FAB Learnig 2013 Day1…「光」をつくるワークショップ

 MITメディアラボ発祥のFabLabとオバマ大統領が推奨するSTEM教育を融合させた新しいワークショップ「FAB Learning 2013」が、FabLab Kamakura, LLC協力のもと、ベネッセコーポレーション主催で行われた。

教育・受験 その他
ワークショップに使う道具(アナログ編)
  • ワークショップに使う道具(アナログ編)
  • FAB Learningのスタート
  • まずはプレゼントです
  • プレゼントの中身は光る立体がたくさん
  • 色が変わる光る正12面体。この日はこれを作る
  • 中を開けるとLEDのついた部品が
  • 立体も分解していく
  • 正12面体の展開図になった
 MITメディアラボ発祥のFabLabとオバマ大統領が推奨するSTEM教育を融合させた新しいワークショップ「FAB Learning 2013」が、FabLab Kamakura, LLC協力のもと、ベネッセコーポレーション主催で行われた。9組の親子を迎え、3月16日と23日の2日間にわたり東京・渋谷で開催された。そのうち3月16日のプログラム「Day1」の模様をお伝えする。

 Fab Learningは3つのパートから構成されている。最初のパートは「Learn」であり、どんなことをするのか課題が発表され、何を学習するのかを参加者と議論していく。次の「Make」で実際にツールやソフトウェアを使って「モノ」を作っていく。スタッフはツールの使い方などを教え、アドバイスをする。Makeの作業は実際にモノを組み立てるだけでなく、子どもたちに絵を描かせたりシートを記入させるなどして「設計図」を作らせる。最後は「Share」として、作ったモノを皆で発表し合う。ここで意見交換も行い、反省点や改善点などが議論されるが、初日は宿題という形で2日目の課題につなげる構成となっていた。

◆Learn:「光」をテーマにリバースエンジニアリングを学ぶ

 Day1のテーマは「光」だ。Learnでは、プレゼントとして大きな箱が用意された。箱の中には、光る立体(正12面体)がたくさん入っており、よく見ると色がランダムに変わっていく。これがまず、子どもたちの目を引く。そしてこれが、これから皆で作る「光」だと紹介し、どういう仕組みになっているかを見るために分解を始める。そして、中にLEDが光る部品が入っていることがわかる。さらに、その部品も、ケース、ボタン電池、LED基板、ヘッダー端子に分解される。立体の糊付けされた部分をはがすと、1枚の紙(展開図)になる。

 子どもたちは、光る部品がどんなものなのか、光らせるには何が必要なのか、そして平面を張り合わせると立体ができること、正5角形を12個つなげたものを組み立てると正12面体ができることなどを、体験によって学習する。あるモノを作るとき、それを分解して構造を探り、再現する方法を考える。ワークショップ初日のLearnでは、リバースエンジニアリングを体験学習させているわけだ。

◆Make:親子で異なる手法で課題をこなす

 続いてMakeのフェーズに入る。ここでは、親どうし、子どうしで各2グループに分かれ、自分たちはどんな光を作るかを話し合い、実際に制作する。作業は、正12面体を作る、光るパターンをプログラムする、の大きく2つの工程に分けられる。正12面体の制作について、大人のグループは、定規・コンパス・分度器などを使って手作業で紙を切り抜いて行う。子どもたちは、デジタルツールを駆使し、正12面体を作っていく。PCのモデリングソフトを利用して、正12面体の立体を描き、それを展開図に変換する。そのデータをクラフトロボというロボットカッター(X-Yプロッタの原理で紙を切り抜く機械)に読ませて紙の加工を行う。

 「分度器を使うのは数年振り」という大人たちが多く、手作業での組み立てには苦労していたが、大人どうしでも議論し合い、どうにか完成させていた。中には、正6面体に勝手に(?)課題を切り替えてしまった大人や、正5角形や展開図の書き方をスマートフォンで検索する大人もいた。

 一方子どもたちは、初めてPCを使うという子もいたが、見よう見まねで光るパターンをプログラムしたり、展開図データを作成していた。高学年の子どもでPCを使った経験のある子は、マウスやメニューも使い慣れているようだ。糊付けに若干手こずるようすも見られたが、全員がそれぞれの立体を完成させていた。

◆Share:発表によってプレゼン能力を高める

 途中におやつ休憩を挟んで、最後に、全員が作った「光」を発表する「Share(共有)」のフェーズとなる。ここで、なんでこの配色にしたのか、苦労した点、面白かったことなどを各自が発表することで、制作過程や結果を共有する。

 参加した子どもたちからは、「空色が好きなので」「みんなと仲良くできたので楽しかった」「色を決めるのが楽しかった」といった声が聞かれた。大人からは「手作業なので形がいびつになってしまった」「色使いが娘と似ていた」といった感想があった。思い思いの発表、考えたことを説明することで、表現力、説明力が身についていく。

 このあと、各自が決めた配色や光り方について、あるいは思いついた光について、それを表す言葉を付箋に書いてボードに張り出し、同じ言葉や近い言葉をまとめた。この、付箋とボードを使ったディスカッションはペーパープロトタイピングなどの手法として、実際の会社の会議で利用されることもある。そして、まとめられた光り方の表現(ピカピカ、キラキラ、ポカポカなど)の中から、自分の好きなものをひとつ選ぶ。

 最後に、「選んだ言葉を表すモノを帰り道や次回のワークショップまでにひとつ探してくる」という宿題が出された、「Day1」を終えた。
《中尾真二》

中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。エレクトロニクス、コンピュータの専門知識を活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアで取材・執筆活動を展開。ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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