与えられた課題をクリアしながら、自らの想像力を生かした発表を行う子どもたちの姿に、会場は温かな拍手と笑顔に包まれていた。

スクラッチコースの発表のようす
富士通ラーニングメディアのIT教育の粋を集めたプログラミングスクール
「F@IT Kids Club」は、2020年にプログラミング教育が小学校に導入されることをふまえ、富士通ラーニングメディアが開講したプログラミングスクールだ。楽しく、わかりやすいカリキュラムを通して、論理的思考力や問題解決能力を身に付けることを目指している。講師は、富士通ラーニングメディアの人材教育に携わってきた、いわゆるIT教育のベテランたち。彼らが、これまでのIT教育の粋を集めて、子どもたちに情報教育を行う。

企業向けの人材育成の豊富な経験を子どものプログラミング教育に生かす
とはいえ、対象は小学生。講師たちは皆、「F@IT Kids Club」では子どもたちに親しみをもってもらおうと、愛称を書いたカードを首にさげている。愛称「たま」さん(本名:日下部 珠恵さん)は、「プログラミング技術とオリジナルの想像力(創造力)、両方の成長を確認できて、とてもうれしい」と語る。

講師はお揃いの明るいカラーのポロシャツとニックネームを書いた名札で統一、生徒を温かく迎える
スクールでのコースは「スクラッチコース」と「ロボットプログラミングコース」の2つ。スクラッチは、米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボのライフロングキンダーガーデングループが作ったプログラミングソフトで、タイピングをしなくてもプログラミングを学習することができるのが特徴。
ロボットプログラミングコースで使用している教育版レゴマインドストームEV3は、MITとレゴ社が共同開発したもので、レゴでロボットを組み立て、その組み立てたロボットをプログラミングすることで動かすことができる。
今回の取材した中間発表会で(午前の部)では、スクラッチビギナーコースとロボットプログラミングビギナーコースから合計11名が参加し、講師と保護者の前で6カ月の成果を堂々と発表した。

大勢の人の前で行うプレゼンテーション体験もカリキュラムのひとつだ
低学年から、楽しく論理的思考力を身につける
発表会は、スクラッチビギナーの発表から始まった。課題は、主人公がスタートからゴールまで到達する迷路プログラムを作ること。発表する内容は、事前に自分の言葉でドキュメント化し、それをもとに発表を行う。画面を図にし、動きを言葉にし、やりたいことを明確にして、実際にPC上で動かすわけだ。
発表する小学生たちは皆、緊張しながらも自分でPCを操作して、自分の作品を発表していく。何を主人公にするか、ゴールは何にするのか、その途中にはどのようなイベントを作るのか、短いプログラムとはいえ個性が出る。主人公のナイトがゴールを目指している際に魔法使いに当たるとスタート地点に戻ってしまったり、主人公の猫がクリスマスツリーに追われながらゴールを目指したりと、それぞれにストーリーを考えて工夫しているのが伝わってきた。また、馬にあたると「ヒヒーン」といななく音を流したり、障害物にあたると「いてて」と吹きだしが表示されるプログラムもあり、講師からは、高学年になるほど、プログラムへの挑戦課題を明示する講評がなされていた。

どのようなプログラムで動作しているかスクラッチの画面で説明
実際に動くロボットで試行錯誤・創意工夫
ロボットプログラミングコースの必須課題は、スタート地点(黒丸)からゴール地点(緑の丸)まで、走行コースの線に沿ってライントレースすること。なるべく速く走るプログラムを考えるという項目を付記されているため、タイムも計られていた。
走行コースは「F@IT Kids Club」からとったFの形。なめらかなラインもあれば、直角のラインもあり、途中に赤丸が設置されていて、そこで音を鳴らすというオプション課題も出されていた。赤丸地点で犬の鳴き声を出させたり、季節がらクリスマスの音楽をBGMに流したり、また、赤丸地点で音を出してその地点からの走り方も変えて速く走るようにしたりと、さまざまな工夫がなされていた。参加した子どもたちは、カラーセンサーで赤と緑を識別するためのコンマ何秒という調整が大変だったと発表していた。

小学3年生から受講(目安)できる「ロボットプログラミングコース」の発表に1年生は興味津々
走行コースのまわりには、スクラッチコースの子どもたちが囲み、ロボットの動きを食い入るようにながめていたのが印象的だった。プログラムで実際に物を動かす魅力に、低学年の子どもたちも興味をもった子が多かったようだ。

緑丸地点のゴールにピタッととまると会場からは拍手が巻き起こった
友だちや大人たちに向かって発表する機会はそう多くはない。はじめは緊張ぎみだった子どもたちも、他人に自分の考えや作ったものを話す経験はとても貴重なものだったに違いない。
参加者の声
終始なごやかに進んだ発表会。発表後に、スクラッチコースのマルヤマ ヒロシくん(小学1年)、チカダ トラノスケくん(小学2年)、ロボットプログラミングコースのコモリ マオさん(小学6年)と親御さんにお話を伺った。
「ロボットプログラミングコースもやりたい!」マルヤマ ヒロシくん(小学1年)

「3年生からロボットプログラミングやりたい」というマルヤマ ヒロシくんとご家族
マルヤマ ヒロシくんのお母様は台湾のご出身で、台湾ではすでに小学校にプログラミング教育が導入されていることから、1日でも早くスクールに通わせたかったのだという。ヒロシくん自身ももともと興味がもっていたとのことで、今回発表したプログラムでは、ボールをとると箱が現れ、さらに箱にさわるとケーキが現れるという凝ったプログラムを作った。ロボットを動かす「ロボットプログラミングコース」にも興味があるが、小学1年なので現在はスクラッチコースに通っているという。(※ロボットプログラミングコースは小学3年生からを受講の目安としている)
お父様も今回の発表を見て、「いつもスクールで何をしているのか具体的な成果がわからなかったが、きちんと理解してプログラミング方法を習得しているのがわかった」と笑顔で語った。数年後、ロボットプログラミングコースでもヒロシくんの活躍がみられそうだ。
「スタンプをもらえるのが嬉しい!」チカダ トラノスケくん(小学2年)
チカダ トラノスケくんのお父様は、プログラミングを学ぶことで論理的な考え方ができるようになってほしいと考えて本スクールを選ばれたという。「マウスを使ってコマンドを制御するという、大人がやっても大変なことを小学1年、2年でもうやっている」点を評価されていた。

「仕事をするお父さんとパソコンを並べてプログラミングを書く」チカダ トラノスケくん
トラノスケくんも楽しんで「F@IT Kids Club」に通っていて、「スタンプを押すとき」が一番嬉しいという。1つの課題をクリアすると獲得できるスタンプは、「でじっと(F@IT Kids Clubのマスコットキャラクター)」が描かれているマスキングテープなど、グッズと交換できる。課題をクリアして得られる達成感がスタンプなのだろう。
今回のトラノスケくんのプログラムは、水をゲットするとゴールが現れるというもの。こうもりも登場するが、それはバッドマンにインスピレーションを得たからだという。最近では、お父様とプログラムのお話することも多いのだとか。楽しく、自然に学ばれている様子で、将来は刑事になりたいと話す。サイバー犯罪を取り締まるトラノスケくんのプログラムが、将来出てくるかもしれない。
「人の役に立つ、おもしろいプログラムを作りたい!」コモリ マオさん(小学6年)
コモリ マオさんのお母様は、2020年からプログラミングが小学校で必須になるということから、将来的なことを考え、しっかりとした基盤のある「F@IT Kids Club」を選ばれたという。「10年後どのような社会になるか考えると、このような知識や技術が必要なのではないかと考えました」との言葉は、現在小学生のお子さんを持つ親御さんの多くが実感されていることでもあるだろう。

「人の役に立つロボットを作りたい」コモリ マオさん
「クリスマスの音楽を流そうと自ら考えるなど、親がさせたというのではなく、自身の興味が芽生えて、楽しみながら取り組むことができたのがよかったと思います」と語るお母様の表情からは、わが子の成長を頼もしそうに見守る優しさを感じられた。
マオさんは、スクラッチは学校でやったことがあることから、一度プログラムを設定すればあとはどこででも動かせるロボットコースを自分で選んだという。「『こうしたらもっといいかな』と思いながらプログラムしているときが一番楽しい」と笑顔で語ってくれた。将来は、自動で自動車がとまるような人の役に立つ、しかもおもしろいプログラムを作りたいという。人の助けになり、しかも人を笑顔にしてくれる素敵なロボットをぜひ世に出してほしい。

マオさんのプログラミング学習の成果がつまったロボットといっしょに
2020年の導入を前に、日本での子どもたちへのプログラミング学習はまだ端緒についたばかりともいえる。楽しみながら自分のやりたいことを形にしていく子どもたちの想像力が、大きく羽ばたく日が楽しみだ。
※ 教育版レゴ(R)マインドストーム(R)EV3は、LEGO社とマサチューセッツ工科大学の共同開発によるロボット製品です。
F@IT Kids Club品川校の体験会申込はこちら
他校の情報はこちら
