OUJ MOOCについては、放送大学学長 岡部洋一氏が説明した。OUJ MOOCは独自のマッシュアップ型プラットフォームで講義を配信する。岡部氏は「放送大学では比較的高齢者の受講者が多いので、プラットフォームを考えるときに、電子ブックを軸に考えることにしました。」と、異なるプラットフォームを採用した理由を説明した。 電子ブックは「CHiLO Book」というEPUB対応のプラットフォームを利用する。講義は、解説部分として電子ブックのコンテンツを読みながら、講義の動画は電子ブックのページに埋め込まれたYouTubeコンテンツを視聴する。 双方向なソーシャルラーニングのためには、Facebookを利用する。受講者はOUJ MOOCのアカウントにアクセスし、コメントなどで講師や他の受講者と質問や議論を行う。小テストや試験についてはMoodle(オープンソースのeラーニングプラットフォーム)、修了証のバッジにはMozilla Open Badges(Mozillaが提供する学習証明プラットフォーム)を利用する。 OUJ MOOCは、gaccoのようにオーダーメイドのプラットフォームではなく、オープンシステムの各種基盤を組み合わせているのが特徴だ。このようにオープンなサービスやプラットフォームを活用し、新しいサービスやビジネスを構築するモデルは、西海岸の先進企業が多く採用しており、マイクロソフトやIBMも、AzureやBlueMixのようなクラウド基盤上でこのようなサービスやソリューションを提供する動きが急速に広がっている。その意味では、OUJ MOOCの方が、今後のビジネスやグローバル展開に柔軟性と機動力をもっているといえる。 なお、JMOOCでは、MOOCsのプラットフォームについて特定のものに制限するつもりはないとする。さまざまなプラットフォームやソリューションで、オンライン講義を展開し、多くの大学や企業のニーズに対応可能なユースケースと関連するナレッジを蓄積し、MOOCsを広げていく戦略のようで、これからさらに別のプラットフォームが追加される可能性もある。 最後は、コース開発の責任者として東京大学 情報学環 准教授 山内祐平氏が、この日、開講となった本郷教授のコースを例に、JMOOCのコースの特徴や受講者の属性などを紹介した。 山内氏は「安田講堂での授業は1,000人が限界だが、JMOOCのようなオンライン講義なら10,000人規模の授業が可能です。」と説明した。 「日本中世の自由と平等」は本郷教授の授業の集大成といえる内容で、レポートの課題なども思考力を問う内容で高度なもので、東大レベルだという。講義をしっかり聞くだけでなく、自分で文献などを調べないと解けない問題だそうだ。受講者どうしの議論も、オンラインの掲示板のほか、自主勉強会を開催する予定もあるという。これは、courseraなどではmeet upとよばれるオフ会のようなものだ。また、予定されている対面授業は、反転授業、ディベート、ジグソーメソッドを取り入れたグループワークなども考えているという。 「日本中世の自由と平等」の受講者について、男性は60代が全体の20%以上を占めるなどもっとも多くなっている。これに対して女性の受講者で20%を超える層は、20代、30代、40代と広くまたがっている。山内氏は、いわゆる「歴女」とよばれるような人たちが多く申し込んでいるのではないかと予想していた。 JMOOCの授業は、現状では学位制度に準拠した形でのカリキュラムや授業時間数で設計されているわけではないが、OUJ MOOCは、ベースが放送大学の授業ということもあり、たとえば岡部教授の「コンピュータのしくみ」は、既存の学位制度に照らしても15時間2単位に相当する内容になっている。 JMOOCは、今後の展開のひとつに修了証の高付加価値化もあげていた。将来的には学位相当の認定、単位取得など考えているか聞いてみた。「そのためには、シラバスの見直し、アカウントの本人同位性認証、試験のなりすまし対策といった技術的な問題など、クリアしなければならない点も少なくない。検討課題として議論はしている。」(岡部教授)との回答だった。 海外や在宅で授業を受けて学位認定や単位が認められるなら、海外の学生や社会人などへの大学教育の間口が広がることになり、大学側にとってもメリットはあるはずだ。いまのところMOOCsの周知や活動を広げることが先決だが、新しい高等教育の改革の中で、しかるべき制度やしくみの中で、会員大学内での相互単位認定などに期待したい。