ドーナツで科学する?「理科好き」が育つ日常の身体体験

 子どもの学力を上げる方法に限らず、より広い「子育てのヒント」を名門指導会代表 中学受験相談局主任相談員 塾ソムリエ 西村 則康氏が伝授。名門難関中学に2,500人以上を合格させてきたカリスマ家庭教師の最強の子育てのノウハウ、理系脳を育む秘訣とは。

教育・受験 小学生
 子どもの学力を上げる方法に限らず、より広い「子育てのヒント」を名門指導会代表 中学受験相談局主任相談員 塾ソムリエ 西村 則康氏が伝授。名門難関中学に2,500人以上を合格させてきたカリスマ家庭教師の最強の子育てのノウハウ、理系脳を育む秘訣とは。

身近な事例が子どもの好奇心を呼び覚ます



 知識をただつめ込もうとしても、子どもの脳の容量には限界があります。そういう時は、物事の「つながり」を理解させるとすんなり覚えることができます

 私はよく、身体を例に話をします。人体はまさに科学そのものであり、理科の本質にかかわるテーマの宝庫なのです。

 たとえば「重曹に酸を加えると二酸化炭素が出る」という受験でもよく出る大事な内容を教える時にはこんなやり取りをします。はじめに、子どもに問いかけます。
「胃薬を飲むよな。するとゲップが出ないか?」
「出る」
「それはなんでだろう?」
と聞きます。それでわからなければ、胃腸薬の瓶を子どもに取ってきてもらって、一緒に成分を見ます。

 すると、難しい名前が並んでいる成分のなかに「重曹」もしくは「炭酸水素ナトリウム」と書いてあります。ちなみに、この二つは名前の呼び方が違うだけで同じものです。

 「炭酸水素ナトリウムというのはアルカリ性なんだよ。炭酸水素ナトリウムを飲むことによって、胃酸を中和するんだ。それで胃酸過多を治すのが胃薬なんだよ」

 子どもたちは、そんな話に食いついてきます。そうすると、暗記しなさいと言わなくても覚えてしまうのです。

“重曹ドーナツ”で「なぜなの?」が口癖に



 「重曹を使ってドーナツをつくる」という宿題を出すこともあります。重曹をたくさん使ってドーナツをつくると、ふんわり膨らんで、おいしそうにできあがります。

 でも、食べてみると苦くて、とてもではないけれど食べられたものではありません。なぜかと言うと、炭酸水素ナトリウムがアルカリ性の強い炭酸ナトリウムに変わってしまうからです。

 その実験のあと、子どもから、
「無理して苦いドーナツを一口食べたら、ムカムカして食欲がなくなって、夕飯が少ししか食べられなかったんだ。なんでなの、先生?」
という質問がありました。

 そこで、家にある胃薬を持ってこさせて、その成分表示を読んでみました。そのなかに、「重曹」を見つけた男の子は、自分が大発見したように喜んでいます。そこで私がすかさず、
「じゃあ、なぜ、胃薬に重曹が入っているのかな」
と質問します。その子どもは答えられません。
「じゃあ、胃液には何があるの?」
「ペプシン」
「それだけ?」
「あと、塩酸も。あっ!重曹が入っているのは、塩酸を中和するためだ」「よく気がついたね。強すぎる胃酸を弱めるためなんだよ。重曹入りのドーナツを食べると、胃酸が弱くなって気持ち悪くなったんだよ」

 そこから、さらに話をつなげていきます。
「ところで、ドーナツを食べた時、ゲップが出なかったかな?」
「出たよ」
「それは、何?」
「重曹と塩酸だから……二酸化炭素!」
「そうだ、すごいな。よくわかったな」
 もうその男の子は得意満面です。それ以降、「なぜなの?先生」が口癖のようになりました。

理解したことは、さらに“身体感覚”に落とし込む



 このように、理科ほど身体感覚に基づいたおもしろい話ができる教科はありません。「理科は丸暗記ですよね」と言うお母さんが時々いらっしゃいますが、私からすればそれは暴言としか思えません。

 理科と人体の関係の話はまだまだあります。次は消化吸収についてお話ししましょう。

 デンプンやタンパク質の話をしたあとに、
「じゃあ脂肪は、口から入ってどんどん下っていくとどうなる?」
と聞きます。するとよく勉強している子は、
「十二指腸で細かい粒になる」
と答えます。
「胆液が働くから細かい粒になる」
「じゃあどうして胆液は、脂肪を細かい粒にできるの?」

 そこでわからなければ、
「石けんの作り方と一緒なんだよ」と話しはじめます。
「脂にアルカリ性のものを混ぜると白い濁りができるんだ。これは脂肪の細かい粒と考えていいんだよ。これを押し固めたのが石けん。胃液で酸性になった食物を、胆液でアルカリ性にすると、石けんと同じ状態になる。これが乳化作用だ」

 その後、さらに身体感覚へと落とし込むために、
「気分が悪くなって吐いたことないか?」
と聞きます。すると、たいていはあります。
「どんな味だった?」
「酸っぱかった。喉が痛かったよ」
「じゃあ、もっともっと吐いて、吐くものがなくなったことはあるか?吐くものの色が変わるんだけど」

 そう尋ねると数人は、こう答えます。
「はじめは黄色かったものが、緑色になった」
「いい経験をしたな。はじめに出てきた酸っぱい黄色いのが胃液で、次に出てきた緑色のが胆液だよ」

 子どもは「そうだったのか!」と興奮して、知識を単に暗記するのではなく、自分の血肉としていくことができるのです。

御三家・灘中合格率日本一の家庭教師が教える 頭のいい子の育て方(西村 則康 著/アスコム)より「最強頭脳のベースをつくる23の法則」

御三家・灘中合格率日本一の家庭教師が教える 頭のいい子の育て方

<著者プロフィール:西村 則康(にしむら のりやす)>

名門指導会代表 中学受験相談局主任相談員 塾ソムリエ.。30年以上、難関中学・高校受験指導を一筋に行う家庭教師のプロフェッショナル。一つの解法を押しつけるのでなく、その子に合った方法を瞬時に提示する授業で毎年多数の生徒を最難関中学の合格に導く。これまでに男子御三家の開成、麻布、武蔵、女子御三家の桜蔭、女子学院、雙葉をはじめ、灘、洛南高附属、東大寺学園、神戸女学院などの難関校に合格させた生徒は2,500人以上にものぼる。受験学習を、暗記や単なる作業だけのものにせず、「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込んでいく「名門指導会」の授業は、いずれの講師も翌年まで予約が殺到するほどの人気を誇る。また、授業を通して親子の絆を深めてほしいと、父母と子どものコミュニケーション術や声かけ法についてもアドバイスしている。家庭教育雑誌や新聞などに頻繁に登場し、情報発信も積極的に行う。特に16万人のお母さんが参考にしている中学受験No.1サイト「かしこい塾の使い方」では、保護者の質問一つずつに丁寧に答えることをライフワークとしている。


《リセマム》

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