「プログラミングスタジアム」は、子供たちにプログラミングをより身近に感じてもらい、考える力や、表現力などさまざまな力を身につけるきっかけになってほしいとの思いから企画されたコンテスト。2回目の開催となる今年は実行委員会を組成し、企画運営・事務局運営をJTBコミュニケーションデザインが行っている。2回目の今年は1回目よりもさらに間口を広げ開催される。「夏休みの自由研究部門」「チャレンジ部門」の2つの部門が設定されている。
まずは本イベントで審査員を務めるヴィリング代表取締役の中村一彰氏に、プログラミングを通じて子供たちが育みたい力、イベントに挑戦する意義について聞いた。
プログラミングとは
「手順を考える」学び
--まずは、社会的な背景を踏まえて「プログラミング」がなぜ注目されているのか、あらためて教えてください。
小学校に続き、中学校でも2021年度から、高校も2022年度からプログラミング教育が必修化されました。2025年には「情報I」が大学入学共通テストの科目として採用されることが決まっています。文科省がプログラミング教育を提唱する目的として「プログラミングという活動を通じて考える力を育む」という大きな方針としてあります。
VUCAの時代と言われますが、先の見えない世の中を生きる子供たちには「物事を論理的に考える力」や「考え抜く姿勢」が必要不可欠であり、これらを養うために有効な手段のひとつとして「プログラミング教育」に期待が寄せられているのです。
--なるほど。本題に入る前に、そもそも「プログラミング教育」とは何か、整理しておきたいです。
プログラミング教育というと、パソコンやタブレットを使うもの、ロボットを使うものなどいろいろあります。どんなツールを使うにしろプログラミング=手順を考えるという活動ととらえて良いと思います。
たとえば、「朝起きて学校へ行くまでの行動を、どういう手順で過ごすのか」「放課後、友達が遊びに来てから帰るまでどんな手順で過ごすのか」「途中で雨が降ってきたらどうするのか」など、日常生活でもそういった「手順」を考えますよね。同じことを、プログラムを駆使して画面上で実行するのが「プログラミング」というわけです。目的を達成するためには、どうすれば良いのかという、手順を論理的に考えることがプログラミング教育のベースです。
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プログラミングで新しいヒーローが生まれる
--ゲームやアニメーションを作る、プログラムを作るといった目に見える何かを作るのではなく、「手順を考える」ことが鍵なのですね。
そうですね。スキルを身に付けるのではなくて、どうしたら段取り良く効果的な手順を踏めるのかを考えるのが主要な目的です。また、今やコンピュータは私たちの生活に欠かせないものです。現に、ゲームや車、洗濯機や冷蔵庫など身近なところでいろいろなコンピュータが活躍しています。その特徴に触れる・体験することでコンピュータを主体的に活用する力を育むこと。この2つが小学生段階でのプログラミングで目指すものと言えるでしょう。
プログラミング教室という現場で、我々は、プログラミングを通じ新しいヒーローやヒロインが生まれることを実感しています。サッカーやスイミングが得意、勉強が得意といったようにそれぞれの分野で活躍する子はいると思いますが、同じようにプログラミングでこそ輝く子も存在するのです。「プログラミング」という新しいジャンルの舞台の登場によって、子供たちの活躍できる場が増えたという意義も大いにあると思います。
さらに大きい視点でいうと、経済界からの「IT人材、デジタル人材の育成を」という要請があり、小学生からのプログラミング教育というのはその下地作りに通じている一面があります。いずれにせよ今の時代、社会に出た後、コンピュータを活用した問題解決能力というのは必須の能力になりますからね。
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コンテスト参加のハードルを下げることで、プログラミングの裾野を広げる
--このたび中村さんが審査員を務める「プログラミングスタジアム」というイベントは、どのようなものなのでしょうか。
プログラミングスタジアムのコンセプトは「誰でも楽しめるプログラミング」。主催者をはじめ、プログラミング教育に携わる方々のプログラミングをもっと普及させたいという思いが集まって開催されるイベントです。
というのも、世の中にあるプログラミングコンテストは、コンピュータを使い慣れている子供たちの中でも、特に好きな子や得意な子が参加するものが多いと感じています。実際のところ、私が主宰するプログラミングスクールの子供たちもそういったコンテストに参加し、入賞することもありますが、ゲームにしてもアニメーションにしても、彼らはハイレベルなものを作りあげます。大人顔負けのプレゼンをし、小学5年生で「最近ハマっているのは三角関数です」という子もいます。
それはそれでトップラインを伸ばすという意味ではとても良いことなのですが、同時に「もっと世間にプログラミングを広く普及させたい」と感じることも多々ありました。そこで「プログラミングの裾野を広げる」という本イベントの趣旨に賛同し、審査員として参画することを決定しました。
たくさんの子供たちに参加してもらいたい思いから、部門や募集テーマなども身近なものに設定されています。「私もやってみようかな」「これなら僕にもできそう」と思ってもらえるようなイベントになるよう、工夫をしているのです。
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スキルよりも感性や発想を重視
--具体的には、どのような部門があるのでしょうか。
対象は全国の小学生で、使用する言語はスクラッチです。初級者を想定した「夏休みの自由研究部門」と、中上級者を想定した「チャレンジ部門」の2つの部門があります。
「夏休みの自由研究部門」には4つのテーマが設けられていて、プラスチック問題やごみを減らす、温暖化といった「地球の環境問題」、好きな場所や観光地を紹介する「好きなまちの魅力を伝えよう」、夏休みのお出かけや家族旅行などを表現する「夏の思い出」、シューティングやロールプレイングなどの「オリジナルゲームを作ろう」のいずれかのテーマで作品を作ってもらいます。
「チャレンジ部門」では「画面スクロール」「ゴールがある」「得点もしくは時間がある」といった要素を入れ込んだオリジナルアクションゲームを作るというもの。どちらもハイレベルなプログラミングコンテストのようにプレゼンなどを必要としませんし、気負わずに楽しんで参加してほしいと思っています。
--評価基準について教えてください。
「夏休みの自由研究部門」に関しては、アイデアや魅力に注目できているかという発想力、考えたものをどのように形にできているかという表現力、見る人を意識した面白い・楽しい・ためになる作品かどうかという客観性を審査します。「こんなに楽しい夏休みを過ごしたんだよ」「私の住んでいる町にはこんな魅力があるんだよ」という想いが伝わる、自由な表現を期待しています。
「チャレンジ部門」では、発想力や客観性のほか、ソフトの特性を理解して完成度の高い作品につなげているかという技術点も評価のポイントになります。
--夏休みの自由研究にもぴったりですね。今やプログラミングでの自由研究も一般的になりつつあると聞きました。
保護者世代は自由研究というと「何か形あるものを作らなければ」という先入観があるかもしれません。でもデジタルがこれだけ普及した今となっては、宿題や課題がアナログで完結するとは限りません。工作なのかロボットなのか、紙なのかデータなのかといった違いは、子供たちにとってはあまり問題ではなく、絵の具で描いたポスターも、模造紙にまとめた自由研究も、プログラミングで創作したゲームやアニメも、等しく自分の成果物であり、今後ますます当たり前になっていくのではないかと思います。
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古事記や日本書紀などに記された日本の神話をテーマとしたアドベンチャーゲームを制作し受賞に至った
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試行錯誤する経験こそ意義がある
--プログラミングスタジアムに参加する際、もっとも必要なのは何でしょうか。また参加することで、どのようなスキルや力を得られるのでしょうか。
夏休みの楽しい思い出や、自分の街の魅力など、誰かに何かを伝えようとする気持ち・意欲が出発点です。そのうえで、自分でこういうものを作りたいという構想を立て、それを表現する意欲を保つことが良い経験になると思います。
そして、頭の中で描いたことをプログラミングで実装しようとすると、思い通りにいかないとか、どうしたら良いかわからないといった壁に、必ず直面します。それを改善し、修正していくというプロセスのなかで粘り強さが培われるのです。自分の思いや考えを伝える、表現するために試行錯誤する経験。それこそがコンテストに参加することで得られる大きな意義だと思います。
--「つまずいたときにどう対処するか」というのも作品づくりを通じて問われる力なのですね。プログラミング初心者のお子さまへのサポートはあるのでしょうか。
サンプルとなるプログラムやヒントとなるキーワードを運営側で用意しているので、それらを真似しながら自分のオリジナル作品が作れるようなサポートも予定しています。「ここはどうしたら良いかな」と保護者の方と一緒にコミュニケーションをとりながら取り組むのも良いですし、本で調べるのも良いでしょう。解説動画や攻略法を紹介したサイトもたくさんあるので、そこから自分の必要な情報を見つけてくることも良い経験になると思います。
子供は好きなことに対しては、わからないことがあっても自分でどんどん調べていきますよね。サンプルや動画サイトにある完成作品を見たり、解説動画を見たりしながら、途中段階の自分の作品を動かし、試してみて、自分なりに工夫を重ねる。そうやって粘り強く学習し続けるサイクルが回り始めたらベストですね。
--応募した作品を発表する場も用意されているそうですね。
VR空間に展示場を設営し、応募した作品を展示・公開する場を設けています。自分自身の作品が展示室に飾られることで、成果を目に見える形で残すことができます。いろいろな子の作品が広場に集まって大勢の目に触れることで、さまざまな反応を得られること自体に大きな意義があります。一方で、ほかの参加者の作品を見ることで、刺激をもらったり学びをより深めたりすることにもつながっていくと思います。
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子供の方向性を見つけるきっかけに
--最後に、コンテストへの参加を検討している小学生とその保護者にメッセージをお願いします。
スクラッチというツール自体、子供たちの遊びの延長として楽しめる、面白いツールです。伸び伸びと、好きにやってほしいですね。シューティング機能を極める子、アクションにこだわる子、音楽にこだわる子、アートやビジュアルにこだわる子。スクラッチにはさまざまな機能があり、その子の方向性や表現をどんどん深めていける環境だと思います。好きになって、ハマって、どんどん創作を楽しんでくれたらと思います。
保護者の皆さまも、作品づくりのプロセスを一緒に楽しむつもりでお子さまのことを見守ってほしいと思っています。
何が良い悪いというのはありません。まずは、スクラッチプログラミングを体験してみてほしい。夏休みという、まとまった時間のある比較的余裕のある時期に、プログラミングという「創作」に没頭する。そのきっかけにしてほしいですね。参加者の皆さんの自由な発想や、楽しさに溢れた作品を待っています。
--ありがとうございました。
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最後に、プログラミングスタジアムの企画運営を担うJTBコミュニケーションデザインの企画担当者は、第2回のコンテスト開催にあたり、次のようなコメントを寄せてくれた。
プログラミングの授業は導入されたものの、各学校での授業としての導入状況、また学ぶ子供自身のプログラミングへの参加意欲について濃淡があると言われています。
幼少のころから専門の塾に通い、高度なプログラミング技術を持ったお子さまの「技術力」を試すコンテストは存在していますが、プログラミングを始めたばかりのすべての子供が挑戦できるコンテストが存在しない……プログラミングスタジアムは、これからプログラミングを始める、もしくは始めたばかりのお子さまでも気軽に参加できるコンテストとし、作品披露・他人の作品を見て学ぶ場を作りたい、そんな想いで開催をいたします。そのため、取り組みやすいようテーマを設けたり、ホームページでもサンプルプログラムをご用意するなど、専門知識がないお子さまでも応募しやすいように配慮をしております。
本イベントを通じて、子供たちにプログラミングをより身近に感じてもらい、考える力や、表現力などさまざまな力を身に付けるきっかけになってほしいと考えています。
幼少のころから専門の塾に通い、高度なプログラミング技術を持ったお子さまの「技術力」を試すコンテストは存在していますが、プログラミングを始めたばかりのすべての子供が挑戦できるコンテストが存在しない……プログラミングスタジアムは、これからプログラミングを始める、もしくは始めたばかりのお子さまでも気軽に参加できるコンテストとし、作品披露・他人の作品を見て学ぶ場を作りたい、そんな想いで開催をいたします。そのため、取り組みやすいようテーマを設けたり、ホームページでもサンプルプログラムをご用意するなど、専門知識がないお子さまでも応募しやすいように配慮をしております。
本イベントを通じて、子供たちにプログラミングをより身近に感じてもらい、考える力や、表現力などさまざまな力を身に付けるきっかけになってほしいと考えています。
「プログラミングコンテストってハードルが高そう」「まだ初心者だし…」そんなふうに感じているお子さまこそ参加してほしいのが、この「プログラミングスタジアム」だ。「自分の打ち込んだプログラムがちゃんと動いた」というフレッシュな経験が「もっとやってみたい」に変わる、学びのきっかけとなるこのイベント。親子でプログラミングを学ぶ第一歩に、夏休みの自由研究に、ぜひ挑戦してみてはいかがだろうか。
第2回プログラミングスタジアム概要
応募期間:2022年7月1日(金)~9月2日(金)
審査期間:9月5日(月)~9月30日(金)※予定
結果発表:10月22日(土)~11月6日(日)※予定
参加条件:
・応募時点で全国いずれかの小学校に在籍していること
・応募について保護者から同意を得ていること
プログラミング言語:Scratch
募集部門:
【夏休みの自由研究部門】初心者向け
夏休みの自由研究にも使えるテーマをご用意。テーマの中から1つ選び、テーマに沿ったオリジナルのプログラミング作品を募集。知識や技術よりも発想や感性を審査ポイントとした部門
【チャレンジ部門】中上級者向け
プログラミングスタジアムから課題を提示。その課題をどのようにしてクリアするか、課題をクリアしたうえでプログラミングをアレンジしてもらい課題のクリア方法、アレンジ力を競う。技術力や完成度を重視した部門
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