教員育成で「教室から、社会を変える」…Teach for Japan 松田悠介氏

 子どもたちの学習環境の向上と、若者たちのリーダーシップの育成を目的に活動している非営利組織「Teach for Japan(TFJ)」。TFJ創設者で、自身も1児の父親であるCEO 松田悠介氏に、TFJの目指す姿や日本の教育へのおもい、子どもたちの将来について聞いた。

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Teach for Japan CEO 松田悠介氏
  • Teach for Japan CEO 松田悠介氏
  • インタビューに応える松田氏
  • インタビューはTeach for Japan 東京オフィスで行われた
  • インタビューに応える松田氏 身振り手振りを交た熱弁
  • インタビューに応える松田氏 TFJ社員もあたたかく見守る
  • 教員向け講習会や、学生や社会人のリクルーティングも活発に行っている
--TFJの活動内容を教えてください。

松田さん:TFJでは、次世代の日本社会を担う若者を、教師として選抜、育成、サポートするフェローシップ・プログラムを運営しています。これは採用した人材を少なくとも2年間にわたって正規の職員(常務講師)として学校現場に派遣し、学校現場の課題解決を推進する目的で行われているものです。

 教育に対して情熱があり、多様な経験をしてきた大学生・院生、社会人を採用し、約3週間の合宿式研修に参加します。プログラムはTFAのノウハウを取り入れたもので、リーダーシップや対人関係構築能力、指導力、自己改善・管理力の育成が可能です。選抜者たちはこの研修ののち、フェロー(教師)として現場に赴任されていきます。

 補足すると、日本ではまだなじみがないかと思われますが、教員免許状を持っていなくとも優れた知識や経験をもった社会人を教員として教育現場へ送り込む「特別免許状」制度というものがあります。TFJでは教員免許状の取得も推奨していますが、将来的には秀でた経験をもっている優秀な人材には、こういった制度を利用して教育現場で活躍してほしいと思っています。

--それぞれの事業に参加された大学生・院生、社会人の反応はいかがですか。

松田さん:研修の中身に対する満足感もあるようですが、なにより教育にかける同じ想いをもった「仲間」ができたことが心強い、というコメントが多いですね。新任の教師は各学校には1名しかいないということも多く、教育現場で、若い先生は孤立することも多いのです。だからこそ、こういった活動のなかで同じ志を持った仲間を得て、「ひとりではない」という自信や安心感を持ってもらいたいですね。

--TFAとの出会いによって生まれたTFJですが、アメリカと日本の教育で大きく異なる点はどういったところですか。

松田さん:大きく分けると、3つあります。ひとつは、そもそも「教育」というものの職務内容が日米で異なることです。アメリカでは、教員は勉強を教えることだけが求められますが、日本の教員は授業のほかにも掃除や給食の配膳、部活や委員会の顧問まで幅広く任されています。つまり、日本の先生には指導力はもちろん、リーダーシップや対人スキルなど幅広い能力が求められているのです。

 2つめは、学校の種類です。アメリカでは、ある分野に特化したマグネットスクールや教育バウチャー制度によって自由に学校を選択できますが、日本では私立・国公立の選択が主といったところです。そのため、日本の学校では先生たちも多岐にわたる知識や対応力が必要とされています。

 3つめは、教員を育成する体制です。アメリカでは、NPOや民間による教員養成講座が活発に行われていますが、日本にもこういった動きがもっとあってもいいのではないかと思っています。

《佐藤亜希》

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