ここでは、家庭にある素材ですぐにできる「よごれが落ちるしくみ」の実験方法をご紹介。自由研究テーマ選定の参考にしていただきたい。
自由研究:中学生向け 小学生向け
洗剤がよごれを落とすメカニズムを知る~よごれが落ちるしくみを調べよう~
第1分野【化学】実験・観察
制作時間:1時間 難易度:★
よごれた皿や衣類を洗うときに欠かせないのが洗剤です。水だけで洗うよりも、きれいによごれが落ちるからです。では、なぜ洗剤はよごれを落とすのでしょうか。よごれが落ちるしくみを調べてみましょう。
用意するもの
白い綿の布 毛糸(ウール100%) 洗剤 コショウ ゴマ油 透明なコップ(6個) わりばし
そのほかのもの 水(900mL)、布きれ
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実験1 やってみよう よごれの落ちかたを比べる
★手順 全5工程
洗剤を加えた水(A)と、水だけ(B)のコップを、それぞれ3つずつ用意しましょう。そこに毛糸やよごれを加え、洗剤がもっているさまざまな作用を、実験で確かめてみましょう。
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水450mLに洗剤を4mL溶かす。その液をコップ3つに150mLずつ注ぐ。残り3つのコップには、水だけを150mLずつ入れる。
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よく洗って乾かした毛糸を、A-1とB-1のコップに入れ、毛糸のようすを観察する。
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A-2とB-2のコップにゴマ油を数滴入れ、わりばしでかき混ぜる。混ざりかたを観察する。
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A-3とB-3のコップに、コショウをひと振り入れる。コショウがどのように広がるかを観察する。
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4で使ったAとBのコップに、布きれをひたして引き上げる。コショウのつきかたを観察する。
うまくいかないときには
毛糸の油脂を落としてから
●新品の毛糸と布の場合、油脂が表面についていることがあるので、いったん洗って乾かしたものを使いましょう。
●ゴマ油は、色が濃いものを使うと観察しやすいでしょう。
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なぜそうなるの? ~洗剤がよごれを落とすしくみ~
洗剤の成分「界面活性剤(かいめんかっせいざい)」の3つのはたらき
服のよごれを落とすのは、洗剤のおもな成分である界面活性剤です。服のよごれを落とすには、まず洗剤液が細かな繊維のすき間まで届かなくてはなりません。界面活性剤のひとつめのはたらきは「浸透作用(しんとうさよう)」で、そのはたらきで洗剤液を繊維のすき間まで入りこませるのです。
水と油は混ざりませんが、界面活性剤の親油基(しんゆき/油となじむ部分)が油を取り囲み、外側の水に対して親水基(しんすいき/水になじむ部分)が向きをそろえるため、水と油が均一に混ざります。界面活性剤にとり囲まれたよごれは、服を離れ、小さな固まりとなって、水の中に広がります。これが界面活性剤のよごれを落とす2つめのはたらき「乳化作用(にゅうかさよう)」です。
また、コショウのような粉末は、水に混ざらずに表面に浮いてしまいます。界面活性剤は、このような粉末をとり囲んで水の中に散らします。これが、よごれを落とす3つめのはたらき「分散作用(ぶんさんさよう)」です。
これら界面活性剤の3つの作用がはたらいて、よごれが落ちます。そして、落ちたよごれは、界面活性剤に囲まれているため、ふたたび繊維につきにくいのです。
●界面活性剤がよごれを落とすしくみ
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実験2 やってみよう 界面活性剤がよごれを落とすようすを見る
★手順 全4工程
実験1の結果で、洗剤には、よごれを落とすための3つの作用があることがわかりました。
これは、洗剤に含まれる界面活性剤のはたらきによるものです。界面活性剤は油(よごれ)のまわりをとり囲み、よごれを衣類から引き離します。油よごれが、丸い粒になり浮き上がるようすを観察してみましょう。
用意するもの
白いウールの毛糸(1.5mのものを2本)、使用済のプリペイドカード、透明のコップ(2個)、水、合成洗たく洗剤、ゴマ油*、スプーン、はさみ
*色つきの油なら、ゴマ油でなくても実験に使えます。
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使用済のプリペイドカードを半分に切り、それぞれにすき間ができないように毛糸を巻きつける。
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2つのコップに水を8分目まで入れる。片方のコップに、洗剤をスプーン2はい加えて混ぜる。
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2枚のカードの毛糸に、ゴマ油をぬりつける。
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それぞれのコップに立てかけるようにカードを静かに入れ、ゴマ油のようすを観察する。
そうなんだ! ~水鳥の羽毛の油と界面活性剤~
水鳥が水に浮いていられるのは、羽毛に水をはじく油の膜があるからです。さらに水鳥の羽は、水にぬれることなく空気をためられるようにもなっているのです。ところが、界面活性剤を使うと、羽毛の水をはじく油の膜が失われ羽が水にぬれてしまいます。つまり、洗剤を混ぜたプールでは、水鳥はおぼれてしまうのです。
石油タンカーが座礁して重油がもれるという事故がありました。重油は、水鳥の羽をべっとりとぬらすので、水鳥は体温が下がって死んでしまいます。被害を受けた水鳥を助けるのに使われたのが洗剤です。水鳥についた重油を落とすため、反対に界面活性剤が役に立ちました。
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レポートのまとめかた
実験1で、しみこみかた(浸透)、混ざりかた(乳化)、広がりかた(分散)について、水だけのものと洗剤を加えたものとを比較し、ちがいを表にまとめましょう。
実験1で、布へのコショウのつきかたは、水と洗剤液とではどのようにちがうでしょう。観察して記録しましょう。
実験2で、洗剤の量を少なくしたり、多くしたりして、よごれの落ちぐあいを比べてみましょう。
発行:永岡書店
<著者プロフィール:野田 新三(のだ しんぞう)>
1970年大阪生まれ。不思議に思ったことは「自分で確かめたい」という気持ちから、理科に興味を持つ。95年千葉大学大学院教育学研究科を修了後、理科の教諭として教壇に立つ。