平成29年度鴎友学園女子中学校、吉野明校長の式辞…全文掲載

 4月8日(土)、鴎友学園女子中学高等学校で入学式が執り行われた。受験を終え、晴れて学園の一員となった中学新入生243名。リセマムは、鴎友学園女子中学高等学校より情報を提供いただき、吉野明校長の式辞を全文掲載する。

教育・受験 中学生
平成29年度鴎友学園女子中学校、吉野明校長の式辞を掲載する(画像はイメージ)
  • 平成29年度鴎友学園女子中学校、吉野明校長の式辞を掲載する(画像はイメージ)
  • 鴎友学園女子中学高等学校
 4月8日(土)、鴎友学園女子中学高等学校で入学式が執り行われた。受験を終え、晴れて学園の一員となった中学新入生243名。生徒たちに向け、どのような激励の言葉が贈られたのか。リセマムは、鴎友学園女子中学高等学校より情報を提供いただき、吉野明校長の式辞を全文掲載する。

---
◆2017年4月8日 中学入学式式辞 鴎友学園女子中学高等学校校長 吉野明

 皆さん、おはようございます。本日、鴎友学園女子中学校に入学された243名の皆さん、ご入学おめでとうございます。教職員一同を代表して、心より皆さんを歓迎します。また、ご列席の保護者の皆様にも心よりお慶びを申し上げます。

 皆さんは、今日から鴎友学園女子中学高等学校の生徒になりました。いま、この晴れの入学式に出席できるのは、これまで温かく育んでくださったご家族、お世話になった先生方をはじめ、支えてくださったすべての方々のおかげです。感謝の言葉を自分の言葉で伝えてください。

 鴎友学園は、1935年に創立された学校で、その年の秋に市川源三先生を校長に迎えました。市川先生は、現在は東京都立白鴎高等学校・附属中学校になっている東京府立第一高等女学校の校長を長くつとめ、女性が社会で活躍するためには女子教育が重要だと考えていた先生です。女子教育と言えば「良妻賢母教育」が当たり前だった時代に、「女性である前にまず一人の人間であれ」と教えていたのです。例えば級長・副級長を選挙で選んで学級自治活動を行わせ、将来女性に選挙権が与えられた時に備えようとするなど、女性の地位が低かった当時としては先進的で自由な教育を行っていました。

 鴎友学園の校訓は、市川先生が作った「慈愛と誠実と創造」です。この校訓についてはこれからも折に触れお話をしていきますが、今日は、その全体の意味について簡単に説明します。

 まず、一つ目は慈愛(じあい)と書いて「あい」と読みます。人と人との関係を大切にし、思いやりの心を持って行動しましょうという意味です。

 この後、それぞれの教室に入ってもらいますが、担任の先生がいらっしゃるまでの間、隣に座っている人と顔を見合わせ、まず笑顔で“こんにちは”と挨拶しましょう。【いま、ちょっと練習をしましょうか。肩の力を抜いて、左右を見ながら目を合わせて“こんにちは”と挨拶をしましょう。はい、ありがとう。にこやかに挨拶できましたね。】挨拶と自己紹介をきっかけにいろいろ話をしていくと、自分とは違う考え方をする人がいることに気づくでしょう。

 中学生になったことをきっかけに、違う考え方を持つ人ともお互いの違いを理解した上で、同じ目標に向かって行動するにはどうすれば良いかを一緒に考えてください。それを出発点に、少しずつクラスを超え、学年を超え、学校を超え、国境を越えて、隣の国の人と、価値観や歴史観が違っても「隣人(となりびと)」となり、明日の平和な世界を共に創っていく人に皆さんにはなってほしいのです。

 二つ目の誠実(せいじつ)は「まこと」と読みます。あなたに与えられた能力を発見し、それを誠実に、精一杯伸ばしましょうという意味です。

 国際連合の軍縮担当の事務次長になることがつい先日決まった中満泉さんは、大学生の時にアメリカに留学し、女性の下院議員のもとでインターンシップを経験しました。この下院議員は、努力してできないことはない、恵まれた環境にある人は努力しなければいけないと言う人で、このインターンシップの経験が、国連職員を目指すきっかけとなったということです。

 いま、新しい学力が話題になっているのを知っていますね。これからの勉強は、正解を覚えて点数を取ることだけが目的ではありません。正解は一つしかないとは思わないでください。立場によって、考え方によって、正解はいくつもある場合があります。間違ってはいけないという思い込みを捨てましょう。教室は、間違っても良いところなのです。将来、自分が社会の中で活躍する姿をイメージしながら、校内で、校外で、失敗を恐れずにさまざまなことにチャレンジし、自分の力を伸ばす努力をしてください。

 そして三つ目は創造、創る方の創造です。社会の中でそれぞれが伸ばしてきた能力を活かし、周囲の人々と共に新しい世界を創っていきましょうという意味です。

 鴎友学園では、創立当時から1対1対応の知識を身につけて大学受験に備える勉強だけではなく、学校生活のすべてのプログラムを通して、変化していく社会の中で必要となる力を身につけることを大切にしてきました。教科の勉強をまず一生懸命学びながら、クラブや委員会活動にも積極的に参加し、どの行事にも思いっきりチャレンジして、自分の新しい面を見つけてください。

 とにかく、やるべきことをしっかりやりましょう。いろいろなことに興味を持ち、周囲の人々と共にまずやってみましょう。そうすると、やれることがどんどん増えていきます。いままでやったことがなかったことも、自分にもできると自信がついていきます。そうしていくうちに、たくさんのあなたがやれることの中から、将来自分がやりたいことがきっと見つかることでしょう。

 皆さんが、「慈愛と誠実と創造」を胸に6年間の鴎友生活を送り、広い世界にはばたくことを期待しています。

 保護者の皆様、厳しい入学試験を乗り越え、新しい門出をこの鴎友学園で迎えられましたことを、重ねてお慶び申し上げます。誠におめでとうございます。

 中学高校の6年間は、心身の成長が著しく、時にはアンバランスになることもある難しい時期です。自立に向け、親離れ・子離れの過程で時には悩んだり、迷ったりすることもあるでしょう。親の期待や想いとは全然違う方向に歩むお子様も中にはいらっしゃるかもしれませんが、親子であってもこれから親から自立していくお子様を一個の人格として見ることができるようにしていただきたいのです。

 鴎友学園では、ご家庭と学校が互いに連絡を取り合い、生徒の成長を願うという想いを共有したいと考えております。お子様が中学に入学されると、「もう手を離れた」とお考えの方もあるかもしれません。一方、親の想いとは違う方向に踏み出そうとするお子様に、はらはらされることもあるかもしれません。自立のためには、少しずつ手を離してください。でも、目は離さない、半歩後ろから見守り続けるという微妙な距離感が必要です。お子様の成長を、保護者の皆様と私たちが手を携えて見守ることができますよう、鴎友学園の教育につきましてご理解をいただき、ご協力くださいますようお願い申し上げます。

 最後になりましたが、ご来賓の皆様、本日はご多用中にもかかわらず、ご参列を賜り、心より御礼申し上げます。今年も期待に胸膨らませて校門をくぐった新入生の一人一人を、応援してくださいますようお願い申し上げます。

 以上をもちまして2017年度鴎友学園女子中学校入学式の式辞といたします。
《編集部》

【注目の記事】

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top