【e絵本】胸をうたれ、背筋がぴんと伸びる“バクダン”闘病記

 少年時代の闘病生活を綴った絵本アプリ「ぼくはバクダン」が配信されている。細野修一・細野千恵子作、開発元ランズ。iPhone/iPad対応。

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ぼくはバクダン
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 少年時代の闘病生活を綴った絵本アプリ「ぼくはバクダン」が配信されている。細野修一・細野千恵子作、開発元ランズ。iPhone/iPad対応。通常600円を、発売を記念して特別価格350円で提供中。また、本アプリに先がけ、同名の絵本が七つ森書館より発売されている。

 ストーリーはすべて、作者・細野修一さんの実話で構成される。昭和33年、遠足に来ていた小学3年生の修一を、腹痛が襲う。虫垂炎と診断され手術をしたが、その後も腸の調子はよくない。お腹がプーッとふくれて痛くなる「バクダン」のような体と、彼はつき合うことになった。手術続きの大変な日々でも、小さな喜びを大切に暮らす修一。その、ただ前を向いて歩こうとする姿は、読者の胸をうつ。

 さて、作品中では最後の手術が成功し、元気になる修一だ。しかし現実の細野さんの身には後年、この時期の輸血が原因で再び病魔が降りかかる。C型肝炎が体を蝕み、脳内出血から失語症になってしまうのだ。現在も彼は闘病中である。この作品の大部分は、苦しい症状と戦いながら生み出されたものだ。

 それでも、作品があっけらかんと前向きなのは、なぜなのか。それはきっと彼が、あの時の修一のように、今もちっとも諦めていないからだと筆者は思う。小さな喜びを大切に、もの作りに励んで過ごす毎日。そんな彼に、やっぱり読者は胸をうたれ、背筋がぴんと伸びる。

 細野さんの使う「絵本」という言葉は、読む人を優しく勇気づけてくれる。あなたは、どんなメッセージを受け取るだろうか。

◆ぼくはバクダン
価格:350円
条件: iPhone、iPod touch および iPad 互換 iOS 4.0 以降が必要
ぼくはバクダン - RUNS Co.,Ltd.
《てらしまちはる》

てらしまちはる

ワークショッププランナー/コラムニスト/絵本ワークショップ研究者。東京学芸大学個人研究員。2022年3月に単行本『非認知能力をはぐくむ絵本ガイド180』(秀和システム)を刊行。絵本とワークショップをライフワークとしている。アトリエ游主宰。

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