【中学受験】グノーブルに聞く「過去問」活用術<理科・社会>教科により異なる対策

 受験生にとっては天王山と呼ばれる夏。半年後には入試本番を迎える中学受験生の保護者にとって、そろそろ気になり始めるのは「過去問」のこと。過去問題対策について、「中学受験グノーブル」に話を聞いた。

教育・受験 小学生
◆社会科 濱田剛士先生

--社会の過去問を解くうえで、社会特有の注意点について教えてください。

濱田先生:社会の過去問については、3年分でよいと思います。3年以上古い問題を解く場合、データが古過ぎるケースがあるからです。

 ただ、社会だけ他教科に比べて年数が少なくなるため、圧倒的に演習量が不足することは否めません。そこで、自分が受ける予定のない学校も含めて、他校の最新の過去問に取り組むことをお勧めします。社会の問題には、年によってトレンドのようなものがあります。最近ですと、「ハザードマップ」に関する問題が多くの学校で取り上げられています。

 例外は、記述の多い学校です。こちらを受験予定の方には、過去問集に載っている問題はすべて解くよう指示しています。

--どのように復習すればよいですか。

濱田先生:社会の問題には、“悪問”も多く含まれています。つまり、満点を取らせないための、誰にも解けないような問題です。真面目な子は、解説を読んで、「この答えも覚えなければ」とノートにまとめようとしたりするのですが、かえって貴重な時間の無駄になってしまいます。本人も親も聞いたことのないようなものについては、無視してしまって構いません。

 ただし、親には馴染みがないけれど、受験生はできなければいけない問題があります。これについては、最新年度で他校の問題をいくつも解いているうちに、繰り返し出くわします。

 また、社会は、リード文を読まなくても解ける問題もあれば、リード文を読んでいると文中に解答のヒントが隠されている問題もあります。リード文を読むには時間がかかりますので、受験校がどちらのタイプの学校か、過去問の傾向から把握し、時間配分などの心構えをしておくとよいでしょう。

--「全然点数が伸びない」その克服法は。

濱田先生:10月、11月になっても、全然点数が伸びないと相談に来られる方は多いですね。苦手なところが漫然としており、何から手をつけてよいかわからない状態に陥っています。このような場合は、解いた過去問と解答を担当の講師に見てもらうとよいでしょう。

 講師がよく分析してみると、同じ間違いを繰り返していたり、ある特定の分野が苦手であることがわかり、適切なアドバイスが受けられると思います。社会が苦手、というのは社会全体が苦手、ということはほとんどなく、特定の苦手分野があるということです。その穴をしっかり埋めるだけでも、点数は伸びていくはずです。

--時事問題にはどのように取り組めばよいですか。

濱田先生:興味がないお子さんに、無理矢理ニュースを見せたり、新聞を読ませても、効果は期待できません。むしろ家庭内不和の要因になってしまうと思います。

 大人が指示するよりも、教室の中で「自分と同じくらいの成績の友達が、自分より社会の出来事をよく知っている」という現実を突きつけられるほうが、子どもにはこたえます。どうしても社会の出来事に関心が向かない時には、そういう教室の雰囲気作りを講師に仕込んでもらう、というのも一手です。大抵どこの塾でも、授業中などで時事問題を扱いますので、あまり早くから気を揉む必要はありません。

--その他、親ができる家庭でのサポートはありますか。

濱田先生:体調・モノ・スケジュールの管理です。

 「モノ」の管理とは、テキストやプリントなどの整理整頓です。カバンの中でグチャグチャになっているプリント類を引っ張り出し、教科ごとに並べ替えたりするのを子ども自身が行うのはこの時期には大きな負担です。6年生の夏ともなると、子どもたちは塾でも家庭でも常に課題に追われている状態ですので、ぜひ手伝ってあげてください。

 そしてもっとも重要なのは「スケジュール」の管理です。夏期講習のある日、ない日、で起床から食事、入浴、就寝までの間に、何時から何分間、何を行うのか、定型を決めてください。定型があって崩れるのは補正の対象ですが、何もないのは危険です。せっかくの夏休みが無駄になってしまいます。定型は「体調」の管理にもつながりますよ。

 定型に沿って学習を積み重ねていけば、この夏は本番に向けての大きな財産になります。また、定型を崩さないために、スマートフォンや携帯からお子さんをできるだけ遠ざけ、勉強以外の人間関係のストレスに巻き込まれないよう配慮することも、家庭での重要なサポートだと思います。

--ありがとうございました。

 4教科通じて強調されたのは、「過去問の結果に一喜一憂しない」「塾の講師を最大限活用する」の2点。あと半年、まだまだ伸びしろあり。過去問を「合否占い」にせず、塾の講師を最大限活用しながら「磐石な本番力」の礎にしたい。
《加藤紀子》

加藤紀子

京都市出まれ。東京大学経済学部卒業。国際電信電話(現KDDI)に入社。その後、渡米。帰国後は中学受験、海外大学進学、経済産業省『未来の教室』など、教育分野を中心に様々なメディアで取材・執筆。初の自著『子育てベスト100』(ダイヤモンド社)は17万部のベストセラーに。現在はリセマムで編集長を務める。

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