“文房具のプロ”とも言える文房具売り場の店員さんを審査員とし、彼らが「自腹でも買いたい!」という文房具を厳正に審査。最高の逸品を決める『文房具屋さん大賞』。5年目となる2017年の文房具屋さん大賞は、コクヨの「大人キャンパス」が受賞しました。これを記念して、『文房具屋さん大賞』の生みの親であり、編集者である木庭 将さんに、文房具屋さん大賞の生い立ちや文房具への思いをお聞きしてきました。◆作り手、使い手の双方を熟知した販売店が審査する!Q: そもそも、文房具屋さん大賞のアイデアを思い立ったきっかけは何でしょう?木庭さん: 編集者という仕事柄、日頃から何か企画になりそうなネタはないかと探していて…、それで面白そうなイベントを探しては参加していました。そんな中、出会ったのが高木芳紀氏が主催する「文具祭り」。文房具メーカーの社員や文房具好きの人たちが集まって、お酒を飲みながら好きな文房具について語り合うというイベントですが、それがすごい盛り上がりだったんです。こんな世界があるんだと驚くとともに、文房具をテーマにした本を出したら面白いかも、と思いつきました。それが2012年の夏ごろのことです。でも、それを具体的な企画に落とし込むまでがまた大変で。当時は文房具ブームで、すでに文房具関係の本の出版が相次いでいました。そんな中で、これまでにない新しい本にするにはどうすればよいか……悩んでいたときに、『ラーメン大賞』という本を見つけて、「大賞って面白いかも」と。Q: それがランキングで文房具を紹介するという今のスタイルの原点なのですね。2013年に『文房具屋さん大賞』を創刊されて今年5年目ということですが、審査員が文房具店の方々というのがユニークだと思いました。木庭さん: 著名人や専門家の方々が審査をする本も内容が深まり楽しいのですが、もっとユーザーに近いものにしたかったんです。ユーザーに近くて文房具に触れる機会が多い人といえば販売店の方々です。自分の目で文房具を選んで仕入れ、お客様におすすめする。メーカーの苦労や工夫も知りつつ、ユーザーの求める物もリアルに知っている。作り手、使い手の両方を熟知した上で文具の善し悪しを判断できるのは彼ら以外にないと思いました。◆1,000点以上の最新文房具を厳正審査Q: 毎回どのくらいの点数の文房具を審査しているのでしょうか?木庭さん: 毎回、審査員の方々から候補となる文房具をあげていただいていましたが、今年からメーカーさんからの自薦も受け付けるようになりました。両者を合わせて1,000点を超える文房具がノミネートされ、上位130点くらいまでに絞ったものを、審査員の方々に採点していただいています。これだけの数の文房具を一つひとつ採点するのは本当に大変だと思います。審査員のみなさんの協力に感謝しています。Q: 審査は何を基準に行うのですか?木庭さん: 文房具って、色が好き、デザインが好き、このメーカーが好きなど、人それぞれ選ぶ基準が違う。個人的な思い入れもありますし、それを一律に審査するのは大変難しいのですが、(1)コスパ(費用対効果)、(2)デザイン、(3)機能性、(4)アイデア、という4つの観点から、それぞれ100点満点で採点し、合計点で競うことにしています。昨年まで、ボールペン、鉛筆、ハサミといったジャンルごとに審査をしていましたが、今年からジャンル分けをなくし、オールジャンルで順位をつけることにしました。そんな中、今回の大賞にコクヨさんの「大人キャンパス」が選ばれました。毎年目新しい商品が登場する中、まさか定番中の定番、キャンパスノートが大賞を受賞するとは私も驚きました。Q: ありがとうございます。ちなみに、木庭さんのお気に入り文房具って何ですか?木庭さん: 筆記用具は芯が太いのが好きで、プレスマン(プラチナ万年筆)の白色を愛用しています。イラストを描くのが趣味なのですが絵を描くときはとくに描きやすいですね。手帳はコクヨさんのジブン手帳を使っていますがなかなか使いこなせなくて。これを使いこなせるようになるのが目下の目標です(笑)。◆メーカーさんの努力と工夫をユーザーにきちんと届けたいQ: 木庭さんにとって、文房具の魅力って何でしょうか?木庭さん: 日本の文房具ってもともと安くて質のよいものが多いのですが、日進月歩の勢いで日々進化している。新素材を使ったり、ギミックがすごかったり、発想がユニークだったり。幅広く楽しめるのが文房具の魅力だと思います。Q: これから『文房具屋さん大賞』ではどんなことをしていきたいですか?木庭さん: 力を入れたいのは販売店さんとのコラボレーションですね。『文房具屋さん大賞』の本と一緒にお店の売り場展開をしたり、文房具ファンが喜んでくれるような仕掛けを考えたい。また、メーカーさんが日々努力して新しい文房具を世に送り出していることを、ちゃんとユーザーの方に届けていきたいと思っています。創刊した当初は3年続けばいいかなと思っていましたが、文房具の世界は深くてネタが尽きない。ご協力いただいているたくさんの方々のためにもずっと続けたいですね。Q: 『文房具屋さん大賞』最新号の見どころは?木庭さん: 最新の製品をとりあげていますから、従来製品と何が変わったのか、どこに工夫があるのか、文房具の最前線を一気見できるのがポイントです。文房具マニアの方にも初心者の方にも楽しんでいただけるコンテンツを満載していますので、ぜひお読みください!<取材を終えて>「文房具にはあまりこだわれてないのですが…」と言いつつ、愛用の文房具を見せてくださった木庭さん。台湾のデザイナー作のペンケースの中には、定番のカッターやハサミ、ペンなどが厳選されキレイに収まっていました。趣味だというイラストは毎日1点をInstagram(#morisakunote)にアップすることを自分に課しているそう。日常のちょっとした一コマを描いた作品の数々は素人とは思えないハイレベル。温かみのあるタッチに癒されました! これからの『文房具屋さん大賞』の展開も楽しみです!!