関西大、コロナワクチンに関する行動調査…説明の差で接種意向が左右

 関西大学ソシオネットワーク戦略研究機構は2021年2月5日、一般の人々を対象とした新型コロナウイルスのワクチン接種意向に関する調査結果を公表した。その結果、ワクチン接種を希望する人々の割合は、ワクチンに関する説明の仕方によってかなり異なることがわかった。

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情報によって接種希望率が変化
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 関西大学ソシオネットワーク戦略研究機構は2021年2月5日、一般の人々を対象とした新型コロナウイルスのワクチン接種意向に関する調査結果を公表した。その結果、ワクチン接種を希望する人々の割合は、ワクチンに関する説明の仕方によってかなり異なることがわかった。

 調査は、人々の新型コロナウイルスのワクチン接種意向が、ワクチンに関する説明によって受ける影響を見極めることを目的に実施。インターネットを利用して2021年1月27日~2月3日、20~79歳の8,355人を対象に行われた。その中で、ランダム化比較試験の手法を用いて、説明の中身や伝え方を変えたさまざまな質問に対する人々の接種意向を分析した。

 特に情報を与えず、単純に「あなたは新型コロナワクチンを、打ちたいと思うか?」と聞くと接種希望者は58.2%だった。その人たちに「ある町で、100人の新型コロナ患者が出たとする。もし、この100人があるワクチンを打っていたら、95人は発病を防げたことがわかっている」と有効率に関する情報を付け加えると接種希望者は76.0%と大幅に増えた。

 つぎに「もし、この100人があるワクチンを打っていたとしても、5人は発病を防げなかったことがわかっている」と有効率に関する情報を否定的な表現にすると、接種希望者は65.9%と大幅に減少した。また、「0.02%の割合で、副作用かもしれない重い症状が出たこともわかっている」という情報を加えると接種希望者は64.4%に減少。

 さらに、付け加える副反応に関する情報をパーセンテージではなく人数で表現し、「10万人のうち20人の割合で、副作用かもしれない重い症状が出たこともわかっている」とすると、実質的な内容は「0.02%の割合」と同じであるにもかかわらず、接種希望者は57.8%に減少している。

 このように、新型コロナワクチンに関する説明の中身や伝え方次第で、接種希望者の割合は57.8%~76.0%と大きく変化する。説明の中身が同じであっても、ワクチンの有効率を肯定的な表現から否定的な表現にすると、接種希望者は10.1ポイント減少している。また、副反応の割合をパーセント表示から人数表示に変えるだけで、接種希望者が6.6ポイント減少した。

 今回の調査結果により、伝え方が変わるだけで人々の接種意向は変化することがわかった。ワクチン接種という重要な判断が、説明の中身や伝え方のわずかな違いによって大きく左右される可能性について注意喚起している。人間行動の特性を理解し、自らの接種判断にあたってはワクチンに関する情報を的確に把握し、冷静な判断を下すことが必要。また、新型コロナウイルスのワクチンについて他人に説明する立場にある人々(医療・介護関係者、保護者など)は、被説明者の意向を十分見極めることが求められるとしている。
《田中志実》

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