと思います。

 伝え方としては、年度末などに面談があれば、その場がよいでしょう。面談などがない場合は、懇談会や保護者会のあとに少し残り、直接担任に伝えるとよいでしょう。文書で伝える場合、連絡帳は避けた方がよいです。連絡帳はほかの子どもが見てしまう場合もあります。封書などを使って、担任にだけ届くよう工夫できるとよいですね。

 一年間、子どもがどんな環境の中で暮らすことができるのかということはとても大事なことです。学校において一度決まったもの(クラスのメンバーや担任など)が変わることはほとんどありません。そういったことが決まる前に、親としてできることをやっておくことをお勧めします。

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鈴木 邦明(すずき くにあき)
平成7年 東京学芸大学教育学部 小学校教員養成課程理科専修卒業。平成29年 放送大学大学院文化科学研究科生活健康科学プログラム修了。神奈川県横浜市、埼玉県深谷市で計22年、小学校教諭として勤務。現場教員として子どもたちの指導に従事する傍ら、幼保小連携や実践教育をテーマとする研究論文を多数発表している。こども環境学会、日本子ども学会など、多くの活動にも関わる。平成29年4月からは小田原短期大学特任講師に着任。子どもの未来を支える幼稚園教諭、保育士の育成や指導に携わる。
《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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