今回の米国におけるトライアルは、「パーソン・センタード・ケア」を理念とし120年の歴史をもつ、オハイオ州クリーブランドのNPO法人高齢者介護施設「エライザ・ジェニングス・シニア・ケア・ネットワーク(Eliza Jennings Senior Care Network)」(以下、EJ)で行われた。事前に6か月かけてEJスタッフが学習療法を習得した後、2011年5月から6か月、実際に認知症を発症しているEJの23名に学習療法を実施すると同時に、比較のために学習療法を実施しないEJ関連施設の24名を経過観察。教材は、米国人(今回は白人)が小さい頃から慣れ親しみ今も楽しく読める音読教材と、日本でも使用している計算教材で構成した。
さらに、米国の介護施設に必須となっている、施設の質を見るための「MDS(Minimum Data Set)」では、認知機能総合指標・気分障害総合指標ともに、介入群の優位性が認められた。なお、今回の両群の平均年齢は、介入群が86.1歳、対照群が88.6歳であったため、介入群の80歳未満の被験者を排除した16名で比較検討した場合も、同じ結果が得られ、年齢依存でないことも証明された。