教員育成で「教室から、社会を変える」…Teach for Japan 松田悠介氏

 子どもたちの学習環境の向上と、若者たちのリーダーシップの育成を目的に活動している非営利組織「Teach for Japan(TFJ)」。TFJ創設者で、自身も1児の父親であるCEO 松田悠介氏に、TFJの目指す姿や日本の教育へのおもい、子どもたちの将来について聞いた。

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Teach for Japan CEO 松田悠介氏
  • Teach for Japan CEO 松田悠介氏
  • インタビューに応える松田氏
  • インタビューはTeach for Japan 東京オフィスで行われた
  • インタビューに応える松田氏 身振り手振りを交た熱弁
  • インタビューに応える松田氏 TFJ社員もあたたかく見守る
  • 教員向け講習会や、学生や社会人のリクルーティングも活発に行っている
 子どもたちの学習環境の向上と、若者たちのリーダーシップの育成を目的に活動している非営利組織「Teach for Japan(TFJ)」。2015年で設立5周年を迎え、これまで教育現場に送り出された教師は第1期から第3期までで38名になる。また、教師支援プログラム「Learning for ALL」が独立法人化するなど、教育界で一目置かれる存在だ。

 TFJは、独自に採用した人材に研修を行ったうえで、公立学校の教師として2年間赴任させるフェロー(教師)シップ・プログラムの実施と運営を行っている。活動理念は「教室から、社会を変える」こと。TFJ創設者で、自身も1児の父親であるCEO 松田悠介氏に、TFJの目指す姿や日本の教育への想い、子どもたちの将来について聞いた。

--松田さんは、幼少時代はどんな子どもでしたか。

松田さん:意外かもしれませんが、私は勉強が嫌いで苦手な子どもでした。スポーツも苦手で、中学校に入学した時は身長が150cm、体重は40キロと小柄でしたので、いわゆるいじめの対象になりやすい子どもでした。精神的にも決して強いわけではなかったので、友人や家族はもちろん、先生に相談することもできず、学校に行くことが辛い時期がありました。

 そんな時、どうやらようすがおかしいと気づいてくれたのが、所属していた陸上部顧問の松野先生という方です。先生は、こちらから相談しなくとも、私の学校でのようすに異変を感じ、「どうしたらよいか一緒に考えよう」と声を掛けてくれました。振り返れば、松野先生との出会いが教師を志したきっかけになったように思えます。

--松野先生と出会ったのち、TFJを立ち上げるまでの経緯を教えてください。

松田さん:中学卒業後は高校の普通科へ進みました。その後、松野先生との出会いで得た「ひとりの教師が生徒に与える力」を胸に、自分も教師を志すため大学で体育の教育養成課程へ進学しました。大学卒業後は、都内の私立中高一貫校で体育教師として勤務しました。

 実際の教育現場での働きは想像以上に多忙で大変なものでしたが、それ以上に大きなやりがいを感じました。教師になりたての頃はまだ22、3歳でしたから、教育にかける想いも強く、生意気だったかもしれませんが、学校に携わる先生方に意見をすることも多々ありました。

 生徒たちが授業に集中せず遊んでいるのに、生徒たちに背を向け黒板に向いている先生の授業を見たときには、先輩教師たちとの交流の場で「あの先生は間違っている」と意見したこともありました。ところが、のちに話を聞くと、その先生も若い頃は私と同じように「熱血」と呼ばれる先生だったそうです。ではなぜ、そんな先生の熱い気持ちが失われてしまったのか。残念でやるせないと感じることもありました。

 子どもたちの学ぶ環境を良くしようと思う気持ちが薄れてしまうことは、学校という環境の中では仕方のないことかもしれません。労働量や学校ごとの文化、人間関係が先生たちの志の芽を摘んでしまうのです。そこで、私は自分ひとりの力ではこの問題を変えることができない現実を目の当たりにし、教師として関わること以外の方法論を模索しようと、学校の場を離れました。

 そして、学校を経営することで教育現場の環境改善を図ろうと、ハーバード教育大学院へ進学しました。ハーバードで出会ったのが、「Teach for America(TFA)」です。私が学校単位で改善を図ろうとしていたことに対し、社会全体を巻き込んで教育を変えようと取り組んでいたTFAに非常に感銘を受け、これを日本でも展開できないか、と考えるようになりました。これが契機となり、経営について学ぶために2年ほどコンサルティングファームでコンサルティングについて勉強をし、TFJを立ち上げたのが2010年のことでした。

《佐藤亜希》

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