【自由研究】ポイントがわかり、イロハが身に付く「自由研究レポートのまとめ方」

 子供が夏休みの自由研究の結果をレポートにまとめる際に、親はどのようにアドバイスをしたら良いのだろうか。「続 本当はおもしろい中学入試の理科」の著者 尾嶋好美氏に「自由研究レポートのまとめ方」のコツをふりこをテーマにした海城中学校の入試問題を例に聞いた。

教育・受験 小学生
「本当はおもしろい中学入試の理科」「続 本当はおもしろい中学入試の理科」(大和書房)の著者、サイエンスコーディネーターの尾嶋好美氏
  • 「本当はおもしろい中学入試の理科」「続 本当はおもしろい中学入試の理科」(大和書房)の著者、サイエンスコーディネーターの尾嶋好美氏
  • ふりこの実験のようす

 リセマムでは毎年6月ころから「自由研究」に関連する記事が人気上位にランクイン。早くから準備を進めているご家庭のようすが垣間見える。夏休みの課題の定番「自由研究」は、子供の興味関心に合わせてテーマを探したり、作業を手伝ってあげたりする保護者も多いのではないだろうか。

 子供が研究結果をレポートにまとめる際に、親はどのようにアドバイスをしたら良いのだろうか。家にある材料を使ってできる科学実験を入り口に、中学入試の問題にチャレンジできる「本当はおもしろい中学入試の理科」「続 本当はおもしろい中学入試の理科」(大和書房)の著者、サイエンスコーディネーターの尾嶋好美氏に、自由研究レポート作成のイロハと、まとめる際のポイントについて聞いた。

「調べ学習」と「自由研究」の違い

--そもそも「自由研究」の目的について教えてください。

 お子さんは、学校で「調べ学習」をしたことがあるかもしれません。調べ学習とは、何かのテーマについて、本やインターネットなどで調べてそれをまとめることです。

 「調べ学習」と「自由研究」を同じようなものと思っている人もいるかもしれません。でもこの2つには大きな違いがあります。「調べ学習」は、すでに誰かが明らかにしたこと、わかっていることについて調べてまとめるものですが、自由研究は、「調べてもわからないことを自分なりに明らかにしていく」ことなのです。

 お子さんひとりひとりが不思議に思ったこと、もっと知りたいと思ったことを、自分で明らかにしていき、それをまとめてほかの人に伝えるのが「自由研究」です。

--不思議に思ったことをどうやって明らかにし、まとめれば良いのでしょうか。

 わからないことを明らかにしていく方法が、「実験」です。実験は、

疑問をもつ仮説をたてる実験の計画をたてる 実験をする実験結果と仮説を比べて、分析する

という流れで行います。

 そしてその実験内容をレポート用紙や模造紙などにまとめることを「自由研究」といいます。まとめ方は決まってはいませんが、書かなくてはいけないことがいくつかあります。

 「何を研究したのか」「実験に使った材料は何か」「どのような実験をしたのか」「結果はどうだったのか」「どうしてそういう結果になったと考えるか」「参考にした本などは何か」は必ず書きましょう。

6つのステップに分けてやってみよう

--どのような手順で進めると良いのか具体例を教えてください。

 次の手順で進めてみましょう。

ステップ1 ノートを用意しよう

 まずは、ノートを用意しましょう。ルーズリーフ式ではなく、1冊になっているノートがおすすめです。

ステップ2 研究テーマを決めよう

 知りたいことを、ノートに書いていきましょう。研究に関することは、何でもノートに書きこんでいきます。書くときは、必ず日付も書くようにします。たとえば、『続 本当はおもしろい中学入試の理科』(以下、本書 ※本記事の最後にAmazonへのリンクがあります)などの実験をテーマにした本を読んで、もっと知りたいと思ったことや、自分でやってみたいと思ったことがあったら、それを書きます。どんどん書いてみましょう。

 次に、書いた中から1つ、やることを決めます。何もないところから研究テーマを見つけるのはなかなか難しいです。そんなときは、本に載っている実験の中で、「条件を変えたらどうなるか」をテーマにするのも良いでしょう。たとえば、本書のドライイーストの実験(88ページ)に興味をもったのなら、それをテーマにすれば良いですし、ふりこの実験(144ページ)が面白そうと思ったなら、自分でもやってみればいいのです。

ステップ3 仮説を立てよう

 研究テーマを決めたら、自分なりに仮説を立ててみましょう。仮説とは、「合っているかどうかわからないことだけど、こうなるのではないか?」と考えたことです。

 たとえば「本には、ドライイーストは砂糖と混ぜると泡が出ると書いてあったけれど、塩と混ぜても泡が出るのではなないか?」と考えたら、それが仮説になります。「ふりこの長さを5倍にしたら、往復にかかる時間は5倍になるのではないか?」というのも仮説です。仮説もノートにどんどん書きましょう。

ステップ4 実験計画を立てよう

 仮説を立てたら、どのような実験をすれば確かめられるかを考えます。実験をするときに大切なことは「再現性」です。再現性とは「もう一度やっても同じ結果になること」「誰がやっても同じ結果になること」です。

 重さや量などをはからず、適当に実験してしまうと、もう一度同じ実験をすることが難しくなります。そのため、どういう材料をどのくらい使って実験するかを、計画しておくことが必要です。時間がどのくらいかかるかも考えておきましょう。時間がかかる実験は夏休みの最後にやることは難しいですから。

 実験計画を立てるときに参考にした本やインターネットのURLなども、ノートに書きこんでいきます。ただしインターネットの場合、参考にするのは個人のブログなどではなく、できるだけ科学博物館や科学技術振興機構などの研究機関のWebサイトにしましょう。

ステップ5 実験をしよう

 実験をするときには、使った材料を「〇〇g」「大さじ1」などきちんと数値化してノートに書いておきます。また、かかった時間なども「〇〇秒」など、きちんとはかりましょう。写真もたくさん撮っておくことをおすすめします。

 1回だけの実験では「たまたまそうなったのでは?」ということもあるので、同じ実験を3回くらいやってみて、結果を確かめるとよいでしょう。

ステップ6 実験の結果をまとめよう

 実験の結果を表やグラフにまとめてみましょう。そして、その結果から、どんなことが考えられるかをノートに書いてみましょう。結果から考えられることを書くときには、教科書や本などを参考にします。

 たとえば、本書には「ドライイーストに砂糖とお湯を入れると、アルコール発酵が起こって泡が出る」と書かれています。実験で、砂糖ではなく塩を入れたときにも泡が出たとしたら、「塩でもアルコール発酵が起こっているのではないか?」と考えられますね。もし泡が出なかったとしたら、「塩ではアルコール発酵は起こらない」と考えられます。

 本書で紹介されている、ふりこをテーマにした海城中学校の入試問題(148ページ)には、「ふりこの長さと往復の時間の関係」を表す式が書かれています。これを見て、「本当にこの式が成り立つのか調べてみたい」と思ったら、実験をして、得た数値をその式に当てはめてみましょう。実際にやってみてどうだったか、計算した結果や考えついたことを、ノートに書いていきます。

自由研究レポートのまとめ方

 自由研究は「レポート用紙」もしくは「模造紙」にまとめます。いずれも書く内容は変わりません。このときにもとになるのは、自分の書いたノートです。これまで何でも自由に書きこんできたノートを見直して、ほかの人が読んでわかるような形にまとめていきましょう。

 実験をしたあとに、どんなふうに自由研究レポートをまとめたらいいの? と迷う人もいるかもしれません。そこでここでは具体例をあげながら、自由研究レポートの書き方を紹介していきます。

 自由研究として「ふりこの実験」を行ったとしましょう。この場合のまとめ方を、例として紹介しますので、参考にしてください。

研究タイトル:ふりこの長さによって往復にかかる時間は変わるのだろうか?

研究のきっかけ:夏休みに読んだ本で、ふりこが往復するのにかかる時間はふりこの長さによって変わると知った。本では長さを2倍にしていたが、3倍、4倍にしたらどうなるのか、そして長さと時間に何か規則はあるのかを知りたいと思った。

仮説:長さが長くなればなるほど、往復する時間も長くなるのではないか?

実験材料:糸、ナット、わりばし、セロハンテープ、分度器、ストップウォッチ(携帯電話のストップウォッチ機能を利用)

実験方法:

1.ナットに糸を通して結ぶ。ナットの中心から糸の長さが10cmになるようにして、割りばしの先に糸を巻きつける。

2.机に分度器を張りつける(紙に印刷したものを使用)。

3.割りばしの持ち手側を机にセロテープで固定する

4.ナットを手で持って、45度まで持ち上げて手を放し、10回往復する時間をはかる。3回繰り返す。

5.糸の長さを、20cm、30cm、40cmに変えて4と同じことを行う。

ふりこの実験のようす

実験結果

糸の長さ(cm)

10往復するのにかかった時間(秒)

1回目

2回目

3回目

平均

10

20

30

40

糸の長さが長くなると、10往復するのにかかった時間は……。

考察:本には「10往復の平均時間(秒)×10往復の平均時間(秒)÷糸の長さ」が一定の値になると書いてあった。糸の長さが変わっても本当に一定の値になるのか、今回の実験結果で計算してみた。

糸の長さ(cm)

10往復の平均時間(秒)

10往復の平均時間(秒)×10往復の平均時間(秒)÷糸の長さ

10

20

30

40

ふりこの長さと往復にかかる時間の間には……のような関係があることがわかった。

参考にした本、ウェブページ:

『続 本当はおもしろい中学入試の理科』尾嶋好美(大和書房)

科学技術振興機構サイエンスチャンネル エクスペリメンツ ~現代の技術を育んだ科学実験~ (12)正確に時を刻む時計の礎! ~ガリレオ・振り子の等時性~


 実験は、自分の手を動かしてやってみると、とても楽しいものです。ぜひ、楽しみながら実験をして、自由研究レポートを作成してみてください。

--ありがとうございました。

 尾嶋氏の著書『続 本当はおもしろい中学入試の理科』(大和書房)では、「オレンジジュースとアイスティーでセパレートドリンクを作る」「条件を変えて氷がとける早さを比べる」「月の満ち欠けを再現する」など、小学生におすすめの20の科学実験を紹介。実験を楽しんだあとは、同じテーマを扱った中学入試問題にチャレンジできる。イラストと写真入りでわかりやすく、子供の考える力、地頭力を育てる1冊。

 [問題掲載中学校 *50音順]麻布中学校、市川中学校、浦和明の星女子中学校、桜蔭中学校、大妻中学校、海城中学校、開成中学校、カリタス女子中学校、暁星中学校、駒場東邦中学校、三田学園中学校、須磨学園中学校、聖光学院中学校、洗足学園中学校、筑波大学附属中学校、豊島岡女子学園中学校、武蔵中学校、森村学園中等部、ラ・サール中学校

 『続 本当はおもしろい中学入試の理科』のAmazon購入者特典として、「書きこむだけで完成!自由研究シート」を配布中(2023年8月末まで)。自由研究レポートをまとめるのに便利なA4サイズのレポート用紙なので、ぜひ今年の自由研究に役立ててみてはいかがだろうか。


《編集部》

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