中学生が最先端サイエンスに触れる1日…広尾学園サイエンスデー

 3月20日、広尾学園において「広尾学園サイエンスデー 最先端と最前線の超一級講座」と呼ばれる特別授業が開催された。祝日にもかかわらず、800名以上の生徒が参加し、国内外で活躍するエンジニアや研究者の講義を聴講した。

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広尾学園、スーパーサイエンスデー
  • 広尾学園、スーパーサイエンスデー
  • ロボット技術と未来社会、千葉工業大学 古田貴之氏
  • ノーベル賞と日本人、餌取章男氏(元日経サイエンス編集長)
  • 脳は不思議がいっぱい、自然科学研究機構生理学研究所 柿木隆介氏
  • 地球規模の創薬:寄生虫からがんまで、東京大学 北潔氏
  • 暗がりの海底温泉をご満喫!地球を美味しく食す生物たち、JAMSTEC 山本正浩氏
  • 超ミクロの世界の素粒子たち、KEK 吉見弘道氏
  • 小惑星探査機「はやぶさ」の軌跡と奇跡、JAXA 渡辺勝巳氏
 3月20日、広尾学園において「広学サイエンスデー 最先端と最前線の超一級講座」と呼ばれる特別授業が開催された。祝日にもかかわらず、800名以上の生徒が参加し、国内外で活躍するエンジニアや研究者の講義を聴講した。

 広学サイエンスデーは、同校が取り組むキャリア教育の一環として行われるもので、生徒が最先端の科学技術研究に触れさせることを目的としている。カバーする分野は、宇宙開発、脳科学、医学、核融合、超電導、素粒子、数学史、生物学、天文学、地球物理学、ロボット工学、スパコン、音響工学など多岐にわたり、23の講座が開かれた。

 各講座は、たとえば「フタバスズキリュウの発見と白亜紀の窓」(古生物学)という講座では、フタバスズキリュウの発見者であるいわき市教育文化事業団 鈴木直氏を、「ロボット技術と未来社会」(ロボット工学)では、千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター 古田貴之氏を、「ノーベル賞と日本人」(科学史)では物質・材料研究機構(NIMS)科学ジャーナリスト 餌取章男氏を、「小惑星探査機『はやぶさ』の軌跡と奇跡」(宇宙研究開発)では宇宙航空研究開発機構(JAXA) 渡辺勝巳氏を、といった具合に一流の講師陣を招へいしている。

 また、講師陣の所属組織は、理化学研究所、JAXA、海洋研究開発機構(JAMSTEC)、高エネルギー加速器研究機構(KEK)、NIMS、東大、明治大学、筑波大学、千葉工業大学の大学院や附属研究機関のほか、NECなどの民間企業となっている。

 受講者は、学校の方針もあり中学生が中心となるが、講義そのものは高校生や大学生が聞いても十分勉強になる内容で、ほとんどの講師がスライドを使い、学会での発表や企業でのプレゼンテーションと同様な形式で講義を行っていた。

 受講生の中には、コンテストで準優勝実績のある自作ロボットを持ち込んだ生徒もいたという。また別の中学3年生(2012年3月現在、以下同)の女子生徒は、「天の川とか好きだったので」と「電波で調べる天の川銀河」(天文学)を受講したといい、「地球規模の創薬:寄生虫からがんまで」を受講した中学1年生の女子生徒は、「日本人も新薬の開発に貢献しているのでびっくりした」と感想を述べていた。

 講師も、普段は高校生や大学生に向けて話すことが多く、主な対象が中学生ということで工夫をしている姿も見受けられた。

 NIMSの高野義彦氏は、「ダイヤモンドの科学:宝石から超電導まで」(超電導)の講義で、実際のダイヤモンドを持ち込み、本物のダイヤの見分け方や紫外線を当てたときの発光を見せるなどの工夫を行った。高野氏によれば、同じ内容でもビデオを見せるより、実験をしたほうが生徒の反応や理解がよいという。なお、ダイヤモンドは現在、メタンガスから作る技術があり、ホウ素を混ぜることで半導体となり、さらに金属、超伝導体へと組成を変えることができ、シリコンよりも高熱、高電力に耐える半導体の素材としても注目されていることが説明された。

 「アインシュタインの遺産~重力波を求めて~」を担当した佐藤修一氏(法政大学理工学部創生科学科)は、「中学生を対象に話すことは少なく、ちょっと難しい内容だったかもしれません。しかし、最近では光速を超える素粒子があるのではないか、不確定性原理の例外が発見された、といった発表が相次いでいます。重力波の観測もこれらの分野にも通じるものですので、少しでも興味を持ってくれたらよいと思います。」と語った。

 最先端の科学者や研究者を呼んでいるため、確かに内容は中学生にはハードルが高いかもしれない。この点について広尾学園広報部長の金子暁教諭は、「キャリア教育のねらいのひとつに、早い段階から第一線の研究者に接してほしいということがあります。内容が難しくても、そこから自分なりに将来や目標への結びつきを感じてくれればよいと思っています。そのため、多少背伸びしてでも、現場の空気に触れてもらっています。」と説明する。

 中学生を対象に、科学技術の分野で、このレベルの講師陣を揃えた講座を行っている学校は、私学といえども少ない。同校が、単に受験を考えた進学校ではなく、その先の夢や目標を実現させるための教育を考えていることを象徴する取り組みといえるだろう。
《中尾真二》

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