帰国生の中学受験、一般入試との違いや帰国タイミングの考え方

 受験は帰国生とその家族にとって、大きな悩みではないだろうか。「私立の中高一貫校に通いたい」「進学したい学校に帰国生枠はあるのだろうか」「そもそもどんな準備をすればいいのか」…。疑問や不安はつきない。

教育・受験 小学生
SAPIX 国際教育センターの赤嶺修一郎本部長
  • SAPIX 国際教育センターの赤嶺修一郎本部長
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◆帰国生は一般より合格しやすいのか

 赤嶺氏によれば、以前は帰国生は有利と言われたこともあったが、試験内容、科目などの違いから、一般入試との単純な比較はできないとする。受け入れ校、募集定員、英語の作文、面接といった条件も考えると、一般入試と同等と見たほうがよいというのが赤嶺氏の意見だ。特に前述したように、帰国から入試までの間に、一般入試も視野に入れた受験生が帰国生枠を利用して受験してくるので、ライバルのレベルは低くないと考える必要もあるという。

 帰国生枠の入試を考える場合、学校によって入試科目のバリエーションが多岐にわたる点も注意が必要だ。関東の一般入試の場合は国語・算数・理科・社会の4教科が基本となるが、帰国生枠入試は、国語・算数の2科目、2科目+英語、英語のみ、日英の作文、4教科フルに設定している学校もある。

 「試験科目や内容について、細かい条件まで含めると30パターンくらいあると思ってください。作文を課す学校も多いですね。テーマも多彩で、海外経験を書かせるものや憲法の問題など答えのないテーマの作文も要求されることがあります。一般入試では面接は減る傾向にあるのですが、帰国生入試では親子を含めた面接がほぼ必須となっています。」

◆どんな受験対策が必要か

 帰国生の受験対策では、なるべく早い段階で学校を決めることが重要だ。入試科目が学校により異なるからだ。必要な科目が決まれば対策は立てやすい。しかし、それより重要なのは「幅広く選ぶ」ことだと赤嶺氏はいう。

 「お子さんの希望で行きたい学校が明確ならば、それに絞った対策がいいでしょう。しかし、この場合幅が広がらないという側面もあります。SAPIXでは、帰国生枠で受験するお子さんにも、基本は4科目コースでの勉強を勧めています。4科目で受験対策をしておけば、一般入試も選択肢に入れることができます。理科・社会などの高度な問題に追いつけるか、という心配もありますが、そういう問題はメディアなどに取り上げられやすいため目立っているだけです。実際には普通の対策で十分に点のとれる問題もあります。」

◆帰国のタイミングは

 では、その対策はいつごろから始めるのがベストなのだろうか。海外赴任中でも、子どもの受験を考えると、母親と子どもだけでも先に帰国させるべきだろうか。だとしたら、それは何年生がいいのだろうか。そんな疑問や相談をよく耳にする。

 しかし、赤嶺氏は、この点もあまり心配する必要はないという。

 「まず、海外で受験勉強をする場合ですが、SAPIXの提携校などの塾で、良い教材を使って同じ志をもつ仲間と競って勉強することが一番ですが、そうした塾がない地域にお住まいの方は、参考書やテキストは市販のもので特に問題ありません。海外でセミナーをすると、勉強方法について質問されますが、いまの参考書はよくできているので、海外だから不利ということはありません。受験するなら何年生までに帰国すればいいか、という質問に対しても、仕事や家庭の都合で決めればよいですと答えています。」

 ただし、4年生の授業内容から、入試の応用問題、発展問題に関係するものになってくるので、受験対策を始める一般的な目安にはなるという。

 SAPIX 国際教育センターでは、帰国生の受験対策や相談のため、世界各地でセミナーを開催している。そのようなセミナーや国際教育センターの窓口を利用することができる。また、具体的な内容については志望校に直接問い合わせてみるのがよいだろう。
《中尾真二》

中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。エレクトロニクス、コンピュータの専門知識を活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアで取材・執筆活動を展開。ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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