公立の高校における妊娠を理由とした退学に係る実態調査は、公立の高校(全日制と定時制)と都道府県教育委員会を対象に実施した。
平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に、妊娠の事実を学校が把握した生徒数は、全日制1,006人と定時制1,092人の計2,098人にのぼる。これらの生徒に対し、学校が何らかの懲戒を行った生徒数は全日制で72人(7.2%)、定時制で23人(2.1%)。内容は、「説論」「学校内謹慎・別室指導」「自宅謹慎」など事実行為としての懲戒で、法的効果を伴う懲戒は「停学」が1人だった。
妊娠の事実を学校が把握した生徒の在籍状況について、全日制では「本人または保護者の意思に基づいて自主退学」が36.9%ともっとも多く、「産前産後(おおむね出産の前後6~8週間程度)を除くすべての期間通学」31.7%、「転学」15.2%などが続いた。定時制では「産前産後(おおむね出産の前後6~8週間程度)を除くすべての期間通学」が42.0%ともっとも多く、「本人または保護者の意思に基づいて自主退学」24.8%、「妊娠・出産以外を理由とする転学や退学など」14.1%、「産前産後以外の妊娠期・育児期における休学」13.4%などが続いた。
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画像:妊娠・出産を理由として、学校が退学を勧めた結果「自主退学」した生徒について
学校から退学を勧められて自主退学した生徒は、全日制で21人と定時制で11人の計32人だった。このうち、18人は「生徒または保護者の意思を確認したところ、引き続き通学や休学、転学を希望していたが学校は退学を勧めた」、14人は「生徒または保護者の意思を確認したところ、今後についての明確な希望はなく、学校が退学を勧めた」という状況だった。
一方、学校が退学を勧めた理由は、「母体の状況や育児を行ううえでの家庭の状況から、学業を継続することが難しいと判断したため」18人、「学校における支援体制が十分ではなく、本人の安全が確保できないと判断したため」8人、「本人の学業継続が、他の生徒に対する影響が大きいと判断したため」5人、「その他」1人。
文部科学省は、「生徒が妊娠した場合には、関係者間で十分に話し合い、母体の保護を最優先としつつ、教育上必要な配慮を行うべきものであること。その際、退学、停学および訓告の処分は校長の判断によって行うものであるが、生徒に学業継続の意思がある場合は、教育的な指導を行いつつ、容易に退学処分や事実上の退学勧告などの対処は行わないという対応も十分考えられる」としている。