2024年度の大学入学共通テスト(以下、共通テスト)が終了した。自己採点を終え、一喜一憂している受験生も多いだろう。しかし、医学部を目指す場合はここからが勝負どころ。国公立大学医学部の合否は、どの大学に出願するかで大きく変わってくるからだ。
たった1つの小さな校舎から、2023年度入試で医学部進学者数100名を輩出した医学部専門予備校・エースアカデミー。代表を務め、自身も医師である高梨裕介氏は、「共通テストの後、誤った思い込みで出願先を決めると、それまでの努力が水の泡になることがある」と警鐘を鳴らす。だがこれは、「出願校を正しく選べば、合格が一気に近づく」ということだ。
合格可能性が一気に高まる正しい出願校選びとは。高梨氏にその秘訣を聞いた。
共通テスト後の出願校選び 致命的な8つのミス
--共通テストが終わると、国公立大医学部の出願校選びが始まります。高梨先生はこの出願校選びこそ、合否に大きく関わる重要なポイントだと指摘していますね。
そのとおりです。医学部受験における出願校選びは、他学部以上に慎重になる必要があります。ところが残念ながら、実際には受験生や保護者だけではなく、進路指導を行っている学校の先生さえも、誤った思い込みで出願校選びをしていることが少なくありません。仮に今、共通テストの結果が振るわなくて落ち込んでいる人も、全国50校の国公立医学部から出願校を正しく選べば、合格する可能性が一気に高まるのです。
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受験生がこれまでどれだけ努力を積み重ねてきたとしても、最後の出願校選びを誤ると、ここまでの頑張りをすべて無駄にしてしまうことになりかねない。医学部に合格することがいちばんの目標なのに、最後の選択でそこにたどり着けないのはあまりにもったいないですよね。
国公立医学部の無料判定キャンペーンに申し込む--誤った思い込みによって、手が届きそうだった合格が遠のいてしまう、と。では、受験生や保護者、学校の先生は出願の際、実際にどのようなミスを犯してしまっているのでしょうか。
誤った思い込みによる出願校選びの致命的なミスは、次の8つです。
8つの致命的なミス
1. 第1志望にこだわり、気合いで合格しようとする
何年分も過去問を解いたり、何度もオープンキャンパスに行ったりして、自分は「絶対この大学に行く!」という強い思いで頑張っていたものの、共通テスト本番では良い判定が出なかった。このような場合、第1志望への思い入れが強いだけに、親子共に諦めきれないケースが非常に多いです。冷静に判定すると合格可能性がないにも関わらず、本人や保護者の方が「ここから気合い入れて挽回するぞ!」などと第1志望を変えずに特攻すると不合格になってしまいます。
2.「第1段階選抜(足切り)がない」大学を選ぶ
共通テストがうまくいかず、「足切り」にあう可能性が高まると、どうにかしてそれを避けようとするものです。この点については、とりわけ保護者の間で誤解が多く、毎年のように「足切りにあわない大学を教えてください」という相談を受けます。しかし、たいてい足切りのない大学ほど偏差値が高く、足切りにあわないことを理由に出願しても、単なる記念受験で終わってしまうことがほとんどです。
3.「個別試験(2次試験)の比率が高い大学」に勝負をかける
共通テストで思うような点数が取れなかったとき、個別試験(2次試験)で挽回して逆転合格を狙おうとするのもよくある失敗です。ところが実際は、偏差値が高い大学ほど個別試験の比率が高いのです。個別試験の比率が高くても、自分の持ち偏差値より高い大学に挑んで合格するケースはほとんど見たことがありません。一方で、共通テストの比率が高いのはおもに地方の国公立大学に多いですが、仮に共通テストで失敗しても、こうした個別試験の比率の低い大学に合格するケースは毎年たくさんあります。つまり、個別試験での逆転合格というのは、自分の持ち偏差値より低い大学でない限り成立しないのです。
4.「得意科目」にこだわりすぎて「全体の配点」を無視する
入試は1科目だけでは決まりません。これも当たり前のことなのですが、「全体の配点」を無視して「得意科目」に固執しすぎると、かえって合格のチャンスが遠のくことがあります。たとえば語学資格を優遇してくれる大学の中に広島大学がありますが、広島大学は1次(共通テスト):2次(個別試験)=1:2の配点比率。具体的には、共通テストが5教科7科目で900点、個別試験が3教科1,800点で、合わせて2,700点満点です。このことから計算すると、仮に英語が得意で、英検などの資格を生かして共通テストで満点換算できたとしても、全体ではたったの7.4%にしかならず、そこまで大きなアドバンテージにはなりません。
あくまでも重要なのは総合力です。共通テスト全科目の合計点とこれまでの模試の結果を総合的に分析し、それに見合った受験校を洗い出したうえで、その中から出願先を選ぶべきです。
5.「倍率が低い=受かりやすい」という安直な判断をする
足切りの多くは志願者が非常に多い場合に実施されますが、だからといって「倍率が低い=受かりやすい」ではありません。わかりやすく言うと、倍率が4~5倍であったとしても偏差値50台であれば実はそこまで難しくはない一方で、倍率が2倍でも偏差値70台だとかなりハイレベルで厳しい競争になります。
6.過去問との「相性」で選ぶ
実に多くの受験生が「出願校は過去問との相性を見て決めなさい」というアドバイスを受けていますが、これは誤りです。
一般的に、総合大学の医学部は他学部との共通問題なので、オーソドックスで解きやすい一方、医科単科大学では独自に作問されるため、総合大学に比べて得点しにくい難問が出題される傾向にあります。
たとえば、筑波大学と浜松医科大学の過去問を解けば、ほぼ全員が「筑波大学の方が相性が良い」と答えるわけですが、そこで安易に筑波大に出願し、不合格になるケースは非常に多いのです。筑波大はひと口に「解きやすい」といっても、受験者のレベル自体が高いので、周囲も高得点を取っていることが予想され、相当の高得点を取って勝ち残らない限り、合格することは困難です。ところが浜松医科大は、問題自体は難しくても、受験者のレベルは筑波大よりは下がるので、過去問であまり手応えが良くなくても合格できる可能性は高くなります。
つまり、問題の解きやすさや相性は、出願校選びの指標にしてはいけないのです。
7.「合格最低点」をクリアしているかどうかで判断してしまう
「過去問で合格最低点をクリアできればその大学は合格確実」と思いたいところですが、合格最低点は毎年変わるため、今年も同じレベルになる保証はありません。そもそも、受験生の多くが取り組んでいる過去問では採点基準がわからないうえ、自己採点も甘くなりがちで、正しい採点は不可能です。たとえば、偏差値が高いわりに合格最低点が低い大学というのは、採点基準が厳しい場合が多いです。
8.全国の国公立医学部50校から選んでいない
8つあげた中でもっとも致命的なミスはこれだと言って良いでしょう。たとえば首都圏在住であれば、東京医科歯科大、千葉大、筑波大、横浜市立大あたりを第1志望にしている受験生が多く、それだけに毎年いずれも狭き門となっています。こうしたところは共通テストでも高得点勝負になりますが、仮に思うような点数が取れなかったとしても、全国の50大学に視野を広げれば、合格する可能性は見出せます。1次試験:2次試験の配点に加え、1次試験と2次試験それぞれの科目ごとの配点を緻密に計算し、50校の中から少しでも合格の可能性が高い大学を選べれば、決してあきらめる必要はないのです。
共通テスト7割台でも国公立医学部に合格できる
--今、指摘されたような致命的なミスによって、本来合格できていたかもしれないのに不合格で終わってしまう実例はどのようなケースになりますか。
当塾には毎年浪人生が入塾してきますが、彼らの不合格体験談を聞くと、不合格の原因はおもに次の3つです。
・共通テストで失敗するも、まだ他に合格可能性のある大学があったのに、第1志望にこだわりすぎた
・共通テストで失敗したからと足切りにあわない大学を選んだ
・全体の配点を無視してしまった
先ほどお話しした8つの致命的なミスの中でも、毎年この3つが特に多いと感じます。
結果、不合格となってしまうわけですが、実はいちばんの痛手は、共通テスト後から合格発表までの約2か月間という貴重な時間を無駄にしてしまうことです。
--「2か月間無駄にする」とはどういうことですか。
出願校選びを誤れば、当然ながらその大学のための対策というのは、自分の学力には見合いません。「ここから挽回するぞ」と意気込んだところで、合格できる可能性はほぼゼロです。
恐ろしいのは、そうやって身の丈に合わない勉強を始めてしまうと、何も身に付かないどころか、日増しに基礎が抜けていくことです。難問にばかり気を取られ、基礎の復習に手が回らなくなるため、すでに覚えていた知識や、せっかく身に付けた解法がどんどん抜けていってしまうのです。
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仮に、もう1年浪人するとしても、共通テスト後からの2か月間でしっかり基礎が固められれば、現役生に比べて大きなアドバンテージとなり、幸先のよいスタートが切れるはずです。ただ実態としては、誤った出願校選びによって地に足がつかない勉強をし、貴重な時間を無駄にするケースが多いですね。
--では逆に、出願校選びがうまくいき、合格につながった事例を教えてください。
昨年の2023年は、共通テストで7割台でも15名が国公立大医学部に合格しました。その中から、合格に至った3名の生徒を紹介しましょう。
1人目の生徒は、共通テストでは国語がわずか4割で、全体でも70%台前半という結果でした。大手予備校の判定ではどこもE判定で、もはや国公立そのものを諦めなくてはいけない状況でした。それでもあえて出願するなら、直感的には国語の傾斜配点が低い新潟大かと判断してしまうところですが、当塾でデータを分析した結果、新潟大では足切りリスクが高い一方、他の大学にまだ可能性があることがわかったのです。
2人目の生徒も、共通テストは70%台前半の得点でしたが、分析によって合格の可能性が見えたため、出願することになりました。本人も保護者も、「提案されるまで受けようとも思っていなかった」という遠方にある大学でしたが、思い切って挑んだところ、見事合格を勝ち取りました。
そしてもう1人、同じく70%台前半から合格した生徒は、なんと元々は私立専願で共通テスト対策は一切しておらず、国語と社会はまったくの記念受験でした。ところが分析の結果、合格の可能性がある大学が見つかり、思いもよらなかった合格となりました。
いずれも、たまたま「運が良かった」という美談で済ませる話ではありません。
大事なのは、共通テストの得点と持ち偏差値から緻密にデータを分析し、生徒ひとりひとりの実力にもっともフィットする大学を算出できれば、共通テスト7割台前半でも十分合格の可能性があるということです。
共通テスト本番にはメンタルも大きく影響しますが、出願校選びにメンタルは一切関係ありません。合格に至るカギは、データに基づく緻密な計算と冷静な分析なのです。
国公立医学部の無料判定キャンペーンに申し込む「合格が一気に近づく」出願校選びのコツは?
--7割からでも国公立に受かるというのは、夢のような話ですね。貴塾が手がけるデータに基づいた出願校選びによって、実際にどのような合格実績が出ているのでしょうか。
今春の卒業生のうち、医学部に進学した生徒の数は100名でした。これは生徒1人が複数校合格した場合をすべてカウントした「のべ合格者数」ではなく、「実際に医学部に『進学』した生徒の数」です。そのうち、国公立医学部への合格者は31名でした。
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中でも、15名以上が共通テストの国語か社会で7割以下という得点でした。「国公立大学の医学部は、共通テストの国語と社会が大事」という意見もありますが、この実績から見る限り、私は決してそんなことはないと思っています。
また、2次力を測る偏差値(河合塾の記述模試)は、最後の模試で50台でも合格しています。
つまり、共通テストが多少振るわなくても、最後まで主要教科の英語・数学・理科の基礎をしっかり固め続けること。そして今、話したような正しい出願校選びができれば、まだ合格できる可能性は十分にあるということです。この合格実績が何よりの証拠だと思います。
--最後に、あらためて、共通テスト後に「合格が一気に近づく」出願校選びのコツを教えてください。
コツは次の3つです。
・出願校選びは総合力で決める
・全国の国公立医学部50校すべてから選ぶ
・誤った思い込みを正し、共通テスト後の時間を無駄にしない
国公立医学部の入試は、共通テストと2次試験の配点比率、さらには共通テスト、2次試験それぞれの科目ごとの配点比率が大学ごとに異なるため、正確に自分の立ち位置を知る必要があります。ひと口に「共通テストの結果」といっても、本来の点数(素点)通りではなく、大学ごとに傾斜がついており、さらに2次試験が加わると非常に複雑な計算をしなくてはいけません。
そこで、当塾では、生徒の共通テストの自己採点と、これまで受験した記述模試の結果による2次力から、全国50校すべての合格可能性を算出し、前期・後期とも推奨校を選定しています。もちろん、生徒の志望校は尊重しつつ、総合的に出願先を絞り込みます。
繰り返しになりますが、本気で医学部に合格したいのであれば、先輩が通っているとか、先生に勧められたといった要因だけで大学を選んではいけないし、これまで志望校として掲げてきた大学にこだわりすぎて、精神論だけで盲目的に特攻するのは絶対にやってはいけません。
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データを元に、全国の国公立大学50校すべての中から総合的に判断すること。それによって、勉強内容と自身の学力のミスマッチを避け、共通テスト後も基礎固めが手薄になることなく、有意義な学習を続けられることが何よりも重要です。
保護者は冷静に、子供が伸びることを信じてサポート
--この時期、保護者が受験生にできることとは何でしょうか。
何よりも、お子さんのいちばんの味方であってほしいと思います。共通テストの結果で子供を責めたり、親自身が不安になってさまざまな情報に振り回されたりしないことが大切です。結果が振るわないとき、いちばん辛いのは子供自身です。子供のメンタルが弱ってしまっている時こそ、親は子供が冒頭の8つのミスに陥らないよう見守ってあげること。そして、合格のチャンスを見極めるべく、出願校選びでは3つのコツを意識し、最後まで子供の合格を信じてあげてください。
--ありがとうございました。
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