【大学受験2020】国公立大入試分析…新入試の不安から超安全志向

 旺文社教育情報センターは、「2020年国公立大入試 志願者動向分析」をWebサイトに掲載した。2021年の新入試への不安感に加え、センター試験の平均点大幅ダウンで、文理ともに「超絶安全志向」の弱気出願となった。

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 旺文社教育情報センターは、「2020年国公立大入試 志願者動向分析」をWebサイトに掲載した。2021年の新入試への不安感に加え、センター試験の平均点大幅ダウンで、文理ともに「超絶安全志向」の弱気出願となった。

 「2020年国公立大入試 志願者動向分析」は、「螢雪時代・2020年4月号」の特集から加筆・訂正を施して旺文社教育情報センターWebサイトに転載したもの。各大学・学部や学部系統などの人気度を示す「志願者動向」を分析している。

 文部科学省の発表によると、2020年の国公立大一般選抜の確定志願者数は43万9,565人で、2019年に比べ6.4%減少。全募集人員(10万146人)に対する倍率(志願倍率)は2019年の4.7倍から2020年は4.4倍とダウンした。

 入試日程別に志願状況と志願倍率の変化をみると、前期は前年度から6.0%減、後期は8.1%減、公立大中期は0.8%減となった。募集人員の増減と比べても、前期・後期ともに減少幅が大きく、中期も集まらず、全日程で人気低下した。

 2020年国公立大入試に影響を与えた要素は、「2021年『新入試』に対する不安」と「センター試験の難化」の2つに絞られる。2021年からセンター試験の後継として導入される「大学入学共通テスト」では、予定されていた国語・数学の記述式問題の導入が見送られた。しかし、共通テストのプレテストの難度が高かかったことや、度重なる方針転換で混迷する「入試改革」で、受験生の不安感が募ったことは想像に難くない。

 このため、浪人すれば共通テストを受けなければならない国公立大志望者に「現役志向」が過度に強まった結果、「超絶安全志向」ともいうべき状態に至った。「より早く確実に」合格するため、私立大の指定校推薦や、募集枠拡大が顕著なAO入試へ。実際、国公立大でもAO入試の拡大が目立った。指定校推薦は、成績上位者の利用率が高まったといわれ、進学校で「国公立大志望の一般入試組が少なくなった」ケースもあるという。

 国公立大人気低下のもう1つの要因が、最後となるセンター試験の平均点ダウン。全体に、複数資料の読解や長い説明文の読解など、2021年の共通テストを意識した「思考力問題」を盛り込む出題傾向が見られた。従来のパターン学習による対策を立ててきた受験生は、見慣れない初出の出題形式に対応できず、時間不足で得点を伸ばせなかったようだ。

 全国6地区の志願動向をみると、全地区で減少しているが、北陸・東海(8%減)、関西(8%減)、九州(10%減)が大幅減、関東・甲信越も6%減に対し、北海道・東北(4%減)と中国・四国(2%減)の減少が相対的に小幅に留まった。関東・甲信越では、特に北関東の大学で志願者減が目立った。筑波大(12%減)・茨城大(14%減)・宇都宮大(15%減)・群馬大(24%減)と大幅減の大学が並ぶ。一方、東北地区は、難関の東北大を除くと、福島大(3%増)が増加、岩手大(2%減)・秋田大(5%減)・山形大(5%減)も比較的小幅な減少となった。センター試験の難化が影響し、東北地区から北関東への進出を見合わせたものとみられる。

 「2020年国公立大入試 志願者動向分析」では、志願者数の多い国公立大学のTOP10、志願者の増加率が高い国公立大学TOP10、前期日程で高倍率の学部等なども掲載している。

 そのほか、「2020年度 推薦・AO入試結果速報」も掲載。2020年度の推薦入試(2021年から学校推薦型選抜)とAO入試(同じく総合型選抜)の実施結果を「螢雪時代」編集部が調査・集計したところ、国公立大のセンター試験を課さない推薦は「志願者2%増、合格者は前年並み」、国公私立大のAO入試は「志願者11%増、合格者は2%増」で倍率はアップしたが、私立大公募制推薦は「志願者は前年並み、合格者は11%増」で倍率はダウンした。

 国公私立大のAO入試・公募制推薦の入試志願者・合格者動向結果のほか、東京大学の推薦入試と京都大学の特色入試の実施結果などもあわせて解説している。
《田中志実》

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