AO入試や推薦入試を受ける予定の子どもの保護者の質問に、教員経験をもち、総合キャリア支援団体「MyCareerCenter」を運営する岡村洋平氏が答える連載「AO入試の基礎」。第18弾では、東京大学で初めて導入された推薦入試を分析する。◆求められているのは“超ハイレベル高校生”!? 東大初の推薦入試 今年度の入試(平成28年度)で初めて実施されている東大・京大のAO入試(正確には、東大は「推薦入試」、京大は「特色入試」)について、どのような推薦要件(出願資格)、提出書類なのかをお伝えします。まず、今回は東京大学を取り上げます。 文系の最難関法学部の推薦要件は次のとおりです(「平成28年度推薦入試学生募集要項」より)。-- 1 学業成績に秀でていること(各校の上位おおむね5%以内) 2 現実の中から本質的な問題を発見し、独創的な形で課題を設定する能力を有すること 3 問題の解決に向けてイニシアティブを発揮できること 4 異なる文化的背景や価値観を有する他者とのコミュニケーション能力に優れていること-- そして、提出書類・資料は上記の推薦要件を満たすものとして次のようなものがあげられています。-- 各学部共通に求める調査書等のほか、志願者が本学部の推薦要件に合致することを具体的に証明する資料。たとえば、 1 在学中に執筆した論文で、志願者の問題発見能力・課題設定能力を証明するもの 2 社会に貢献する活動の内容を具体的に証明する資料(表彰状、新聞記事など) 3 留学経験など、志願者が異なる文化的背景や価値観への理解を有することを示す資料(留学の事実を証明する資料、外国人との交流や支援活動を行ったことを示す第三者の推薦状など) 4 国際通用性のある入学資格試験における優秀な成績を証明する資料(国際バカロレア、SATなど) 5 外国語に関する語学力の証明書(TOEFL、英検、IELTS、TestDaF、DALF、HSKなど)-- 以上からわかるように、求められているものは相当にハイレベルです。学部ごとに異なっているとはいえ、おおよそ共通しているのは、問題解決能力や論理的な思考力を見るための「論文」の実績や、世界レベルのコンテスト(数学オリンピックや科学オリンピックなど)での出場・入賞実績、さらには高校在学中の留学や課外活動の経験などが求めらます。 実のところ、「この要件を満たすのであれば、一般入試でも十分に合格できるのでは」と思わされるような条件です。そのため、高校の進路指導の現場では、そういった生徒に対して初年度に“わざわざ”この入試を受験させようとは考えにくかったのも事実でしょう。 また、上記の条件に合致する生徒が決して多くないことに加えて、推薦入試に出願できるのが各学校で男女各1名という条件も、志願者が多くなかったことの原因です。こうした生徒が複数在籍する高校があっても、出願できるのは1名だけ。これは、以前から東大の合格者は特定の高校に偏っているとの指摘があることを受け、推薦入試ではなるべく全国から広く学生を集めたいという意図があってのことと思われます。 今年度入試では、全体で100名の募集に対して志願者は173名と、事前の予備校などの予想よりも下回る結果となりました。ただ、これには「初年度の様子見」という要素も含まれていると見られ、来年度以降はもう少し増えるのではと予想されています。 1次試験はすでに終わり、12月19日に2次試験が予定されています。この2次試験では、面接やプレゼンテーションなどがほとんどですが、ディスカッションや課題を課す学部もあり、こうしたところではどのような出題がされるのかが注目されるところです。-- 連載「AO入試の基礎」は、AO入試や推薦入試を、学生やその保護者が受験をする際の「前向きな選択肢のひとつ」にするべく掲載されるシリーズ。次回以降も、AO入試について役立つ情報を取り上げる。