【民間人校長】学校現場に感じる、素朴な?(はてな)

 夏休みといっても、部活あり、補習ありで、連日のように登校している北角氏。忙しい中、1学期を振り返り、感じた学校現場や公教育の違和感、“えっ、なんでこんな仕組みになってるの?”と思ったことを、素朴に語っていただけた。

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北角裕樹校長
  • 北角裕樹校長
  • 北角氏が校長を務める大阪市立巽中学校
 「ほかにも、教職員の労働環境については思うところがたくさんあります。大阪市ではこれまで厚遇問題など多くの不祥事があり、そのたびに職員の行動を規制してきました。その結果、非常に働きづらく、コスト高な組織の体質になってしまっています。

 ただ、こうした制度上の不便さが多い一方で、教職員の働き方については校長の働きかけで改善できる部分もありますので、業務改善はしっかりやりたいと思っています。」

 これだけ様々な制約があると、校長のみならず、教員のモチベーションにも影響しても不思議ではない。加えて、保護者の期待に応えなければいけない、というプレッシャーもあるだろう。そんな教員の皆さんの様子は、北角校長にはどのように映っているのだろうか。

 「非常に生徒のことを思って仕事をしていると思います。決して恵まれた環境ではなく、多忙でストレスフルな仕事ですが、生徒のためになると思えば寝る間を惜しんで仕事をしてくれます。必要なら何度でも家庭訪問を繰り返しますし、問題が起これば夜でも飛んできます。本当に頭が下がる思いです。このことが、あまりに世の中に知られていないのが残念でたまりません。教員の頑張りを伝える情報発信に力を入れたいと思います。」

 筆者も教員の皆さんと話す機会があり、そのたびに北角氏のように感じる。本当に頑張っている、と。そして、そんな彼ら彼女らに代わり、教員の実情を発信していきたい、と。

 また、筆者の勤務先(Z会)では、仕事で関係する同僚、特に若手の後輩たちに、「夏休みは外の勉強会などに出て、多くの教員に触れられるチャンス。どれだけ子どもたちに向き合おうとしているかを肌で感じ、皆さんの顧客志向をより高めてほしい。」と伝えてもいた。

 教員がそんなに頑張っているからこそ、「よりこうしたらいいのに」という、民間出身ならではの視点も芽生えている。

 「一般企業にあるような、社員同士のライバル心から生まれる切磋琢磨や、給料目当てのモチベーションというのはあまり見かけないような気がします。『こういう専門性を身につけて、将来はこういう業務がやりたい』という自分のキャリアデザインについてしっかりと話ができる教職員も多くはありません。

 ショックだったのは、重要ポストを進んでやりたいという雰囲気があまりないということです。教頭、校長など管理職も敬遠されており、教頭試験の受験者も非常に少なくなっています。なり手がいないので教頭に欠員が出るかもしれない状況だとも聞きます。」

 教育ニュースでよく耳にする実態は、やはり本当のようだ。

 「『担任と、部活をしているのが一番充実している』という気持ちは、(前職である)新聞記者の多くも『現場で取材して記事を書くのが一番楽しい』と考えていたのでよくわかりますが、教育界全体を見ると、きわめて由々しき事態です。個々の教職員に問題があるというよりは、管理職になっても待遇がよくならないなどの仕組みの問題だと思います。皮肉なことですが、民間人校長の導入が必要となる背景としては、「校長のなり手がいない」という現実もあるのです。」

 1学期に感じた課題を解決するために…。9月、北角校長の第2幕が開く。

 彼の気持ちを、本コーナーでの情報発信にて、精一杯支援していこうと思う。本記事に触れた皆さんも、取り上げた内容について、FacebookやTwitterその他で多くの方に届け、北角氏を応援していただけると幸いである。
《寺西隆行》

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