【大学受験2024】共通テスト英語は語数増え内容複雑化、リスニングに重点を…J PREP

 J PREP斉藤塾の国内大学受験部長・桂侑司氏と国内大学受験部主任講師のTom McCormack氏に、共通テスト英語の出題傾向と2024年度の受験に向けた対策、受験生へのアドバイスなどを聞いた。

教育・受験 高校生
PR
【大学受験2024】共通テスト英語は語数増え内容複雑化、リスニングに重点を…J PREP
  • 【大学受験2024】共通テスト英語は語数増え内容複雑化、リスニングに重点を…J PREP
  • J PREPの国内大学受験部長・桂侑司氏
  • J PREP 国内大学受験部主任講師のTom McCormack氏
  • 「リスニング力を鍛えることでリーディング力の向上につながる」と桂氏
  • 「まずは基礎力。過去問は直前期に取り組むくらいでちょうど良い」とMcCormack氏

 2024年の大学入学共通テスト(旧センター試験、以下、共通テスト)まで3か月を切った。2024年の共通テスト英語はどのような出題傾向になり、これからどんな対策をしていけば良いのだろうか。

 英語塾J PREPの国内大学受験部長・桂侑司氏と国内大学受験部主任講師のTom McCormack氏に、共通テスト英語の出題傾向と2024年度の受験に向けた対策、受験生へのアドバイスなどを聞いた。

共テ英語は新学習指導要領を色濃く反映した内容に

--まずは2023年に実施された共通テストの「英語」を振り返り、傾向についてお聞かせください。

桂氏:2021年から始まった共通テストも3回目が終わり、大枠として出題傾向が安定してきたという印象をもっています。内容としては2022年度から高校に導入された新学習指導要領を色濃く反映した出題になっていると思います。具体的には、新学習指導要領が掲げる育成すべき資質・能力の3つの柱、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう人間性等」がテストに反映されてきたというところです。

J PREPの国内大学受験部長・桂侑司氏

--これまでの「センター試験」と「共通テスト」の違いはどういったところにあるのでしょうか。

桂氏:形式的なところでは、名称が筆記試験からリーディングになり、また、配点がリーディング200点・リスニング50点だったものが100点・100点とリスニングの配点が上がりました。

 内容面では、リーディングの試験形式が大きく変わりました。センター試験で出題された文法や発音、アクセント、単語の整序問題が一切なくなって、すべてリーディング(文章読解)になったのが変化のひとつ。さらにリーディングの設問についても、かつては日本語だったのが英語になりました。

 もうひとつの大きな変化は語数の増加です。2023年の共通テスト後のウェビナーでもご案内したとおり、1989年の共通一次試験では100分の試験時間で総英単語数2,728語でしたが、2021年の第1回共通テストでは80分で5,381語と大幅に増え、求められる1分あたりの処理速度も67.3語に増加しました。これは1989年比で2.47倍にあたります。語数はさらなる増加傾向にあり、2022年の共通テストは80分5,850語で1分あたり処理速度は73.1語(1989年比2.67倍)、2023年は80分6,014語で同75.2語(同2.76倍)と増加。2024年の共通テストも語数が増える可能性があるということです。

 また、語彙難易度においても、1989年は筆記試験の英単語のうち67.1%が英検3級レベルでしたが、2023年の共通テストは英検3級レベルが減少。英検準1級レベルの難しい単語もあり、前後の文脈から推測をさせるものが出題されるなど難化しています。

 共通テスト英語は英検に比べると分量が多く、単語の難易度は英検2級~準1級程度。特徴としては、「日本の高校生が日常的に置かれている、具体的な場面に即した問いが出題される」ことがあげられ、さらに実生活・実社会におけるリアルなコミュニケーション英語であること、ディスカッションやディベート、プレゼンを模した出題、アメリカ・イギリス・英語母語話者以外の発音が混在していることの3点があげられるでしょう。

McCormack氏:昔のセンター試験・共通一次では文法など語学力や言語能力を問う問題が多かったのに対し、共通テストでは生徒が知識や情報を得るための言語としての英語に焦点があてられており、問われる内容が複雑化しています。

 たとえば1989年共通一次の大問4ではレストランでの簡単な応答が出ていましたが、2023年の大問4では記憶が文脈的な要因でどういう風に影響を受けるかという話が出ており、生徒が英語で何を知るべきかという期待値がまったく違う。道案内や一問一答といったような単純な話はほとんど出なくなり、さまざまな内容を複合的に考えて応用するというかなり高度な出題内容に変化しています。

 一方、リスニングの変化については、ひとつは読み上げの回数。センター試験ではすべて2回読みだったのが、共通テストでは、多くの内容が1回読みになりました。また、もうひとつの変化は多様な発音とアクセントです。これまでは基本的にアメリカ英語だけだったものが、イギリス英語や日本語母語のアクセントなど、さまざまなものが入っています。

J PREP 国内大学受験部主任講師のTom McCormack氏

学校生活に根差したアカデミックな英語に重点

--過去3年の実績から見て、2024年の共通テスト英語はどのような出題が予想されるでしょうか。

桂氏:大学入試センターが6月に公表した問題作成方針によると、全体としてリアルなコミュニケーションに根差した出題をするとしています。それを踏まえて、引き続き日本の高校生が触れるであろうWebサイトやレポート、ブログ、記事といった具体的・日常的なものが素材になることは変わらないでしょう。

 では変わるものは何かというと、単純な日常生活に根差したTOEICのような問題はますます減って、逆にTOEFLのような学生生活、アカデミックな種類の問題が増えるのではと予想しています。この根拠として、弊社で3回の共通テストの大問を分析し、「study」や「student」といった学校に関するキーワードが入っている設問がどのくらいの比重なのか調べたところ、2021年は70%、2022年は90%、2023年は80%となりました。高校生あるいは大学に入ってから遭遇しうるアカデミックな場面設定の問題が全体的に増加していると見ています。

McCormack氏:よりアカデミックな英語に重点を置くようになり、1つのテキストで2つのトピックを扱うような問題が出題されるようになると思います。

 10~15年前なら、生徒たちは地球温暖化のみについて書かれた文章を読んでいたかもしれませんが、最近は地球温暖化と日本の人口減少の関係を論じた文章を読むよう求められています。こうした2つの異なるトピックの関連性を見出し、批判的思考に重点を置いた英文が出題されているので、こうした傾向はこれからも続くのではないでしょうか。

日常的に英語を聞く習慣をつけ、リスニング中心の学習を

--扱う内容もますます複雑化しているのですね。受験生はこれから数か月間の直前期、どのように共通テストの勉強に取り組んだら良いでしょうか。

桂氏:共通テストの問題内容や構成といった基本的な事項の確認ができていない場合は、すぐに確認して、対策を始めるべきです。総英単語数の大枠は変わらないと思いますので、過去問や予想問題集などを使って確認していくことです。

McCormack氏:それに加えて、リスニングが非常に重要です。生徒たちは学校外でも日常的に英語を読んだり聞いたりする習慣を身に付けるべきだと思います。

 共通テストに必要な情報処理能力を養うには、週に5~6日、BBCやNPR(アメリカの公共ラジオ)のようなインターネットラジオ、TEDの講演などを聞くのがお勧めです。リスニングは1回聞いただけではなかなか情報が入ってこないので、定期的に英語を聞く時間を作る。朝に歯を磨くのと同じように、日常生活の中で自動的に英語を聞く習慣を身に付けることですね。

 視聴するものについては、自分が聞いて楽しいものを見つけてほしい。楽しみを見つけることで継続しやすくなり、苦行ではなく自然にできるものになります。自分が好きなテーマに関するものや、短い時間のものなど好きなものを選択すると良いでしょう。

桂氏:高3夏の段階で、共通テスト英語リーディングの問題が80分で解き切れない生徒が結構いますが、これはリーディング特有の現象。リスニング30分を解き終わらないということはまずありません。つまりリスニングのスピードで英語を理解するように、ペースメーカーにしていくべきなのです。

 私も通勤時にリスニングをしていますが、『NHK WORLD-JAPAN』というニュースアプリをよく活用しています。2~3分の短さで国内外のニュースを聞けるので、英語力を上げつつ時事知識も得られます。隙間時間や通学中など、いつでもどこでもリスニングを中心とした英語学習をして、リーディングも底上げしていく戦略が有効だと思います。英語に対して身構えず、日常の一部にしてしまうまで慣れ親しめたら強いですね。

「リスニング力を鍛えることでリーディング力の向上につながる」と桂氏

高2までは基礎を固めて高3からスピードアップ

--新学習指導要領が反映される2025年度からの共通テストを受ける、現在の高校1年生や2年生はどのような勉強をしていくのが良いでしょうか。

桂氏:高1、高2の段階では、スピード感は不要です。リーディングテストの80分といった時間制限を重視しすぎるあまり、細部をおろそかにしてほしくない。まずはしっかり文法や語彙、語法など細部を固めてもらって、時間をかければ正確にできることをひとまずのゴールにする。それから高2の秋冬、高3に入るぐらいからスピードアップしていって、それまで培ってきた正確性を時間制限の中で発揮する。それが最終目標になるのですが、まずは正確に基礎に徹してほしいと思います。

 スピードを意識する目安としては、高3の4月ごろにはテスト時間内に解き切れるようにしておく。高3秋冬には、さらに75分以内に解いて見直すなど、ゆとりをもった時間設計をしてほしいです。最上位の大学、9割5分以上の得点を目指すなら、初期から焦らず、高2まではしっかり基礎固めして、高3からスピードアップという形で、最後の詰めを大事にしてください。

McCormack氏:高1高2の段階では、さまざまな種類の本やテキストに慣れることが重要だと思います。図書館や本屋さんに行って、多様な種類の本を読むことを勧めています。

志望校別対策では過去問を重視しすぎない

--これからの時期は志望校対策として、過去問が重要になりますが、過去問研究・指導におけるJ PREPのこだわりを教えてください。

桂氏:まずは、過去問を重視しすぎないことと伝えています。過去問と同じ問題は出ないというのが前提。そのうえで過去問を解く意味とは、解くことによって問題全体の構成が見え、どこに時間を割き、どこで得点をするべきかという戦略を立てられることにあります。あくまでも、今まで培ってきた基礎を答案や点数として発揮するために過去問があるので、これは高3夏秋以降に取り組むべきとしています。

 J PREPでは過去問に過分な労力を割かなくても良いように、高1の段階から授業教材に過去問の良問を使っています。普段の授業や勉強をしていく中で自然に過去問に取り組んで、気付いたら勝手に志望校の10年分の過去問が終わっているという状態にしています。しかし、直近4~5年分の過去問に関しては塾ではあえて扱わず、生徒が直前に問題傾向を見るために残してあります。塾でやらなかった4~5年分の過去問に関しては、共通テスト後の直前期に過去問添削サービスの期間を設けていて、生徒が自由に解き、提出すれば講師が添削して返却しているので、それについてもフォローは万全です。

McCormack氏:私は受験生が過去問に重きを置きすぎてストレスを感じるのは良くないと思います。最終学年のクリスマスあたりまで我慢して、本当に集中してやるくらいで良い。あまりにも早く過去問に挑戦すると、手応えの無さを感じた学生のやる気を削ぎかねません。最終学年の2月までに必ずしも、合格レベルに達している必要はないと思っています。

「まずは基礎力。過去問は直前期に取り組むくらいでちょうど良い」とMcCormack氏

--最後に2024年度の受験生にメッセージをお願いします。

桂氏:今の時期(取材実施日は9月27日)は、受験生にとって精神的に非常にきつい時期です。夏に受けた模試の結果が返ってきて、大抵は落ち込み、焦りを感じて不安になって志望校を変える生徒を、毎年見ています。

 そこで生徒に言いたいのは、英語は語学なのでそもそも学びに終わりはなく、たかだか数年の受験勉強で極められるものではないということ。「何か努力が足りないんじゃないか」と過度に不安を感じるべきではなく、誰もが不安で当たり前なんです。その中でやることとしては、現実的な目標として、志望校の合格最低点を1点でも上回れば良いので、そのために志望校の合格最低点の経年変化を調べて、自分があと何点足りないのか見たうえで、その点数に乗るための勉強を日々重ねることです。

 不安に陥ったまま勉強するのと、楽しく勉強するのとでは雲泥の差です。「自分は大丈夫だ」と信じて学んでほしいです。

McCormack氏:生徒に伝えたいことは、次の3つです。

 1つ目は、しっかり食べて睡眠を取るという基本を大事に。入試本番に最高のパフォーマンスが発揮できるようなコンディション作りをすること。2つ目は、アスリートのように本番で成功するイメージと、トラブル発生時のシミュレーションをしておくことです。雪が降ったときや電車が遅延したときなど、トラブルがあった際のシミュレーションもしておけば、当日のプレッシャーを減らすことになり、余裕が生まれます。

 最後のポイントは、自分の実力を発揮できるチャンスなのだとポジティブに捉えること。そうすることで、勉強に取り組む姿勢も、きっと変わってくるはずです。

--ありがとうございました。


 センター試験より語数や語彙が増えて難化したと評される共通テスト英語だが、スタートから3年が経ち、出題傾向が安定してきたことから、J PREPではその対策もしっかりと確立されているようだ。それもJ PREPの綿密な問題分析による賜物だろう。2024年の共通テスト英語まで残り数か月を切ったが、J PREPのアドバイスを生かして対策に力を尽くしてほしい。

J PREPについて詳しく知る
《羽田美里》

羽田美里

執筆歴約20年。様々な媒体で旅行や住宅、金融など幅広く執筆してきましたが、現在は農業をメインに、時々教育について書いています。農も教育も国の基であり、携わる人々に心からの敬意と感謝を抱きつつ、人々の思いが伝わる記事を届けたいと思っています。趣味は保・小・中・高と15年目のPTAと、哲学対話。

+ 続きを読む

【注目の記事】

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top