運動会の開催はいつ?組体操問題の今とこれから

 運動会の開催時期が異なる理由や開催のねらいのほか、近年話題にのぼることが多い「組体操」について今一度振り返る。大阪市内の小学校で主席(主幹教諭)を務める川村幸久氏に話を聞いた。

教育・受験 先生
運動会の開催はいつ?組体操問題の今とこれから(画像はイメージ)
  • 運動会の開催はいつ?組体操問題の今とこれから(画像はイメージ)
  • 川村幸久氏が実際にクラスにあてた組体操通信 画像提供:川村幸久
  • 運動会 組体操のようす 画像提供:川村幸久
  • 運動会 従来の組体操から「フラッグ」を取り入れた新しい演技へ 画像提供:川村幸久
  • 著者 川村 幸久(かわむら ゆきひさ)
 あたたかい日差しが心地良い季節。地域によっては、春に運動会が行われる小学校もあるだろう。運動会の開催時期が異なる理由や開催のねらいのほか、近年話題にのぼることが多い「組体操」の今について、大阪市内の小学校で首席(主幹教諭)を務める川村幸久氏に話を聞いた。

運動会、開催時期はいつ?



 運動会は、もともと「体育の日」あたりに実施されていたというこれまでの経緯から、多くの学校で秋に実施されていました。過去をたどると、田植えや稲刈りの繁忙期を外して、秋に実施していたという経緯があったのかもしれません。

 最近は、春に実施する学校も少しずつ増えてきたように思います。私の勤務する学校も、使用する場所の問題から春に実施するようになりました。理由は各学校でさまざまだと思いますが、全国的に見ると、秋に実施する学校の数と春に実施する学校の数は、今では半分半分になってきたのではないかと思います。

春と秋、開催時期が分かれる理由



 春か秋、どちらの季節に開催するかは、気候や地域性が大きく影響しているようです。

実施時期、議論の的4つ
(1)熱中症や紫外線などの問題
(2)梅雨や台風の気候の問題
(3)行事との兼ね合い
(4)目的の違い(春と秋では、学年集団の成長させたい視点が変わってくる)


 春に実施する学校の場合は、4月に学年が決まって、慌ただしく新学期を過ごしている間に運動会練習モードになります。運動会までの期間が短いので、団体演技の構成や曲など詳細を考えることにはあまり時間をかけることはできません。

 私は、子どもの実態をよく見たうえで、じっくりと2学期までに計画を立てていたので、個人的に私は秋開催の方が好きです。しかし、年間行事予定のバランスから見ると、2学期は行事が立て込んでいて、一番忙しいという実感があるので、春に実施することのよさもわかるような気がします。

組体操問題の今 団体競技の在り方とは



 徒競走やリレー、障害物競走や玉入れ―。運動会ではさまざまな競技を行います。競技のなかでも、近年話題にのぼるのは「組体操」ではないでしょうか。

 少し前から、この「組体操を中止するか、続けていくのか」「組体操の技や構成は、どのようにするのか」ということは、全国各地の学校現場で喫緊の課題となり、私たちの学校でも話題になりました。

危険視、禁止・廃止の声



 その議論となったきっかけはいくつかあるとは思いますが、「大阪府の中学校で、組体操のピラミッドが崩れて生徒が重軽傷を負った」動画がマスコミやインターネット上で取り上げられたことが大きいのではないかと思います。

 以降、組体操の安全性に疑問を持つ声や批判が高まり、一部では「子どもの安全を第一に考えて、安全にできないと判断した場合は中止してほしい」「組体操禁止」という専門家の意見も出てくるようになりました。今では、3段タワー禁止やピラミッド4段禁止を始め、組体操全面廃止に動き出している自治体もあります。

賛否両論、大前提は安全と成長



 一方で、廃止の動きに反発する声も根強くあります。組体操が長い間学校現場で続いてきたのには、多くの教師も保護者も、組体操をとおして子どもたちの心と体が成長した姿があることを実感しているからだと思います。

 しかし、私は児童の安全を一番に考えたうえで、6年生の団体演技は組体操にこだわるのではなく、6年生にしかできない団体演技として、組体操に代わる演技にどのようなものがあるのかを考えていく必要があると思います。

 これは、私が以前6年生担任をしていたときの子ども・保護者あての組体操通信です。

 ここでは、組体操を通じて「学年が団結し、想いをひとつにすること」をテーマに、

これまでより、もっと成長した自分を見つけること
これまでより、もっと仲間を大切にすること
これまでより、もっと感謝の気持ちを持つことができること
これまでより、もっと毎日の学校生活を大切にできること


 ということを目標として取り組みました。

 下記は当時担任した子どもが、運動会直前に書いた作文です。

 私は、小学1年生から運動会で組体操を頑張っている先輩を見てきました。その中に、私の兄もいました。兄が組体操の練習をしている様子を廊下から見ると、いつもの家の様子とは違う兄の一生懸命に取り組む姿があり、感動しました。そして、その時に私が感動したように、当日の兄の姿を見た母や父も感動したと思います。その時に、私は6年生になったら組体操をしたいと心から思いました。
 当時2年生だった私も、とうとう6年生になり、あっという間に組体操の練習が始まりました。最初は、簡単だろうと思っていましたが、2人組、3人組、大人数の技をやっていくうちに、余裕がなくなり不安になりました。けど、その不安を自信に変えられるように残りわずかな練習時間を大切にして、頑張りたいです。父や母、兄にも私たち6年生の組体操の全部を見て欲しいです。そして、今までのわたしと違う成長した姿を目に焼き付けて欲しいです。


 私は、この組体操をこれまでお世話になったおうちの人たちや先生方に見てもらって、感動してもらいたいです。もちろん演技の一つひとつの技の完成度の高さも見てもらいたいですが、一番は、私たちのこの組体操にかける「想い」を感じて欲しいです。
 私は、この組体操の練習で、自分を少し変えることができたように思います。ここまで成長したということを、家族やいろいろな先生方にみてもらいたいです。大事な人たちに、私たちの真剣な演技を目に焼き付けて欲しいです。当日は、今まで以上に感謝の気持ちをこめて演技をします。

 子どもたちの感想からもわかるように、当日に向けて練習を重ねる中で(これまでの小学校6年間の生活を振り返り)自分の成長を感じ、お世話になった家族や先生方に感謝の気持ちを伝えたいという想いを膨らませながら、組体操に真剣に取り組んでいました。

 議論すべきことは、子どもたちに組体操に取り組むプロセスの中で「何を身に付けさせたいのか」「どのように成長してほしいのか」という目的を指導者が明確に持ち子どもの安全を最優先させた"新しい6年生の団体演技"の在り方を模索していく必要があると考えます。

新しい演技という選択肢



 最後に、私の勤務校では、最近、組体操の要素を残しつつ、フラッグを使った新しい6年生の団体演技をするように変わってきました。

運動会 組体操のようす 画像提供:川村幸久
画像:組体操のようす

運動会 従来の組体操から「フラッグ」を取り入れた新しい演技へ 画像提供:川村幸久
画像:従来の組体操から変化 「フラッグ」を取り入れた新しい演技

 組体操にこだわる必要はなく、6年生の子ども自身が「心と体の成長を感じることができる」「感謝の気持ちが表現できる」「学年全員で、ひとつのものをつくることのよさに気づくことができる」ものであれば、どのような内容の団体演技でもまったく問題ないと私は考えます。

 高さや派手さなど、見た目にこだわるのではなく、子どもの心の成長を期待して、どの学校も運動会の6年生の団体演技について考えてほしいと願います。

著者による記事
体育の授業、苦手な子どもに配慮を…先生&保護者へアドバイス


川村 幸久(かわむら ゆきひさ)
平成15年 大阪教育大学卒業。大阪市学校教育研究会体育部体つくり運動領域部所属、全国小学校体育研究 連盟 事務局次長。大阪市内の2学校での教諭経験を経たのち、平成20年4月1日に大阪市堀江小学校へ着任。平成28年度からは、同小学校にて主幹教諭にあたる「首席」を務めている。小学館「三教育技術」や明治図書「楽しい体育の授業」での執筆経験を持つ。平成30年度からは一年間、小学館「三教育技術」学級経営のコーナーの監修・執筆を務める。
《川村幸久》

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