1年で東大合格をビリギャルの坪田塾が支援…15-85歳対象の全寮制「N塾」

 12月10日、カドカワと坪田塾による東京大学志望者限定の個別指導塾「N塾」の設立が発表された。「ビリギャル」で知られる坪田信貴氏が塾長となり、東大進学に特化した全寮制の塾で、勉強を全面サポートする。

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握手を交わす、川上氏と坪田氏
  • 握手を交わす、川上氏と坪田氏
  • N塾の応募資格
  • カドカワ代表取締役社長の川上量生氏
  • ビビッド代表取締役塾長の坪田信貴氏
  • N塾の“子”別指導
  • アウトプットの学習方法を重視
  • N塾は全寮制で生徒の生活をサポートする
  • 今後の教育事業のスケジュール
 12月10日、カドカワと坪田塾による東京大学志望者限定の個別指導塾「N塾」の設立が発表された。六本木のnicofarre(ニコファーレ)で行われた発表会には、カドカワの代表取締役社長の川上量生氏と、坪田塾を運営するビビッド代表取締役塾長の坪田信貴氏が登壇し、新たな教育にかける構想を語った。

◆坪田塾が全面サポートする全寮制

 N塾の塾長を務めるのは、「学年ビリのギャルが1年で偏差値40上げて慶応大学に合格した話」(発行:KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)の指導で知られる坪田信貴氏。N塾では、坪田氏をはじめとした坪田塾の講師陣が、東京大学に特化した指導を行っていく。N塾は坪田塾の本部校がある愛知県名古屋市に設立し、全員が寮生活を行う全寮制となっている。

 費用は月額6万円で、これらにはN塾の受講費と食費を含む寮の費用も含まれている。 N塾に入塾する際、提携校のN高等学校へ入学し、同時に高校卒業の資格をとる。ここでの費用は別途かかる。また、特待生制度も設けられる。

 入塾資格は、15歳から85歳。高校卒業資格を保有していない男性で、東京大学進学を志望していることが条件だ。この年齢設定については、「戦争などの事情で大学に行きたいけれど、行けなかった方にも挑戦してほしい」(川上氏)としている。

 N塾では、入塾にあたって選抜試験と面接を行う。ここで特徴的なのが、必ずしも成績上位者のみが合格するのではないということだ。現在の成績のみで判断せず、総合的に東大進学に適性のある生徒を採用する。東大というハードルに対し、坪田氏は「東大に選択と集中することで成果を上げやすい。ターゲットをしっかり絞れば、東大はそんなに難しくないと思っている」と語った。

 当初は全寮制ということで募集は男性のみだが、今後は女性にも門戸を広げたいとしている。また、人数についても、個別で指導を行う最適の人数ということで、現在は30人だが、これらの条件は今後変更もありうるという。

 開校は2016年4月。基本的には、1年間で東大を目指すことが目標だが、高校資格が必要な場合は、資格を取るまで在籍となる予定だ。12月10日より選抜試験の募集が開始されている。

◆才能をもつ子どもたちの可能性を引き出す

 N塾設立にあたって、川上氏は「N高等学校は大反響だった。しかし、子どもは行きたがっていても、両親は本当にこの高校で良いのか心配している。この心配はもっともで、N高が越えなければいけない大きなハードル。そのための選択肢として、東大合格の実績を作ることで、世の中の意識を変える大きなきっかけとなる。N塾の意義に賛同してくれた坪田氏と一緒にやっていくことになった」と語った。

 坪田氏は「頭はいいのに、勉強の仕方を知らない子どもはたくさんいる」として、「N高等学校は理想的な高校だと思う。世間の評価は『引きこもりと言われている子どもたちは隠れた資産だ』という川上氏の言葉に震えた。能力を持っている子どもたちはたくさんいる。才能を引き出せる良い契機で、その象徴としての“東大進学”という目標に全力を尽くしたい」と、塾長を引き受けた経緯を語った。

 質疑応答で「もし、入塾中に東大以外の学校を志望した際はどうなるのか」という問いに対し、川上氏は「もし志望校が変わってもN塾には在籍したまま、希望する学校を目指してほしい」としている。

 N塾では、個別指導ならぬ“子”別指導にこだわり、生徒たちに答えを教えるのではなく、解決方法を提示し、自分で問題を解く力、考える力を身に着けさせる指導を行う。また、自分で学習したことを塾でアウトプットし、先生と共に復習を行う反転授業を重視する。

◆通学生のプログラミング専門スクールも開校

 N高等学校は2016年4月に開校予定のネットを活用した高校で、授業やレポート、質問等はすべてネットで行う。高校の授業以外にも、プログラミングやライトノベル、美容といった専門教育を受けられるほか、地方自治体と協力した各地の職業体験を現地で受けることも可能。大学受験の対策も行うとしている。また、バンタンの実校舎に通う「バンタン提携通学コース」も選択できる。

 12月10日の発表会では、プログラマー養成の専門スクール「バンタン プログラマーズ・ハイレベル・ハイスクール」の開校も発表された。プログラマー人材不足の現状をふまえ、IT企業の最前線で使える技術を指導する。現役プログラマーが指導し、初心者でも約1年間で即戦力となる“短期集中カリキュラム”を提供。

 川上氏は、「プログラミング技術さえあれば、学歴は関係ない。現代の“読み・書き・そろばん”のように、これからはプログラミングが必要なスキルとなる」と話し、現代におけるプログラミング技術の重要さを強調した。クックパッドやLINEなどの企業でインターンシップも設けられており、「基本情報処理技術者」の資格も取得できる。

 第1期は30名のみの募集で、N高校在籍が条件となる。費用は、1年間で150万円。PC購入や教材費は別途必要となる。開校は2016年4月予定。

 バンタン プログラマーズ・ハイレベル・ハイスクールは通学するタイプのスクールとなるが、「N高等学校の発表以降、学校に行きたいという子どもたちのコメントをはじめ、多くの賛同を得られた。『本当にネットだけで勉強が続けられるのか』という疑問に対し、ネットの高校という実際に通学するコースも用意した」と、川上氏は語った。

 ニコニコ生放送で中継された発表会の映像には、「行ってみたい」といった賛同コメントが多く見受けられた。ネット社会の子どもたちに対応した新しい学校、勉強の方法を提示したN塾とN高等学校。日本の教育そのものを変えていくのか、今後の展開にも注目が集まっている。
《相川いずみ》

教育ライター/編集者 相川いずみ

「週刊アスキー」編集部を経て、現在は教育ライターとして、ICT活用、プログラミング、中学受験、育児等をテーマに全国の教育現場で取材・執筆を行う。渋谷区で子ども向けプログラミング教室を主宰するほか、区立中学校でファシリテーターを務める。Google 認定教育者 レベル2(2021年~)。著書に『“toio”であそぶ!まなぶ!ロボットプログラミング』がある。

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