2020年度SAPIX偏差値最大48、細田学園中学校が考える「新時代に必要なスキル」

 2019年4月に開校した細田学園中学校。SAPIXの2020年度用中学入試日別偏差値一覧によれば、特待生入試が48、一般入試が38と高い偏差値となった。副理事長兼副学園長・持田直人氏と教頭・山中聖子氏に、細田学園中学校が考える新時代に必要なスキルについて聞いた。

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インタビューに応じる細田学園中学校1期生の皆さん
  • インタビューに応じる細田学園中学校1期生の皆さん
  • 取材当日は入学して最初の定期テスト答案の返却日だった
  • インタビューに応じる細田学園副理事長兼副学園長の持田直人氏
  • インタビューに応じる細田学園中学校教頭の山中聖子氏
  • インタビューに応じる細田学園中学校1期生の皆さん
  • インタビューに応じる細田学園中学校1期生の皆さん
  • インタビューに応じる細田学園中学校1期生の皆さん
  • インタビューに応じる細田学園中学校1期生の皆さん
 大学入試改革の影響か、特色ある入試を打ち出す学校が増えている。真新しさや物珍しさから取り沙汰される一方で、注目すべきはその背景にある学校の教育方針と求める学生像、そして何よりそれを経て実際に集まった生徒たちだろう。

 2021年に創立100周年を迎える細田学園は、2019年4月、中高一貫教育を行うべく、細田学園中学校を開校した。細田学園中学校の入学試験は、一般入試とdots入試(適正検査型)、特待生入試、英語入試の4方式。グループワークや面接を含むdots入試では、思考力や表現力など、ペーパーテストだけではわからない力が試される。一般入試も記述問題が多く、自分の考えをしっかり表現する力がなければ得点することは難しい。

 このようなユニークな入学試験を経て、2019年4月には第1期生が学び舎に集まった。SAPIXの2020年度用中学入試日別偏差値一覧では、開校2年目となる細田学園中学校の特待生入試(1月10日)偏差値が48、一般入試(1月10日・12日)偏差値が38と高い数値となった。初年度入学者のポテンシャルに期待が高まる結果だ。この驚きの入試結果の秘密は何か、同校の副理事長兼副学園長の持田直人氏、教頭の山中聖子氏に聞いた。

知識問題の正答率よりも重視すべきは「自分の意見を表現できること」



--SAPIXの偏差値が最大48と、とても高い数字がつきましたね。これにはどのような理由があるのでしょうか。

持田氏:かねてから教育業界に浸透している指標で評価されたことは大変嬉しく思います。しかしながら我々は偏差値が高いから良い、低いから悪いという判断はしておりません。偏差値だけで生徒を評価したくありませんし、偏差値で学校を選ぶ時代は過ぎ去っていくと思っています。

インタビューに応じる細田学園副理事長兼副学園長の持田直人氏

 これからの時代に必要とされるのは、穴埋め問題で高得点をとれる子ではなく、自分の考えをもってそれを表現できる子。細田学園中学校には、自分で考えられる子、自分の意見を述べられる子が集まってほしいと考えています。ですから児童・保護者の皆さまには、偏差値の高い低いに関わらず、ご自身が受けたい教育を考え、教育内容を見た上で本校を選んでいただけたらと考えています。

--記述式問題は、どのような内容だったのですか。

山中氏:国語で2題、理科で2題、社会で2題、記述問題を出題し、配点も高く設定しました。たとえば本番前に公開した国語のプレテストでは「あなたにとって幸せとは何ですか」と問う問題。理科では人間の顔のイラストと魚の顔のイラストを載せて、その違いと違いが生じた理由を考える問題を出しました。理科の問題においては、科学的な解答の正確さよりも、その子なりの論理がきちんと通っていることを重視しました。採点にあたっては、公平性が保たれるよう、細かな条件設定を行ったうえで行っています。

--記述式問題が多く配点も大きいとなると、対策が立てづらくて受験生にとっては困りますね。

山中氏:確かに、テスト対策は難しいと思います。しかし、日常生活の中で、さまざまな問題に関心をもち、自分はどう思うかを常に問い続ける習慣があれば、記述式だからといって恐れる必要はないと思います。ご家庭では、ことあるごとに「あなたはどう思う?」と問いかけるなど、お子さんが考える機会を多く作ってあげてほしいですね。

中学時代は、多くの体験で可能性を拡げる時期



--「dots教育」が細田学園中学校の大きな特徴ですが、これはどういうものですか。

持田氏:「dots」とは、スティーブ・ジョブスが2005年のスタンフォード大学の卒業式で行った演説の中の「Connecting The Dots」という言葉から着想したものです。自分が興味があること、面白いと思うこと、偶然に出会ったことなど、何でも一生懸命取り組むこと。一見何の関係もない点に過ぎなくても、将来それらの点と点がつながって花開くときがくるはずです。中学生という多感な時期は、そういった「dot」をたくさん集め可能性を広げる時期だと思うのです。学校生活の中でも、できるだけ多くの「dots(原体験)」をもてるよう授業を組み立てています。

--もうひとつ、細田学園中学校の教育メソッドとして「DIT0」を謳われていますね。こちらについても教えてください。

山中氏:本校では、2040年をターゲットとし、生徒たちの未来を生きる力を育てていくことを目標としています。そのために実践している独自の手法です。DITOとは、「Define(課題を設定する)」「Input(知識を集める)」「Think over(アイデアを生み出す)」「Output(意見をまとめて発表する)」の4本柱の頭文字をとったもの。中でも、Dがもっとも大事と考えています。自分は何のために学ぶのか、何をしたいのか。自分で課題設定ができないと「人から言われたことしかできない」「やりたいことがわからない」という受け身の姿勢になってしまい、スタート地点にすら立てないからです。

インタビューに応じる細田学園中学校教頭の山中聖子氏

自分の意見をもっているからこそ、人の意見も聞くことができる



--入試問題は、学校側の「こんな生徒に来てほしい」という想いがにじみ出ている、ある意味“ラブレター”のようなものだと言われますね。

持田氏:本校の入試問題は分量も多いですし、記述させる問題が多く、見たとたん「うわっ、嫌だな」と思うお子さんもいるかもしれません。でもその一方で「おもしろそう、考えてみたい、やってみたい」と思える子であれば、学校が求める生徒像に合致する子だと思いますし、そういう子にこそ来てほしいですね。

--はじめての入試の結果、そういう生徒が集まったとお考えですか。

山中氏:はい、期待以上の生徒たちが集まってくれたと思います。本校の授業ではディスカッションを行う場面が多いのですが、当初は「最初から活発なディスカッションをすることは無理だろうから、部分的にやっていこう」と想定していました。ところが、当の生徒たちは、入学直後から自分の意見をはっきり言える子が多く、教員一同驚かされました。やはり、あの入試問題をクリアしてきた子たちだけあって、自分の感情や考えの表現も上手です。そして、自分が意見をもっているからこそ、他の子もその子なりの意見をもっていることを経験として知っていて、それを聞く力もある。異なる意見でも、尊重し合うことができる子たちです。

--生徒たちには将来、どうなっていてほしいでしょうか。進学先のイメージなどはありますか。

持田氏:〇〇大学に何名合格させたい、といったことは意識していません。ただ、各自が明確な目標をもち、その夢に向かって進んでくれれば良いと思っています。その結果「iPS細胞について研究したい」や「AIについて学びたい」など、その子なりの進学先を見つけてくれたら嬉しいです。もちろん海外の大学という選択もあるでしょう。偏差値で大学を選ぶのではなく、「どの環境(大学・学部)なら自分のやりたいことを実現できるか」という視点で選んでほしい。そのほうが、幸せな人生を歩るめはずです。

生徒たちに聞く!細田学園中学校ってどんな学校?



 この日は定期テストの答案の返却日。入学後はじめての定期テストの結果を手にし、ほっとした表情の生徒たちに、入試の感想や学校の良いところを聞いてみました。

--細田学園中学校を受験先・進学先に選んだ理由を教えてください。

Yくん:学校説明会に来て、学校の方針や考え方を聞き、可能性がある学校だと思いました。dots教育の考え方も共感できました。1期生として入学できることにも魅力を感じ、この学校しかないと思い、決めました。

入試問題と授業との連続性を感じるというYくん

Mさん:体験授業に参加して、他の中学校とは違うことを教えてくれる学校だと感じました。ここなら勉強だけでなく、人間としてどう育つべきかも学べる気がして、この学校を選びました。

--入学試験は記述式の問題が多かったと聞いていますが、いかがでしたか。

Iくん:プレテストを見て、記述問題が多いことは知っていたので一応練習してきました。難しいと感じましたが、全部埋める努力をしました。

Yくん:記述式は僕も得意なほうなので心配はなかったです。社会では、いくつかの生徒の意見を読んだうえで「あなたはどう思いますか」と問う形式の出題がありました。授業でも意見を聞かれたり、議論をすることが多いので、今思えば入試問題から細田学園の授業は始まっていたんだなと思います。

Mさん:私も記述問題は得意だったのでそれほど困りませんでした。むしろ、選択問題のほうが苦手で手こずりました。

選択問題よりも記述問題のほうが得意と話すMさん

--入学して1か月経ちますね。学校生活はいかがですか。

Yくん:ディスカッションによって新しいことを知ったり、自分と違う考えを聞いたり、話しているうちにまた新しい課題が生まれたり、考え方が広がっている実感があって、それが楽しいです。

Sさん:小学校のときは座って黒板の内容を書き写すだけでしたが、細田学園ではディスカッションの他にも、映像を見たり、ミニゲームをしながら学んだり、いろいろな授業の形があります。じっと座って授業を受けるよりも、学ぶことが楽しいと感じます。

Iくん:ディスカッションには慣れていなかったので少し大変ですが、クラスの友達と意見を交換できるのは楽しいです。

--細田学園中学校の良いところを友達に紹介するとしたら、何を伝えますか。

Mさん:人間関係が良いところです。私たちが1期生なので、すぐ上の先輩は高校1年生です。通常の先輩後輩の関係より年齢は離れていますが、とても優しく接してくれます。先生も話しやすく、授業の説明もわかりやすいです。校舎がきれいなことも好きなところ。私はカフェテリアが気に入っています。

Yくん:家庭学習の方法や議論のルール、テストのときは目標設定や勉強の計画の立て方、結果次第で勉強の戦略を見直すといった方法を教えてくれます。授業だけでなく、社会に出てからも役立つ知識だと思います。スマホ持込み可能なところも安心できて良いです。

記述問題は苦手、間違っていてもとにかく書いたというIくん

Iくん:ディスカッションやプロジェクターを使った授業、オンライン英会話など、きっと他の学校ではできない体験がたくさんできるのが嬉しいです。

--細田学園中学校そして高校の6年間で、どんな自分になりたいですか。

Mさん:社会に出たときに恥をかかない人になりたいと思っています。目上の人に敬語も使えないような大人になりたくないんです。ここの人間関係なら、そういうことも含めてしっかり身に付けられると思います。

Sさん:卒業までに英語がペラペラに話せるようになりたいです。細田学園にはオンライン英会話や海外での語学研修などもあって、英語を本格的に学べる機会が多いので、一生懸命取り組みたいと思っています。

苦手な科目の克服に意欲を示すSさん

Iくん:人に尊敬される人間になりたいです。

Yくん:今、AIに仕事を取られるとか言われています。いろいろなことから逃げていると、どんどんAIに仕事を取られると思います。何にでもチャレンジして経験を広げていきたいです。

--山中先生のおっしゃるとおり、自分の意見をしっかり表現できて素敵です!どうもありがとうございました。

 「クラスに尊敬できる友達や自分にはない良さをもった友達はいる?」と聞いてみると、4人ともすぐに「○○さんのここがスゴイ」「こんなことができる○○くんを尊敬している」と教えてくれた。「自分の意見を主張するだけでなく、他の生徒の良いところを見つけて認め合うことができる」とおっしゃっていた山中先生のお言葉を裏付ける反応に、ただひたすら感心。筆者からの質問に活発に答えてくれた生徒たちですが、授業のときには、これに輪をかけて活発に意見を交わすのだそう。この子たちが、6年間でどんな「dots」を見つけるのか、そしてそれがどんな形につながるのか、今から楽しみだ。
《石井栄子》

石井栄子

子育てから、健康、食、教育、留学、政治まで幅広いジャンルで執筆・編集活動を行うフリーライター兼編集者。趣味は登山とヒップホップダンス、英語の勉強。「いつか英語がペラペラに!」を夢に、オンライン英会話で細々と勉強を続けている。最近編集を手掛けた本:『10歳からの図解でわかるSDGs「17の目標」と「自分にできること」』(平本督太郎著 メイツ出版)、『10代から知っておきたいメンタルケア しんどい時の自分の守り方』(増田史著 ナツメ社)『13歳からの著作権 正しく使う・作る・発信するための 「権利」とのつきあい方がわかる本』(久保田裕監修 メイツ出版)ほか多数

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