【EDIX2018】これから始めるプログラミング、残り22か月でできること…松田孝氏・平井聡一郎氏

 2018年5月18日、東京ビッグサイトで行われた「第9回 教育ITソリューションEXPO(EDIX)」において、東京都小金井市立前原小学校校長の松田孝氏と、情報通信総合研究所 特別研究員の平井聡一郎氏が「学びNEXT」特別講演を行った。

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2018年の「第9回 教育ITソリューションEXPO(EDIX)」で講演を行った、東京都小金井市立前原小学校校長の松田孝氏(左)と情報通信総合研究所 特別研究員の平井聡一郎氏(右)
  • 2018年の「第9回 教育ITソリューションEXPO(EDIX)」で講演を行った、東京都小金井市立前原小学校校長の松田孝氏(左)と情報通信総合研究所 特別研究員の平井聡一郎氏(右)
  • 2018年の「第9回 教育ITソリューションEXPO(EDIX)」で講演を行った、東京都小金井市立前原小学校校長の松田孝氏
  • 2018年の「第9回 教育ITソリューションEXPO(EDIX)」で講演を行った、情報通信総合研究所 特別研究員の平井聡一郎氏
  • 学校教育に携わる多くの関係者が来場した 写真:2018年の「第9回 教育ITソリューションEXPO(EDIX)」で松田氏と平井氏が行った講演 会場のようす
  • 平井聡一郎氏は講演の途中、来場者を巻き込んだ参加型企画を展開した
  • 平井聡一郎氏は講演の途中、来場者を巻き込んだ参加型企画を展開した。最初はとまどっていた参加者も、次第に笑顔でハンカチをたたんだり(平井氏からのミッション)、手を叩いたりと、楽しんでいるようすが見れた
 2018年5月18日、東京ビッグサイトで行われた「第9回 教育ITソリューションEXPO(EDIX)」において、東京都小金井市立前原小学校校長の松田孝氏と、情報通信総合研究所 特別研究員の平井聡一郎氏が「学びNEXT」特別講演を行った。

 90分の講演だったところ、示唆に富んだユーモアや会場参加型企画が盛り込まれたことで、約10分を過ぎたのちに閉幕。ハイレベルでも、まったくの白地からでも聴講できる時間が設けられた。

“ヤバい”と“ヤバい”のカオス…松田孝校長



 松田校長による講演テーマは、「AI・IoT時代に向けた、これからのプログラミング授業」。松田校長は東京都公立小学校教諭や指導主事を経て、調布市立小学校校長や多摩市立小学校校長を勤めた。その後、2016年4月から東京都小金井市立前原小学校校長に就任。多摩市での校長時代から本格的なプログラミング教育に乗り出し、現在の小金井市立前原小学校では最先端のプログラミング教材・環境を取り入れた教育を展開している。

 講演では、プログラミング教育の今を「“ヤバい”と“ヤバい”のカオス」と表現。子どもの言葉を借りるならば、2020年からのプログラミング必修化を前に、教育現場は良い意味での「ヤバい」と、悪い意味での「ヤバい」が同居した環境にあり、依然としてとまどう教師も多いことを指摘した。

 しかしながら、学習指導要領に示されたプログラミング教育の開始はすぐ目の前に迫っている。とまどう教育関係者に向け、松田校長は前原小学校での実践例を提示した。

 松田校長が目指す教育は、「STEM」教育に「Art(アート)」と「Sports(スポーツ、身体性)」を足した「STEAMS」。示された例は、アーテックのロボット用基板「Studuino(スタディーノ)」や「IchigoJam(イチゴジャム)」、RoBoHoNなどを用い、子どもたちが積極的に学ぶ姿。今後はmicro:bit(マイクロビット)を活用した「どろけい」を、縦割り学年で開催するという、学びと遊びを掛け合わせた取組みの実施も予定しているという。

 大人も驚くほど柔軟に対応し、笑顔で学ぶ姿がスライドに映し出されると、松田校長は「本当にいい表情ですよね」と感嘆する。プログラミング教育の意義については、「プログラミングには子どものこういった表情を引き出す力がある」とし、「こんな表情を見られるなら、教員は嬉しい」とコメント。「思いっきり、大胆に」、先生も子どもと一緒になって「コンピテンシー(活用・探求)ベースの『学び』を楽しむ」ように勧めた。

 松田校長は、プログラミングとは「思いをダイナミックに表現する新しいメディア」だと表現。来場者に向け、「デジタルテクノロジーをど真ん中」においた教育実践改革を呼びかけた。

残り22か月、つべこべ言わずやってみろ…平井聡一郎氏



 「コンピテンシーベース」「ラズパイでマイクラ」「CS(コンピュータサイエンス)」「プロセッサ」「アンプラグドプログラミング」「フィジカルコンピューティング」「パーセプトロン」…いずれもプログラミング教育を学ぼうと、情報収集にあたっている教育関係者は聞いたことのある言葉。実際に、EDIXの展示会場でも、配布リーフレットやパネルなどで多々目にした。

 しかし、これらの言葉は先述のとおり、すでにプログラミング教育への一歩を踏み出しているか、授業や課外授業に取り入れ、実践研究校などに選ばれている“ちょっと進んだ”学校にならわかる、という内容。実はまだ何も用意していない、始めていない、という学校は、一体何から始めたらよいのだろうか。平井氏は、そういった「これからプログラミングを始める」という、未スタートの学校関係者・教師に向けた講演を行った。

初心者校は3ステップでプログラミングにトライ



 プログラミング教育の完全実施まで残り22か月の今、プログラミング教育未経験の先生はまず「プログラミングをイメージ」することから始めてみるとよいという。ここ最近は先進校の取組みが記された実践例も発表されていることから、どのような教材を使って、どういった学びを実現できるのかを知ることから始めよう。つぎは、抱いたイメージを自分の授業に落とし込んでみること。自分ならどのように教えるか、どの単元にプログラミングを取り入れるか、教師としての経験や学びのねらいをもとに考える。最後は、実際に授業でやってみよう。失敗を怖がる先生に向け、平井氏は「ダメだったらダメでしかたない、またやってみればいいんです」とエールを送る。キーワードは「つべこべ言わず、やってみること」。そして、「もの(予算)がないなら知恵を出せ」(平井氏)。まずは先生から一歩を踏み出すのが大切だ。

 講演中、実際にプログラミング教材を選定するとなった際は、次の3ステップで考えてみるとよい、というアドバイスがあった。

(1)アンプラグドプログラミング
(2)ビジュアルプログラミング
(3)フィジカルプログラミング


 (1)は、コンピューターやタブレットなどを使わないプログラミング体験のこと。掃除や料理、計算の手順などを、行動ごとに書き出して(分解)、順序どおりに並べてみる。これだって、立派なプログラミング的思考能力を育む教育のひとつだ。命令カードを用いたプログラミング教材を使ってもいいし、紙とえんぴつだけで取り組んでもいい。小学校低学年なら、プログラミング教育への入り口として、このアンプラグドプログラミングの導入を考えてもよいだろう。

 (2)は、Scratch(スクラッチ)やVISCUIT(ビスケット)など、いわゆるコーディングに適したテキスト言語ではなく、ブロックやパネル、アイコンなど、視覚的にプログラミングできる環境および言語のこと。どういったツールを利用するかは、「汎用性」「系統性」「発展性」「ブラウザベース」「先行事例」の観点から選ぶとよい。特に、ブラウザベースである点は重要。学校のパソコンやタブレットを離れても、家庭で学ぶことができるからだ。

 (3)は、バーチャル(PC・タブレット)とリアル(ロボットなどのハード)を組み合わせたプログラミングのこと。算数や理科、図工など、教科に取り入れやすい手法のひとつ。実際にプログラミングした命令が、ものの動きに直結するようすは子どもたちにワクワク感をもたらす。プログラミングって楽しい、ものづくりにつながるんだ―、そういった気持を体得できるのも、フィジカルプログラミングの醍醐味だ。

やってみてわかること、まずは手足を動かして



 講演中に明かされたことだが、松田氏と平井氏は、平井氏が茨城県古河市で校長職にあった時代のプログラミング仲間だったという。松田氏に「プログラミングをやったほうがいいよ」と声をかけたのが平井氏だったそうだ。それはほんの数年前のことであるにも関わらず、今の松田氏の勢力的な活動や吸収力には、平井氏も驚きだという。

 そういった経緯から、平井氏は松田氏を「日本にひとりしかいない」タイプの人間だとし、ほとんどの人はそうはできないと、来場者に安心するよう説いた。そもそも、大人同士の間はもとより、デジタルネイティブの子どもたちと、今の大人のITスキルには大きな隔たりがあると思ったほうがよい。だからこそ、平井氏はプログラミングを「教えようなんて思わないほうがいいですよ」とアドバイスする。「子どもたちは授業で何時間かすれば、あっという間に先生を抜かしますから。だから、教えるのではなくて、一緒に学ぶ気持ちで取り組んでみればいい。」(平井氏)

 予算がないから、わからないから、プログラミング教育はできない。そう、大人が諦めてしまったら、他校に、世界に、そして、時代に置いていかれる子どもを生んでしまう。課題は山積しているが、日本のプログラミング教育が夜明けにある今、まずは大人が学び、楽しみ、共有することから始めてみたい。
《佐藤亜希》

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