子どもの勉強のやり方を振り返る必要性
--いよいよ受験生となる新6年生ですが、これからの時期、親はどんなところを気を付けるべきでしょうか。また、勉強のつまずきがちなポイントについて教えてください。
ご家庭では一度勉強の仕方について立ち止まり、振り返ってほしいと思います
というのは、日々の多忙なスケジュールの中で大量の宿題をこなす生活だと、自分で考えずに解答を写す子が増えてくるんです。さらに器用な子は立式や途中も含めて写した内容を暗記してしまいます。その方が頭を使わなくて良いし、短時間で終わるから効率がいいと思ってしまうんです。そしてそれが「勉強」だと勘違いしてしまって、板についてしまう子が出てくるんです。
こうしたやり方で進めている子は、秋以降に恐ろしいほど成績が下がります。器用なお子さんに多いタイプです。クラスが下がりたくないから暗記でしのぐ。器用さが仇になってしまうんです。
そうならないためには、とにかく学習量を間引くこと。宿題も出されたものの半分程度でいい、全部だとやらせすぎだと私は思っています。ですから、塾の先生に優先順位をつけてもらい、いらないものを間引いてもらうようにするといいでしょう。
問題量をこなしていくことで親は安心する部分があると思うのですが、それは逆。間引いて時間を作り、じっくりと問題に取り組み、自分で考えることで、ゆっくりとですが成績は上がってきます。算数は分野特性というのがあります。たとえば割合が理解できていないと、比を使って解く図形も速さも解けないのです。
6年生のテキストはほぼ応用問題で埋め尽くされていることが多く、塾の上位クラスにいてもテキストの中には解けない問題はそれなりにあります。逆に、5年生までの学習内容をきちんと理解できていれば、難関校は十分狙えます。ですので春休みのうちに勉強方法を見直すことが大切です。
男の子は字をきれいに
--性別によってもつまずくポイントがちがうと思われます、まずは男の子のケースについてお聞かせください。
男の子は答え合わせすらしない子がいますね(笑)。あとは、字が汚い。そして式を書きたがらない。だから、男の子はまず「書くこと」を意識することが大切です。字のサイズをそろえる、イコールをそろえる、マス目にあわせて線を引く、といった「え、そこから?」と思うようなことでも、教えてあげないとできないの男の子は多いですよ。
また、書く環境を見直すことも大切です。筆圧の高い男の子は鉛筆の芯で調整することもできます。また、マシン的なものに興味を惹かれる子も多いですから、「いいシャーペンがあるみたいだから買いに行こう」と言って、一緒に文房具店で選んで買い与えるのも、きれいに書く動機づけになると思います。
往々にして男の子は、具体的な目的がないと取り組めないもの。受験勉強の目的意識を高めるのにも文房具と同じような手法が必要で、たとえばサッカー好きの子だったら、サッカーの強い学校を一緒に調べるというアプローチが効果的かもしれません。目的がはっきりすると俄然、目的のために頑張ろうというモチベーションが高まります。
女の子の話はよく聞いて
--女の子の場合はいかがでしょうか。
女の子は目的が無くてもコツコツと勉強ができる子が多いですが、丸写しして暗記するタイプは実は女の子に多いので、一度宿題ノートを見てあげて下さい。全部正解の赤丸がついていたら、勉強方法が間違っている可能性大です。
また、女の子は学校の人間関係が学力に影響することが多いです。クラスでもめごとがあって集中できないといったケースは女の子によくみられるので、ご家庭でこまめに学校の話を聞いてあげて発散させ、寄り添ってあげてほしいですね。
学級崩壊が起こっているような、いわゆる「はずれ」のクラスだと、そのクラスにいるだけで体力を持っていかれてしまうもの。学校に行っているだけで疲弊して、ぐったりして帰ってくる。
志望校が女子校の場合は、内申として出席日数を提出しないといけない学校が多いですから、学校を休むというわけにもいきません。ですから学校に行っている間は受験勉強に意識を集中できないと割り切って日々の勉強に粛々と取り組み、その分夏休みなど学校のないときにがっつり勉強するといった、時期によるメリハリをつけるといいでしょう。2学期が始まるとまた成績が停滞・下降しますが、冬休みに入るとまた成績が戻ってきます。
--新小学6年生の保護者に、男女に共通するアドバイスをお願いします。
成長期は心身ともに、睡眠が大切です。睡眠時間を割いて勉強をするというのはおすすめできません。睡眠時間を確保し、残り時間でできない勉強は「間引く」。
塾から出されたものをすべてこなすのではなく、その子に必要なものを見極めて必要ないものを間引く勇気を持ち、そのための塾への確認などの手間をご家庭でかけてあげてください。
--ありがとうございました。
いよいよ受験本番まで1年を切った。今年の春休みはまずはじっくりと問題に取り組み、今後は「苦手をつぶす」ことを目標に、学びを進めることが重要なのだろう。来年のこの時期を親子で笑顔で迎えられるよう、この春休みは有意義に使ってほしい。
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