ここでは、家庭ですぐにできる「色によっての温まりかたのちがいを調べる」方法をご紹介。自由研究テーマ選定の参考にしていただきたい。
自由研究:中学生向け 小学生向け
色によっての温まりかたのちがいを調べる~温まりやすい、冷めやすいのは何色?~
第1分野【物理】観察
制作時間:12時間 難易度:★★
ジリジリと暑い夏。黒い服を着ているともっと暑く、白い服を着ているとすずしく感じます。これは、黒い服の熱の吸収率は高く、白い服は低いため、そう感じたのです。ここでは、色と熱吸収の関係を調べてみましょう。
用意するもの
ペットボトル(500mL、5本) 絵の具(赤、黄、青、黒、白の各1本) 温度計*(5本) ダンボール(または発泡スチロールのトレイ) かき混ぜ棒
*ホームセンターや通信販売で手に入ります。
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実験1 やってみよう 5色の色水を太陽熱で温める
★手順 全4工程
白色と黒色以外の色の熱吸収はどうでしょうか。
黒と白、それに青、黄、赤を加えた5色の色水で、それぞれの熱吸収のちがいを探ってみましょう。
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5本のペットボトルに、同量の水(100mLほど)を入れる。それぞれのペットボトルに赤、黄、青、黒、白色の絵の具をひとしぼり分くらい入れて、色水を作る。
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5本のペットボトルを、ダンボールか発泡スチロールのトレイの上に並べ、日なたに置く。
※地面やベランダの床から伝わる熱の影響をさけるため、ダンボールなどを下にしきます。
※ペットボトルの数だけ温度計があれば、実験が早くできます。
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まず、気温とそれぞれの色水の水温を15分ごとに計る。そのさい、「雲で日がかげる」「風が出てきた」などの気象条件もメモしておく。
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3のメモをもとに、水温の変化を折れ線グラフにまとめる。それぞれの色水の水温の変化がひと目でわかる。
うまくいかないときには
よく晴れた日に、少し離してペットボトルを並べる
●くもりの日だと、色水ごとの水温は、あまり変わりません。晴れた日に行いましょう。
●ペットボトルを並べたときに、隣のボトルの影になっていると、水温が正しく計れません。少し離して並べるとよいでしょう。
●色水の色が薄いと、温度にちがいがでません。はっきりと色がわかる濃さになるよう絵の具と水の量を調整しましょう。
なぜそうなるの? ~黒色は熱を吸収しやすい性質がある~
黒い車のほうが、車内気温が上がりやすい
色は光の入らないところでは目に見えません。光があるときだけ色が見えるのです。たとえば、リンゴが赤く見えるのは、赤い波長の光だけを反射して、ほかの波長の光を吸収しているからです。
では、黒色と白色はどうでしょう。
黒は、可視光(目で見える光)をほとんど吸収するため黒に見え、白は可視光を反射してしまうので白く見えます。
黒は可視光や赤外線の波長の光を吸収してしまうため、吸収された光が集まりやすくなります。だから、黒色の水の水温が、もっとも上昇するのです。
逆に白は、可視光や赤外線を反射してしまうので、エネルギーが吸収されず、水温があまり上がらないのです。
自動車会社の調べでは、同じ駐車場に窓を閉しめきって駐車しておくと、白と黒色の車では、黒色のほうが白色より車内の温度が10度も高くなるという結果が出ています。
●光の吸収と反射
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実験2 やってみよう お茶を熱いまま長く飲めるのは、どっちのカップ?
★手順 全3工程
実験1で、熱を吸収しやすい色が黒色ということがわかりました。では、温度が冷めやすいのは白と黒のどちらでしょう。
紙コップでお茶を飲もうと思ったら、白と黒、どちらにお茶を注げば、より長く温かいお茶を飲めるのでしょう。
用意するもの
紙コップ(2個)、トレイ、油性ペン、温度計(2本)、厚紙、ポット、熱湯
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白い紙コップを2個用意し、片方のコップの表面を油性ペンで黒くぬる。次に厚紙でフタを作り、真ん中に温度計がさしこめるように穴を開ける。
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白と黒の両方の紙コップに、80度以上の熱湯を注ぐ。フタをして、温度計をさしこむ。
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屋内で、トレイの上に2つの紙コップを置き、湯の温度の変化を5分おきに計る。
そうなんだ! ~炊飯器と布団干し用のカバー~
黒色の熱吸収を利用した生活用品は、意外にも身近に使われています。その代表的なものが炊飯器です。
炊飯器は、中の釜を黒くぬって、より早く高温にすることで、ふっくらしたお米がたけます。
また、布団干し用の黒いカバーを、布団の上にかけて干すと、太陽の熱を黒色が吸収します。すると、中の布団の温度が60度以上になり、ダニなどを殺す効果があるといわれています。
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レポートのまとめかた
実験1で、温度の上昇と、かかった時間を色別にグラフにまとめましょう。
実験1で、色を混ぜた水と絵の具を入れない水の温度も比較しましょう。
実験2では、白と黒以外の色も確かめてみましょう。
発行:永岡書店
<著者プロフィール:野田 新三(のだ しんぞう)>
1970年大阪生まれ。不思議に思ったことは「自分で確かめたい」という気持ちから、理科に興味を持つ。95年千葉大学大学院教育学研究科を修了後、理科の教諭として教壇に立つ。