カドケシ輩出のコクヨデザインアワード、2017年グランプリは「食べようぐ」

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「コクヨデザインアワード2017」表彰式
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  • 「コクヨデザインアワード2017」表彰式 会場のようす/オーディエンス賞を決める投票箱
  • 「コクヨデザインアワード2017」グランプリを受賞した「食べようぐ」とトロフィー
  • 「コクヨデザインアワード2017」表彰式/「コクヨのNEW STORYに皆さんの力を貸していただきたい」と語る黒田社長
  • 「コクヨデザインアワード2017」表彰式/ファイナリストの10組
  • 「コクヨデザインアワード2017」表彰式/グランプリは「食べようぐ」にょっき(柿木大輔、三谷悠、八幡佑希)に!プレゼンターは黒田社長
  • 「コクヨデザインアワード2017」表彰式/グランプリを受賞した「食べようぐ」のにょっき(柿木大輔、三谷悠、八幡佑希)
 2018年1月18日、「コクヨデザインアワード2017」の表彰式&審査員トークショーがスパイラルホールで開催されました。世界50カ国以上から集まった応募作品1,326点から10点が一次審査を通過。この日行われた最終審査(二次審査)によってグランプリ1点と優秀賞3点が決定しました。

 会場に入ると、ホール入口は来場者の熱気に満ちていました。今年から公式の賞とは別に「オーディエンス賞」が設けられ、来場者はファイナリストに選ばれた10点の中から自分が好きな作品を選んで投票できるのです。ホール入口に並ぶプレゼンテーションシートとプロトタイプ(作品模型)を見比べ、どの作品に一票を投じようかと悩む来場者たち。審査員が選ぶ作品とともにオーディエンス賞の行方にも注目しながら、表彰式がスタートしました。

来場者が決める「オーディエンス賞」の投票箱
◆グランプリはにょっきの「食べようぐ」

 15回目を迎えるコクヨデザインアワードの今年のテーマは「NEW STORY」。最終審査を終えた黒田英邦社長は冒頭、「新しい市場をつくったり、新しいニーズを掘り起こしたり、そういった力のある作品を求めてこのテーマを設定した。私たちコクヨもどんどん変わっていきたいし、NEW STORYをつくっていかなければならない。ぜひコクヨのNEW STORYに皆さんの力を貸していただきたい」と挨拶しました。

 受賞作品はコクヨが商品化に向けて取り組むことを約束していて、過去には「カドケシ」や「Campusノートパラクルノ」、「和ごむ」などのヒット商品を生み出しているだけに、デザインする側も審査する側も本気のアワードです。

 今年の審査員は、植原亮輔氏(KIGI代表/アートディレクター・クリエイティブディレクター)、川村真司氏(PARTY NY代表/エグゼクティブクリエイティブディレクター)、佐藤オオキ氏(nendo代表/デザイナー)、鈴木康広氏(アーティスト)、渡邉良重氏(KIGI/アートディレクター・デザイナー)。まさしく日本を代表するクリエーターの皆さんです。

 グランプリに選ばれたのは、おやつを“仕事を捗らせる用具”と位置付けた「食べようぐ」(にょっき/柿木大輔・三谷悠・八幡佑希)でした。そして優秀賞は、帆船の帆がゆっくりと動く置時計「時の舟」(T4-202/Chih Chiang, LIU / Yung Hsun, CHEN)、ゴムで書いて指でこすって消す「かきゴム」(ぷらばんばん/中島奈穂子・木平崇之)、磁力を持って互いにくっつく文房具「引き合う文具」(古舘壮真)の3点でした。

グランプリは「食べようぐ」にょっき(柿木大輔、三谷悠、八幡佑希)に!プレゼンターは黒田社長
◆どれも印象的だった受賞者のコメント

グランプリ「食べようぐ」(にょっき/柿木大輔・三谷悠・八幡佑希)
「家具でも文具でもない食べ物の提案だったので心配な面もあったが、自分たちのアイデアを信じて最後まで突き進んだ。商品化されて世の中に出ていくことができたらうれしい」

グランプリを受賞した「食べようぐ」とトロフィー
優秀賞「時の舟」(T4-202/Chih Chiang, LIU / Yung Hsun, CHEN)
「私たちは大学の同級生で、ユニット名は教室の番号。在学中に『この名前で将来デザインコンペに参加しよう』と約束した。それが実現してうれしい。初心を忘れず、デザインの仕事をこれからも続けていきたい」

優秀賞「かきゴム」(ぷらばんばん/中島奈穂子・木平崇之)
「私たちは大学の同級生。仕事とは別に自分たちが本当にいいなと思ったものをつくり、それを評価してもらって自信になった。これからもデザインの仕事をがんばっていきたい」

優秀賞「引き合う文具」(古舘壮真)
「モノをデザインするということに対する自分なりの考えをこの作品で前面に押し出し、最終審査のプレゼンに臨んだ。自分の考え方が審査員の方々に伝わったことが一番うれしい」

 そして、来場者の投票だけで決めるオーディエンス賞は、「陽だまりノート」(松井峻輝・清水明彦)が選ばれました。主催側はグランプリや優秀賞とのダブル受賞も覚悟していたそうですが、謀ったかのような結果に(笑)。受賞式の後の審査員トークショーでは「優秀賞はギリギリの議論だったので、オーディエンス賞が陽だまりノートに決まって盛り上がった」と明かしていました。

黒田社長「一次審査の時点で『これがグランプリになったらまずいな』と(笑)」
◆食べ物を出してくるのは反則?

 受賞式後に行われた、木田隆子氏(雑誌「エル・デコ」ブランドディレクター)を司会・進行役に迎えての審査員トークショーは、グランプリ作品「食べようぐ」の講評から始まりました。

木田:オフィスと家の境界がなくなってきている時代にあって、面白い提案だなと思いました。

植原:新しいジャンルだった。テーマのNEW STORYにぴったりの作品です。

川村:アイデアの“ジャンプ”があった作品。フレックスワークやリモートワークをはじめ働き方が変わってきている中で、オフィスのツールも変わってきている。文房具なのか食べ物なのか分からないものが出てくる“隙”が生まれてきているのかなと感じます。

佐藤:今まで文房具と思われていたものがデジタル化されていき消えていくものもある中で、それらにとって代わるものがこれから出てくると考えると、意外にこれは王道なのかも、とむしろ刺激をもらいました。

黒田:一次審査の時点で「これがグランプリになったらまずいな」と(笑)。ある意味“どストライク”でした。ドメインが変わることは大きなチャレンジですが、人を動かす・活性化するということ自体は、コクヨが今まさに取り組んでいることですから。

川村真司氏「『食べようぐ』はアイデアの“ジャンプ”があった作品」
◆グランプリ以上に議論が白熱した優秀賞

 グランプリと優秀賞の差、そして優秀賞の選考プロセスについてもトークが展開しました。

川村:グランプリって、やっぱりバランスがすごくいい。テーマに沿っているし、商品として欲しいし、デザイン性もあって未来を感じさせる。他のファイナリストの作品は少し足りないというか、伝わってくるスピードがグランプリほどではないところに、それぞれの審査員が重点を置く部分も違って。

鈴木:実際、6人が集まって議論して決まっていったっていう、不思議な力としか言えないようなこともやっぱりあるわけで。そこがこのアワードの面白いところですよね。



木田:「NEW STORY」はみんなを刺激する言葉なんだけど、それをまず定義して、そこから降ろしてくるような決め方ではないところが、私も面白いなあって。

佐藤:テーマ・商品・アイデア、この3つの軸を常に全員で確認しながら審査している感覚でしたね。一次審査はテーマに沿っているかどうかにウェイトがあった印象ですが、最終審査は、商品としてはどうなんだろう、アイデアとしてグランプリに相応しいだろうか、といった議論が多かったかな。

佐藤オオキ氏「テーマ・商品・アイデア、この3つの軸を常に全員で確認しながら審査している感覚でした」
◆プロトタイプが威力を発揮

 最終審査のプレゼンテーションでは、応募者がプロトタイプをつくってきたそうです。グランプリの「食べようぐ」は、実際に試食もしておいしかったと審査員からも好評でした。

鈴木:最終審査でプロトタイプを実際に触って、印象が変わった作品もありました。

川村:素晴らしいですよね、皆さんちゃんとプロトタイプをつくってきた。

植原:モノは手に取ると「欲しい」って感覚が生まれるところがいい。

川村:「引き合う文具」は、意味もなく手でカチャカチャしたくなりました。それって言葉では説明できなくて、モノがあって初めて気付けること。そういうのも含めて審査できるアワードは珍しいし、いいことだと思う。

黒田:磁力でまとまって持ち運びに便利、ということだけではなく、組み合わせて使うシーンも見せてもらえました。

鈴木康広氏「最終審査でプロトタイプを実際に触って、印象が変わった作品もありました」
◆造形にもチャレンジして欲しい

 「時の舟」の講評から、造形に関する話題になりました。

渡邉:帆船という具象的なものを感じさせてくれて、このアワードでは新鮮。過去にも情緒をくすぐるような作品はありましたが、もっとシンプルに表していました。単純にかたちをつくる作品がないんですよね。

植原:アイデアが分かりやすいものがコンペで通りやすくて、そうすると形を排除していくことになっているのかな。

佐藤:形が出れば出るほど審査員の好き嫌いも出るでしょうけれど、もっと勇気を持って造形で勝負する作品が出てくると、意外といい線いくかもしれませんね。来年のアワードのいいサンプルになるかも。

黒田:コクヨとしてはそっちの方向、使う相手のことを考えて形にしていくことにもどんどんチャレンジしていきたい。今年のテーマが「NEW STORY」で、2016年が「HOW TO LIVE」、2015年が「美しい暮らし」。もっと情緒をくすぐりたい、感性をくすぐりたい、と思って意図的に振ってきたところもあるので、「時の舟」が優秀賞を獲ったのはよかったと思います。

植原亮輔氏「モノは手に取ると『欲しい』って感覚が生まれるところがいい」<br />植原亮輔氏「モノは手に取ると『欲しい』って感覚が生まれるところがいい」」
◆デザイナーの熱意がコクヨを動かす

 コクヨが受賞作品の商品化にこだわる理由も見えてきました。

川村:なかなかここまできちんとしたアワードは海外にもないんじゃないかな。賞金がもらえるし、何より商品化を考えてもらえる。ヒット商品も生み出しているし、このアワードが一つのプラットフォームになっているなと感じます。

渡邉:商品化の仕方がすごく丁寧。「これは無理なんじゃないか」って思う作品も、研究して工場を探して、しっかり商品化しています。

黒田:担当社員はすごく大変。それでも踏ん張れるのは、応募者の方たちの熱意があるから。今日の最終審査でも、「かきゴム」のゴムが買ってきたものではなくて自分たちで素材を混ぜ合わせてつくったと聞いて、ぐっときました。そういうプロセスに、コクヨも参加したいんです。

渡邉良重氏「『これは無理なんじゃないか』って思う作品も、研究して工場を探して、しっかり商品化しています」
◆来年のコクヨデザインアワードは?

 1時間半のトークショーの中では、受賞作品に対して苦言が飛び出すシーンもあり、ファイナリストと審査員の直接のやりとりもありました。ファイナリストの特権ですね。そして、その一部始終を目撃できた来場者も、大いに刺激を受けたのでは。

 今年の受賞作品の商品化と共に、来年のテーマも気になるところです。「審査の過程や今日の話の中にキーワードがいっぱい出てきました。ただのモノとファンクションだけじゃない、いろいろな解釈ができるテーマは、審査としても『お、そう来たか』と思えて楽しい」と川村氏は語っていました。

 最近は分かりやすく単純なものが多くて、少しは私たちに判断を委ねて欲しいなと思うことも多々あります。“あなたが使い方を拡張させていって”と言ってくれるようなデザインの商品にも期待です。

「コクヨのNEW STORYに皆さんの力を」コクヨデザインアワード2017

《柏木由美子》

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