担任の先生との相性が不安…先生のホンネは?親ができることをアドバイス

 保護者にとって、学校の担任の先生と我が子の相性は悩みのタネのひとつでしょう。担任と子どもの相性が良い場合はともかく、逆の場合は不安が尽きません。先生と親の両方を知る立場から、親ができることを中心にお伝えします。

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「担任の先生と子どもの相性が良くないようで…」先生と親の両方を知る著者が、親ができることを中心にお伝えする(画像はイメージ)
  • 「担任の先生と子どもの相性が良くないようで…」先生と親の両方を知る著者が、親ができることを中心にお伝えする(画像はイメージ)
 保護者にとって、学校の担任の先生と我が子の相性は悩みのタネのひとつでしょう。担任と子どもの相性が良い場合はともかく、逆の場合は不安が尽きません。小学校で22年間クラス担任を務めた「先生」の立場と、一人の子どもの「親」の立場、その両方の視点から、親ができることとできないこと、した方がいいこととしない方がいいことなどをお伝えしたいと思います。

 早速「担任と子どもの相性」について話を進めるにはまず、大前提があります。それは、これからの話は「あまりに非常識な担任の話ではない」ということです。残念ながら、ごく少数ではありますが、学校教員の中にはあまりにも非常識な人がいます。マスコミなどで取り上げられるような教員です。そういった教員は「子どもとの相性が合う・合わない」という次元の話ではなく、まったく別物の話になります。ですから、ここでは大多数の、ある程度まともな教員が子どもの担任だ、ということで話を進めていきます。

原則、先生は3月まで変わらない…どう付き合うか



 まず、親が意識しておいた方がいいことは「基本的には担任は3月まで変わらない」ということです。クラスで何かあった時に、親として担任や学校を責めることはできますが、それが良い方向に働くとは限りません。しかも、多くの場合、それは悪い方向へ働いてしまいます。担任と親や子どもの関係が悪くなってしまうと、3月までの日々でもっともつらい思いをするのは「子ども」です。相性の悪さ、担任のミスなどがあったとしても、できるだけ良い関係を保てるとよいでしょう。

 もし担任との関係が悪化すれば、学校での子どもの学びの質が極端に下がってしまうことになります。教育の質は、児童の精神状態が大きく影響します。子どもが素直に担任の話が聞けないような心理状態では、勉強どころではありません。学校での居心地の悪さがきっかけで、友達とのけんかなどのトラブルを招く可能性も高くなります。悲しいことですが、居心地の悪さが不登校につながり、ひきこもりへと進んでいってしまうケースもあると聞きます。

 私が実際に耳にしたことのある担任とのトラブルでは、親が担任に不信感を募らせ、子どもに常にボイスレコーダーを持たせた、というケースがあります。その親は録音したものを最終的に教育委員会に持って行ったそうです。完全に関係がこじれてしまっているのがわかります。こういった状態では、まともな学習や生活ができるはずがありません。

子どもと先生の関係、教育心理学で読み解くと…



 子どもと担任の先生の関係は、良好であることに越したことはありません。それは前述の通り明らかですが、ここでは、担任と子どもの関係を良好に保った方がいい理由について、教育心理学に基づいて考えてみましょう。

 まず「ハロー効果(後光効果・光背効果)」についてです。「ハロー効果」とは、先生が子どもが持っているひとつの特性を、ほかの特性についても一般化してしまう、というものです。たとえば「成績が良い子どもは、生活面や性格面でも肯定的に判断してしまう」というものです。これは、良い方向にも、悪い方向にも作用する現象です。担任は子どもとの関係が悪くなると「あの子は態度が悪いから、ズルをするかもしれないし、ちゃんとやらないはずだ」というように決めつけて、否定的な判断を下してしまうことがあります。

 「ハロー効果」と同様に、「ピグマリオン効果(教師期待効果)」というものもあります。「ピグマリオン効果」は、子どもの成績が教師の抱いた期待と同方向に変化するというものです。つまり、教師からの期待が高い子どもは、成績が良くなるというものです。教師との人間関係が良く、教師が期待している子どもほど、多くの伸びが期待できます。逆に、教師との人間関係の悪い子どもは、本来の力よりも伸び悩む可能性が高くなってしまいます。

親が子どもにできること、やってあげたいこと



 担任と子どもの関わりの中で親ができることは「子どもと担任の間に入ること」でしょう。子どもが担任との関わりの中で嫌なことやトラブルを抱えているようだったら、まずは子どもの話を聞いてあげることが大切です。その際、きちんと自分の子どもをフォローしてあげながら、担任のこともフォローをすることが望ましいです。担任と子どもの関係が悪くなったら、つらい思いをするのは子どもですから、子どもが必要以上に担任の先生に批判的にならないよう、間に入るように心掛けます。

 具体的には、子どもが担任の先生に何らかの不満を抱えていたとしたら、子どもをフォローしたうえで、親が「社会では…」「大人の世界では…」というように、担任の気持ちを代弁するようなことが望ましいと思います。たとえば「会社でお母さんも同じように自分の思い通りにならないことがあって苦労したよ」などと伝えてあげると、子どもも少しずつそういったことを理解していくことができると思います。子どもの年齢にもよりますが、少しずつ「社会では自分の思い通りにならないことも多い」ということを教えていく、良いチャンスなのではないかと思います。

 担任に対しては、機会を見つけて話をすると良いでしょう。学校によっては「教育相談」「個人面談」などが定期的に設定されていると思います。そういった機会を利用して教師と話をすると良いです。その際に注意すべきことは、繰り返しにはなりますが、直接的に担任を批判するようなことは避けた方がいいということです。自分の子どもが困っているという状況を伝えることが大事になります。「子どもの学びの質を高めるためにはどうしたら良いのかを一緒に考えていきたい」というスタンスで臨むと良いと思います。

先生との面談機会がない・少ない場合は?



 学校によっては、個人面談などの回数があまり多くないところもあると思います。そういった場合は、直接担任にコンタクトを取る必要があります。

 コンタクトの取り方としては、緊急を要する場合は電話で構わないと思います。緊急を要する場合とは「担任が知らない所で暴力を振るわれ、怪我をして帰ってきた」などの場合です。そういった場合は、急いで学校に電話で連絡をすると良いと思います。

 一方、それほど緊急ではないけれども、担任と相談をしたいというような場合は「連絡帳」が最適です。連絡帳に「クラスの人間関係のことで相談したいことがあるのですが…」のような文面で書くと良いでしょう。連絡帳が望ましい理由は、放課後の教員は多忙なことが多く、出張、会議、準備などで慌ただしくしていることもあるからです。連絡帳に書く際は、できれば悩んでいる内容について少しだけでも書いた方がいいでしょう。ただ「相談したい」だけですと、内容がわからず、担任も少し不安になります。具体的に「勉強の遅れが気になります」や「家でも子どもの言動が気になっていて…」と書いてあると、担任としても面談に向けて、準備ができます。

 相談した方がいいと判断するポイントは「子どもが学校に行きたがらない」ということです。はじめは親がいろいろと聞いてあげたり、フォローしたりすること必要でしょう。しかし、そういったことでその状況が改善されない時は、担任に相談することが望ましいです。学校に行きたがらない状況とは、子どもが直接言葉で言うことだけでなく、月曜の朝になるとお腹が痛いと言い出したり、体がだるいと言ったりするような身体的・心理的な変化も含まれます。

先生と子どもの相性、親が気をつけておきたいポイント



 親がしない方がいいことがあります。それは「担任の悪口」です。関係が悪くなると親もつい担任の先生の悪口を言いたくなります。そういった気持ちはわかりますが、それは夫婦だけの会話などに留め、子どもの前では絶対に避けた方がいいでしょう。なぜなら、子どもがそういった話を聞くと、子どもと担任の先生の関係がさらに悪化してしまうからです。

 親が担任の先生のことを悪く言ったり、馬鹿にしたりすると、子どもの意識の中に、親と同じような思いが形成されます。そういったことが原因で、学校生活の中で担任の先生とトラブルになる可能性が高まってしまいます。冒頭でも述べたように、担任との関係が悪くなると、さまざまな形で悲しむのは子どもですから、なおさら親が気をつけておきたいポイントです。

先生は「プロ」 実は気にかけていること



 これまでおもに保護者の立場から述べましたが、次は教師の立場から「担任と子どもの相性」について考えてみます。

 実は、教師としても、相性の良くない子どもがまったくいないわけではありません。しかし、当たり前ですが、教師はプロですから、そういった感情が外に出ないようにしています。また、何となく相性が合わないと感じる子どもに対しては、丁寧に関わるように心掛けている教員も多いはずです。何となく相性が悪い場合、何かトラブルが発生したら、その後の対応が大変になることが想像できるからです。

 多くの先生は、そういったことを意識し、問題が発生しないよう、または問題が小さなうちに処理ができるように心掛けているはずです。結果的に、相性が合わないと思っていた子どもでもいろいろと関わっているうちに互いの良さを知り、しっくりいくようになるということもよくあります。

担任を通して見る「人生」と未来



 今回は「担任と子どもの関わり」について述べました。先生と親の気持ちを知る者として、できるだけ担任と子ども(親も含め)との関係は良好なものに保っておくことが望ましい、ということをお伝えしたつもりです。付け加えるならば、親がどういった意識を持ち、実際に行動するのかということが担任と子どもの関係に大きな影響を与える、ということにも触れておきたいと思います。

 少し話は大きくなりますが、人生はうまくいくことばかりではありませんし、うまくいかないことばかりでもありません。つまり、子どもが担任の先生との関わる中では、うまくいくこともいかないことも、両方が起こりうるのです。生きていくうえで、そういった葛藤は学びの質だけでなく、人としての成長も促すものです。担任との関係が子どもの人生において貴重な学びの場となるよう、親として寄り添ってあげることができたらと思います。

 急速に変化するこれからの社会では、しっかりと自分を持ち、学び、育ち続けることのできるような人間が求められるのだと思います。小学校生活のなかでそういったことを学べたら、人生における大きな財産を得たと言うことができるのかもしれません。

 子どもの成長はスムーズにいくことばかりではありません。まさに山あり谷ありなのだと思います。目の前で起きているひとつひとつの出来事も大事ですが、それとともに長期的な視点をもって子どもを見守っていくようなことも大事なのだと思います。

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鈴木邦明(すずきくにあき)
平成7年 東京学芸大学教育学部 小学校教員養成課程理科専修卒業。平成29年 放送大学大学院文化科学研究科生活健康科学プログラム修了。神奈川県横浜市、埼玉県深谷市で計22年、小学校教諭として勤務。現場教員として子どもたちの指導に従事する傍ら、幼保小連携や実践教育をテーマとする研究論文を多数発表している。こども環境学会、日本子ども学会など、多くの活動にも関わる。平成29年4月からは小田原短期大学特任講師に着任。子どもの未来を支える幼稚園教諭、保育士の育成や指導に携わる。
《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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