自分の芯を作り多様なキャリアを実現、ワオ高校の取組み

 2021年4月に開校予定の「ワオ高等学校」は教養を学びの核とし、職業に直結したオプションプログラムやキャリアカウンセラーによるサポートも充実させる。起業やデータサイエンティストを目指すプログラムの各責任者と、国家資格キャリアコンサルタントの方々に聞いた。

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自分の芯を作り多様なキャリアを実現、ワオ高校の取組み
  • 自分の芯を作り多様なキャリアを実現、ワオ高校の取組み
  • キャリアカウンセラーの藤井克隆先生
  • キャリアカウンセラーの安東かおり先生
  • アントレプレナー養成プログラム担当の川本潤先生
  • データサイエンティスト養成プログラム担当の栗谷真亮先生
 2021年4月に開校の通信制高校「ワオ高等学校(学校法人ワオ未来学園、以下ワオ高校)」は、教養を学びの核とし、起業やデータサイエンティストを目指すオプションプログラムやカウンセリングによるキャリアサポートを充実させる。今回は、アントレプレナー養成プログラム担当の川本潤先生、データサイエンティスト養成プログラム担当の栗谷真亮先生、キャリアカウンセラーの藤井克隆先生と安東かおり先生の4名に、変化の激しい時代においてワオ高校が、生徒たちの多様なキャリア実現をどのようにサポートしていくのかを聞いた。

予測困難な時代でキャリア観にも変化



--キャリアサポートを充実する背景を教えてください。

川本先生:今、VUCA(Volatility=変動幅、Uncertainty=不確実、Complexity=複雑、Ambiguity=曖昧の頭文字からの言葉)の時代と言われるほど、さまざまな分野における予測が困難になり、これまでの常識が通用しなくなっています。大企業であっても従来と同じ形態ではやっていけず、私たちの世代とは異なって日本の大企業に入れば将来安泰だとは必ずしも言えません。こうしたキャリア観の変化によって、教育現場におけるキャリアサポートの在り方も変える必要性があると考えています。

起業は教養であり武器



--アントレプレナー(起業家)養成プログラムについて教えてください。

川本先生:現在、大企業であっても自分たちで新たな事業を立ち上げなければ、その存在自体が脅かされる場面が出てきているといえるでしょう。どんな業界に就職しようが独立しようが、自ら事業を作る、自ら仕事を作るということは共通して必要になると思います。今、日本の高校では、総合の授業における体験やビジネスコンテストへの参加、部活などで起業家教育を実施するパターンが多いと思います。しかし私たちは、「起業」は生涯、すべての働き方において必要な「教養」、そして「武器」になると考えて、このプログラムを立ち上げました。

 そのため、我々のアプローチはこれまでの日本の高校における起業家教育とはまったく異なるものになると思います。MIT(マサチューセッツ工科大学)のプログラムにもとづいた起業メソッドを2年間かけてみっちりとやる。日本で2万人以上に起業家教育を提供してきたタクトピアと一緒に高校生用にアレンジしました。オンライン高校で2年間、起業をメインで学ぶのは日本初の試みです。午前中に共通科目を済ませ、午後はまるまる起業活動。プログラムは50人限定の少数精鋭。2年目は希望した人全員が起業し、法人化させたい。そこで現役高校生起業家として実績を作って、そのまま続けても良いし、実績をもってより専門性がある会社に行っても良いと思います。

 プログラムは、オンラインで週に1度、たとえば「市場の選定」といったメソッドを学び、次にグループワーク、そして2年目は、我々がファシリテートしながら、自分の考えたものの実践とチーム活動を中心に進めます。

アントレプレナー養成プログラム担当の川本潤先生
アントレプレナー養成プログラム担当の川本潤先生

--起業家の養成で重視することは何でしょうか。

川本先生:失敗の実践です。たとえば、商品とターゲットを考えて市場調査をする。思うように聞けなかった、無礼な話し方だった、ビジネスのルールがなっていない、そもそも思っていたのと違っていたなど、いろいろな障壁があると思います。チームごとに我々がファシリテートすることで失敗の経験が可能です。

 マインドセットを変えたい。50人が参加するコミュニティでは失敗することが普通、挑戦することが素晴らしいといったマインドセットにしたい。そこで生涯の仲間ができれば、それがいちばんの財産です。

データサイエンスの先駆者を目指す



--データサイエンティスト養成プログラムについて教えてください。

栗谷先生:アントレプレナー養成プログラムと同様に、「教養」と「武器」の2つの軸があります。AI化やデジタルトランスフォーメーションはすべての業界で避けられない技術革新のトレンドです。そこではあらゆる業種でデータサイエンスが必要とされていますが、まだ本当に実感している人は少ない。新しい事業や既存の大企業が生き残りをかけるためには、デジタルやデータへの対応力は必須になってくる。やはり働き方に共通して必要な「教養」であり「武器」であるといえるでしょう。

 先日、プログラムを共同開発しているアヴィレンの現役エンジニアと話しましたが、あらゆる人たちがデータにもとづいたビジネスを展開する時代になるのは間違いないとのことでした。しかし、そもそもどんなデータが今、自分たちの手元にあるかを知らず、知ってもどう活用して良いかがわからない。それがわかるのが「データサイエンティスト」です。こうしたすべての人が、データにもとづいた経営やビジネスをする時代で働くための感覚が、教養としてのデータサイエンスだと捉えています。

 今はまだ教えられる先生も少数です。データサイエンス学部を設置する大学が少しずつ出ていますが、これまでデータサイエンスという領域が存在しなかったので、学部長であっても生粋のデータサイエンティストではなく、さまざまな専門領域の先生方が集まって取り組んでいるケースが多いようです。この分野の先駆者を育てるために作ったのが、ワオ高校のデータサイエンティスト養成プログラムです。

データサイエンティスト養成プログラム担当の栗谷真亮先生
データサイエンティスト養成プログラム担当の栗谷真亮先生

川本先生:パートナーのアヴィレンは、実際にいくつもの企業のコンサルをしてアウトプットを作りながら、一方で人材を育てるための教育もやっています。しかし高校では初ですね。

栗谷先生:データサイエンスはあくまでもビジネスや世の中に役立つ観点で進めます。データサイエンティストはすべての企業に必要ですが、まったく人が足りていない。このプログラムはデータサイエンティストの勉強をメインとするので、かなりハードな内容です。

川本先生:特に職業に直結した2つのオプションプログラムに共通して言えるのは、日本でいちばんハードなプログラムになるのではないかということです。生徒は非常に忙しいと思います。我々は専念してもらうためにオンラインという形式を選びました。興味をもった生徒には、ハードだけど本気でやるかと聞きます。本当に目的意識をもって、自分で決めて、自分のためにやりたい、自分の時間をこれに費やしたいという人を待っています。

自分の芯を作るワオ高校の3年間



--キャリアを考えていくために大切なことは何だとお考えですか。

安東先生:以前、医大生と接しているときに、自分は本当に医者になって良いのかと進路に疑問をもつ学生がいました。医療系の専門学校でも何となくこれがしたいという学生が多く、3年生になって辞めていく学生を大勢見ました。地域若者サポートステーションでは、難関大学を出ても就職試験に落ち続けて10年も20年も引きこもるケースもありました。大人と子どもの狭間である高校3年生までに、自分の弱さと向き合える力と社会に踏み出すための自信をもってほしい。将来ぶれるのは、やはり自分の芯がないからなんですね。自分の芯を作れば、道に迷ったときに戻れます。それをしっかり意識付けしたいですね。

 そのためにキャリア(Career)と自信(Confidence)でCCノートを作ろうと話しています。3年間で心の成長を記録できるワークブック、それも全部を書き込むようにするのではなく、余白を作って自分で自由に書けるものを用意し、一緒に3年間やり続けます。就職や大学進学時にも自己理解がベースになりますし、3年間で感じてきたさまざまな事柄の記録は、卒業後にもとても大切なものになると思います。

--芯を作るために生徒たちとどう接していきますか。

安東先生:若い人たちと接するときに、いちばん大切にしているのは本音を言ってもらえる相手になることです。地域若者サポートステーションに来ていた子たちは、「就職するのが怖い」と言います。でも、それを誰にも言えずに我慢して働いていて倒れた子がたくさんいる。だから本音を言える場所で、言ってもいいんだという環境を作りたいのです。

キャリアカウンセラーの安東かおり先生
キャリアカウンセラーの安東かおり先生

川本先生:たとえばどんなことをお話されるのですか。

藤井先生:たとえば、過去の経験を少し深掘りして聞きます。今回のオープンスクールのキャリアカウンセリングでも、「自分の長所が何かわからない」と言う生徒がいました。その生徒に、「今までやって楽しかったことは何か、その中で自分の役割はどうだったのか」と聞くと、いろいろと出てくるわけです。周りが考えたら長所だと思える部分を、本人は気付いていない。それを長所だと言ってあげると、本人も気付くことができるわけです。

栗谷先生:長所を言ってもらえて自分で認識すると自己肯定感につながりますよね。塾の現場にいると、生徒たちから「将来、何をやっていいかわからない」といった話をよく聞きますが、自己肯定感の低さが背景にあると感じます。生徒たちが自己肯定感をもてるようにする取組みがあれば、悩みの予防にもつながると思います。

安東先生:キャリアの予防学ですね。心のビタミンを満たすことができるように我々がサポートしていく。さらにワオ高校では、教養で哲学・科学・経済をやり、社会に密接に関わることをじっくり3年間学びます。「自己理解・他己理解・社会の理解」という理解の三原則が学べる。やはり人と自分は違っていいんだということを知って社会に出るほうが働きやすい。違ったらダメだと教えられてきて、社会に出るときは個性を出せと言われて、それは反対じゃないですか。「どっちに従ったらいいの」とわからなくなる生徒が多い。そういうときに戻れる自分軸、芯というものをしっかりと高校3年間で作ってもらいたいという思いがあります。

国家資格キャリアコンサルタントがいる高校



--キャリアサポートの体制を教えてください。

藤井先生:ワオ高校のコンセプトのひとつに、「やりたいことがある子どもたちを伸ばす」がありますが、具体的な夢をもっていない生徒もいると思います。また高校生の就職は大学生とはまったく違ったルートになり、生徒の思いが反映されないまま社会に出ていく現状があります。ミスマッチを防ぐために、国家資格のキャリアコンサルタントをもつ私たちがカウンセラーとして面談をしていくことをまずは考えています。面談では、担任の先生やオプションプログラムのスペシャリストとは異なる立場で、生徒たちの潜在的な思いを見つけてサポートしていきます。自己肯定感を高めたり、行動指針を一緒に考えたりもしたいと思います。

キャリアカウンセラーの藤井克隆先生
キャリアカウンセラーの藤井克隆先生

「自導力」をつける教養の学び



--ワオ高校や各プログラムに興味をもつ子どもたちに伝えたいことをお願いします。

川本先生:オプションプログラムは、高1後期の10月から開始します。定員に余裕があれば、入学後に選択することも可能です。ワオ高校は「自ら学んで、自ら考え、自ら判断できる」という生徒を育てる理念があり、「教養」はまさしくそのためのものです。やりたいことが決まっている生徒には最初からオプションプログラムを選んでほしいと思いますが、決まっていなくても半年かけて「教養」を学ぶ中で、自分で決められる力を培っていきます

栗谷先生:私が目指す教育は、何かを教えることではなくて、子どもの心に火をつけること、子ども自身が学べる場をつくることです。データサイエンティスト養成プログラムでは、この世界で生きていきたいと心から思えるような火の付け方をしようと考えています。そして、それを実現できるだけの場を用意します。世の中を変えていくために新しいことをどんどん考えて実践してチャレンジして、何回も失敗しつつも先に進んでいってほしいです。

藤井先生:つながる力と信じる力を育てる場を目指します。もちろん、将来の夢が決まっている人にも来てほしいですが、まだ何をやりたいかわからない人も一緒に3年間、いろんなことを考えながら、自分の進路を自ら決められる、そんな3年後を迎えられるようになってもらいたいです。

安東先生:よくわからないけど、みんなが行くから普通科に行くという人にも、あえて来てもらいたいと思っています。ワオ高校の教養とプロフェッショナルな進路設計で、しっかりと自己理解をして大きく成長できる器をもってもらいたい。将来的には自らを率いていける「自導力」をつけて、自信をもって社会に出てほしいですね。

自分が思うことを実現する場



--最後に受験生へのメッセージをお願いします。

川本先生:塾業界で40年、ある程度成功を収めてきた我々が、なぜこのタイミングでオンラインを選んで高等学校を作ったのか。それは、社会に必要性があるからです。今、VUCAの時代と言われるほど予測が困難になり、これまでの常識が通用しなくなっています。進学先か偏差値よりも前に、自分がこれから生きる社会はどうなるのかといったことを見つめたうえで、自分の進路を考えてほしいと思っています。

栗谷先生:子どもたちは親や先生から学ぶことが多いと思います。でもVUCAの時代において、大人が教えることが正しくない可能性もあります。ワオ高校では、それを知っている先生たちが、これからの時代に何を学ぶべきか、どういう学び方をするべきかを生徒と一緒に考えていきたいと思います。

藤井先生:ワオ高校は、誰に媚びることなく、自分の意見をしっかり言って、芯のある志をもてる生徒が育つ、そんな学校にしたいと考えています。通信制高校だから特別なところということではなく、選択肢のひとつとして考えてもらえればと思います。

安東先生:思考は現実になるから、自分が思うとおりのことをするために、ワオ高校に来てほしい。なりたい自分を探しに来てほしい。それを私たちは支え続けます。

ワオ高等学校
--ありがとうございました。

 経験豊かなワオ高校の先生方と実際に話した印象を率直に表すならば、あふれんばかりの情熱、経験に裏付けされた知恵の確かさと言えるだろう。そして、子どもたちを支える温かさと明るさは安心できるものがあった。きっと大人たちの多くが、こんな学校があったら良かったと感じる場に、今後なっていくのではないだろうか。
《佐久間武》

佐久間武

早稲田大学教育学部卒。金融・公共マーケティングやEdTech、電子書籍のプロデュースなどを経て、2016年より「ReseMom」で教育ライターとして取材、執筆。中学から大学までの学習相談をはじめ社会人向け教育研修等の教育関連企画のコンサルやコーディネーターとしても活動中。

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