数学がもっと好きになるようにエールを皆さんへ
2021年から現在のセンター試験に代わり、大学入学希望者学力評価テストが導入されることが決定しています。
センター試験が知識の暗記に偏りがちで、真の学力が評価できないとの危機感から思考力、判断力、表現力を重視するシステムに変革することを目的としています。
そのため、選択マーク式でない短文記述式も、国語と数学で導入されることになります。
今までのセンター試験では難関大学を受ける受験生にとって、難易度がふさわしくないこともあったので、難易度別に数種類作り、各大学が選ぶことも想定しているようです。
今までと大きく変わるのは、自ら課題を発見し答えが一つに定まらないような問題にも、答えを見出していくために必要な力を重視する点です。
また、社会とのかかわりを意識した内容など、教科を超えて知識を活用することが求められます。
問題を発見する力、解決する力を見るという狙いがあるので、たんに知っているか知らないかを見る試験ではなくなります。
未知の問題にどのような答えを出していくか、自分で考えて自分の表現で伝える能力を見る試験です。
自分の持っている知識を駆使し、答えを導き出すまでの道筋を採点者にうまく説明する能力が問われるので、思考力と判断力と表現力が点数化されます。
もちろん知識が多いほうが引き出しは多いので、有利であることは間違いないと思いますが、それだけでは必ずしも高得点が期待できなくなるでしょう。
しかし、この新しいテストが始まって困るのは、今までのセンター試験のように基本レベルの解法や知識を覚えるだけの勉強をおもにしてきた人です。
普段からじっくり考えて、相手にわかりやすいように説明することを重視してきた人なら、むしろやりがいがある試験になるのではないでしょうか。
今までのセンター試験は上位層にとっては簡単すぎて、900点満点のうち880点でも、二次試験の点が低くて大学に落ちていることもありました。
つまり、必ずしも真の学力とセンター試験の得点は、相関関係が強いとは言えませんでした。試験システムの改革によって、思考力を鍛えてきた人にとって、実力が出やすくなることは好ましいことだと思います。
思うに、数学を好きになり数学をやっていれば、この新しい試験に向いている勉強をしていることになるのではないでしょうか。
この試験で見られることであろう思考力も表現力も、数学の問題を考えて解答を論理的に導き出して書く力と共通です。
あまり数学が得意でないと感じている人も、あこがれの職業に就くための入試と思ってモチベーションを保てば、きっとやるべきことをコツコツこなせると思います。
そして、どうせやるなら楽しんだほうが得です。あこがれが実現した将来の自分の姿をイメージして、前へ進みましょう。
<著者プロフィール:葛西 祐美(かさい ゆみ)>
1994年、東京都出身。専門塾へ通わず都立高校より東京大学理科III類に現役合格、現在は東大医学部医学科に在籍。高校時代に、数学の偏差値「99」という驚異の数字を記録した。2012年に中国で開催された女性限定の「中国女子数学オリンピック」で、日本人として初の優勝、翌年も優勝し連覇を成しとげた。天才数学女子大生として「日本の頭脳No.1決定戦」「頭脳王」「さんまの東大方程式」「Qさま」など数多くのTV番組にも出演している。趣味はアニメやコスプレなど、サブカルチャー方面。