柏の葉キャンパスでまちづくりを推進している「柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)」は、今夏から幼児から高校生までを対象とした新しい取組みである「未来こどもがっこう」を7月19日に開始した。 千葉県柏市柏の葉キャンパスは、つくばエクスプレスの駅を中心に開発が進む新興住宅地にある。近隣に東京大学、千葉大学のキャンパスを構え、市や地元企業などもバックアップする新しい学園都市でもある。 未来こどもがっこうの主催はUDCK。柏市、柏市教育委員会が後援し、三井不動産レジデンシャル、読売広告社が共催。ほかにも市内の小学校(市立十余二小学校、市立柏の葉小学校)、国立がん研究センター東病院、柏の葉総合歯科、まちの健康研究所「あ・し・た」、オークビレッジ柏の葉、KSEL、ベジエフ、えいごカフェ柏の葉、柏の葉リトミック教室「enfant」、エマジャンクラブ、三井不動産、首都圏新都市鉄道などが協力団体・企業となっている。また、千葉大名誉教授 古在豊樹氏、東京大学 国際高等研究所 カブリ数物連携宇宙研究機構 機構長 村山斉氏がフェローとして活動に協力する。 7月19日に行われた開校式では、まずUDCK センター長である出口敦氏が「地域の専門家や企業が協力し、活動を通じてまちづくりを9年間進めてきた。今回、大学や市、多数の企業の協力を得て『未来こどもがっこう』を開くことができた。」と挨拶した。◆市の独自予算で取り組む小学校教育 続いて柏市長の秋山浩保氏が、市の教育に関する取組み・施策を紹介するとともに、「未来こどもがっこう」の役割、特に小学校のカリキュラムではできない部分の機能に期待しているというプレゼンテーションを行った。 柏市では、小学校の学年が上がるにつれて理解度が落ちてくるという問題を抱えているという。低学年の勉強にはついていけているが、中学年以降に理解度が落ちてくる児童が増えているそうだ。しかし、小学校で学ぶ内容は社会生活に必要な教養であるため、その理解度は100%を目指したいというのが市の考えだ。 理解度が落ちる原因は、わからないことがでてくると、授業がつまらなくなり勉強も楽しくなくなる。その結果テストの点数も悪くなり勉強嫌いになるという「魔の循環」にある。これでは子どもたちの学ぶ意欲、習慣が育たない。対策としては、早い段階から「つまづき」を回避すること。そのためには、サポート教員や補修学習担当者などの充実が必要だという。 柏市では、単独予算で小学校中学年にサポート教員を確保するなど行っている。これには相当な予算が必要だが、住民や保護者の理解を得つつ、エアコン設置より優先度を上げるなどできれば可能だとする。 加えて、学びの楽しさを引き出し、学習意欲をうまく探究への循環につなげるには、学校以外でのワークショップのような活動や図書館などでの取組みも重要だという考えも持っている。 具体的には、小学校には理科の実験を充実させるため理科養育支援員や図書館指導員を投入しているが、学校以外では、企業、塾、地域住民を巻き込んだプログラムにも力を入れるという。また、民間プログラムを活用したり、地域社会のイベントなどとも連携し、社会や大人とのかかわり合いを増やし、能動的な各種の体験・実験を行うとしている。「未来こどもがっこう」は、これらの取組みのうちのひとつである。 教育について民間企業と連携する自治体はほかにもあるが、多くは大企業やメーカーの製品やプロジェクトに関連したものになりがちだろう。地元周辺の有名大学、企業、住民を中心とした取組みは困難な点もあるが、その分、市の意気込みを感じた。◆5つのテーマに沿ったワークショップがめじろ押し 市長に続き、UDCK アートコミュニケーションディレクター 小山田裕彦氏が登壇し、「未来こどもがっこう」プロジェクトの概要と2015年度に予定されているプログラムのプレゼンテーションが行われた。 学びのテーマは、探究、先端、健康、創造、共創の5つ。対象は幼児から高校生までとし、初年度は体験型のワークショップ・1回完結のプログラムが基本となる。1カリキュラムは90分から120分程度で、7・8月は夏休み特別カリキュラムとして「宇宙パラシュート(探究)」「LEDが光る王冠を作ろう(先端)」「まきずしぐるぐる(健康)」「リメぐるみを作ろう!(創造)」「心で感じて身体で表現 生演奏リトミック(健康)」「ハンディライトを作ってみよう!(先端)」「伝える?ってなんだ!? COMMUNICATEせよ!(共創)」「野菜がきらい!!(健康)」「いろんな国の人たちと世界を旅しよう!~紙ひこうきでコミュニケーション(共創)」「宇宙アドベンチャーフェスタ(探究)」が予定されている。