プログラミング教育、子どもの興味をそぐ言葉とは?PTA会長のエンジニアパパが解説(4)

 PTA会長、エンジニアかつ父親の視点で「プログラミング教育」とは何かを紐解くシリーズ。今回は、子どもの「興味の芽」をいかに育むかについて考える。

教育・受験 小学生
翔泳社:「子どもに読んで伝えたい!おうちではじめるプログラミングの授業」/Scratchのプロジェクト作成画面
  • 翔泳社:「子どもに読んで伝えたい!おうちではじめるプログラミングの授業」/Scratchのプロジェクト作成画面
  • 翔泳社:「子どもに読んで伝えたい!おうちではじめるプログラミングの授業」
 PTA会長、エンジニアかつ父親の視点で「プログラミング教育」とは何かを紐解くシリーズ。4回目は、子どもがプログラミングに興味を持つには、どのようにしたらいいのかを伝授する。

小学校の教育で重要な「興味をそがない」こと



 先述のとおり、これは「プログラミング教育」に限った話ではありません。子どもたちが新たに学ぼうとしていることに対して、興味を抱かせないようにすることはよくありません。ですから保護者の方は、教科や先生、小学校自体に対してマイナスのイメージを抱かせるようなことを、ご家庭で話すのは避けましょう。

 例えば、「歴史を学んだところで、仕事の役になんて立たないんだから、社会なんてやらなくていいよ」「あの担任の先生は嫌いだから、言うことを聞かなくていい」などと、教科や学校生活自体の興味をそいでしまう情報を、子どもに伝えてしまうことです。「やらなくていい」と言われて、積極的に学習意欲を持つ子どもは、あまりいないでしょう。「あの先生の言うことを聞かなくていい」と言われれば、子どもはその先生の言うことなすこと、すべてに反発する場合もあります。あえてマイナスのことを伝えるくらいならば、何も伝えないほうが子どもにとってはよいかもしれません。

 では反対に、積極的に興味を持たせようという行為はどうでしょうか。「プログラミングは楽しいから、今からパソコンにこのプログラムをすべて打ち込んでみよう!」「算数は人生にとって重要だから、これから毎日ドリルを10ページやりなさい!」などと言われて、子どもは興味を持って楽しく進めていくでしょうか。ほとんどのケースにおいて、嫌になってやめていってしまうでしょう。いくら保護者だからといって、子どもの行動を強制することはよくありません。

 かと言って保護者の方が何もしなければ、子どもたちも何もしない可能性も非常に高く、保護者としてはヤキモキすることが非常に多いでしょう。正解があることではありませんが、これまで子どもたちを見てきた経験から、興味を持ったもの、好きなものから、関心や興味を広げていく方法がよいと考えています。

 例えば、ほとんどの子どもたちは、ゲームが好きです。大人になってもゲームをやっている方も多くいますが、なぜゲームは面白いのでしょうか。テレビゲームでは、キャラクターを操作して、目の前に立ちはだかる課題をクリアし、それに準じる褒美(スコア)を得るのが一般的です。ある程度難易度の高い課題をクリアすることによって、他者からフィードバックや報酬を与えられると、人は達成感を得ます。この達成感を得たいがために、人はゲームを楽しいと感じ、続けてプレイします。ゲームに限らず、スポーツや楽器といった習いごとも似たような経過で上手になっていくものですね。

 このように、ゲーム感覚で「プログラム」に興味を持ってもらう方法はいくつかあります。例えば、マサチューセッツ工科大学が開発した「Scratch (スクラッチ)*注1)」は、文字を入力して記述するのではなく、視覚的な要素を組み合わせてプログラミングを学ぶことのできるプログラミング言語です。さまざまな要素を組み合わせて、インタラクティブなストーリーやゲーム、アニメーションなどを作ることができるようになっています。このような、視覚的な要素を組み合わせて行うプログラミングを「ビジュアルプログラミング」と呼びます。
*注1)http://scratch.mit.edu/

翔泳社:「子どもに読んで伝えたい!おうちではじめるプログラミングの授業」/Scratchのプロジェクト作成画面
Scratchのプロジェクト作成画面。命令の書かれたブロックをパズルのように組み合わせ、キャラクターを動かせる(出典:https://scratch.mit.edu/projects/editor/?tip.bar=getStarted

 また、プログラミング教育を普及する活動「Hour of Code*注2)」ではScratchをはじめとするビジュアルプログラミング言語や「LOGO」といった教育向け言語、「マインクラフト」のようなゲームと組み合わせて、プログラミング教育を行っています。こういった活動などを通じて、子どもたちにプログラムに対する興味や関心を持ってもらうことができるでしょう。

 私の勤めている会社では、NPOと協力して小中学校でのプログラミング教育のボランティアを実施しています。「コードスタジオ*注3)」の教材を活用し、生徒たちに1 時間程度、ビジュアルプログラミングを実践してもらっています。子どもたちの反応もすこぶる良く、終了時間になっても「まだやりたい!」「次回はいつ?」と好評です。このように、子ども向けに準備された教材を活用することで、子どもたちの興味関心を引くことは難しくありません。

 子どもの興味をそがない、むしろ興味を持ってもらえる製品や仕組みは、たくさん出てきています。そのことを知っておくことが、保護者ができることの1つかもしれません。

*注2)http://hourofcode.jp/
*注3)https://studio.code.org/

子どもに読んで伝えたい!おうちではじめるプログラミングの授業

発行:翔泳社

<著者プロフィール:阿部 崇>
外資系IT企業で、コンピュータシステムのアーキテクチャをデザインする仕事に従事。2017年度より区立中学校のPTA会長に就任。教育委員会や教師の方々と接する機会も多く、これまでの経験を活かして、プログラミング教育を広げていく活動を進めている

<著者プロフィール:平 初>
北海道滝川市出身。国内企業のSE(システムエンジニア)、外資系コンピュータメーカーを経て、レッドハット株式会社にてシニアソリューションアーキテクトとして活躍中

《リセマム》

【注目の記事】

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top