「進んで学ぶ子」が育つ秘訣、絵本と図鑑の親子活用術

 「自ら本を読む子にしたい」「読書好きに育ってほしい」保護者の声に応えて『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』の著者・小川大介氏を訪問。なぜ絵本や図鑑が教育的によいのか、具体的な親子のコミュニケーションについて聞いた。

生活・健康 未就学児
PR
『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』の著者で、中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員の小川大介氏
  • 『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』の著者で、中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員の小川大介氏
  • 『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』の著者で、中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員の小川大介氏
  • インタビューに応じる小川大介氏
  • 「ほんのハッピーセット」の第2弾の絵本「ねんねこ」を手に取る小川大介氏
  • 「ほんのハッピーセット」の図鑑を手に取る小川大介氏
  • 「ほんのハッピーセット」の絵本を手に取る小川大介氏
  • ミニ図鑑の巻末にあるオリジナルクイズ
  • 「ほんのハッピーセット」第2弾の絵本「ねんねこ」とミニ図鑑「動物 イヌのなかま」
  文部科学省の調査によると、現代日本の子どもの読書習慣は危機に瀕している。小学生の18人に1人、中学生の7人に1人、高校生の2人に1人が1か月に1冊も読書をしていないという「不読」の状況に陥っている反面、2018年6月27日に発表した「規則的な生活を送り、本や新聞などに親しむ子どもは、家庭の社会経済的背景に恵まれていなくても、学力が高い傾向にある」という同省による発表は、保護者の興味を引くものであったに違いない。

 子どもの不読率が問題視される中、日本マクドナルドは2018年7月20日、同社おなじみの「ハッピーセット」で絵本や図鑑などの本が選べるようになる「ほんのハッピーセット」の提供をスタートした。本と一緒に、親子がよりよい時間を過ごせたら…との思いから誕生したこの企画。読書が大切だとは理解しつつも、そのきっかけづくりに悩む保護者をサポートしたいという考えが伝わる施策だ。

 そこで今回は「頭がいい子の家のリビングには必ず『辞書』『地図』『図鑑』がある」(すばる舎)の著者で、中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員である小川大介氏を訪問し、子どもと絵本・図鑑の関係や、本を通じた親子のコミュニケーション方法について聞いた。本と読書体験は、子どもの成長にどのような影響をもたらすのだろうか。

「ほんのハッピーセット」第2弾の絵本「ねんねこ」とミニ図鑑「動物 イヌのなかま」
「ほんのハッピーセット」第2弾の絵本「ねんねこ」とミニ図鑑「動物 イヌのなかま」

学びと遊びに境界はない



--小川先生は、伸びる子どもを育てるためには、知識の詰め込み型ではなく、「学びと遊びを分けない」ことが大切だと提唱されています。まず、その理由を教えてください。

 おもに中学受験をお手伝いする個別指導をとおして、たくさんのお子さんをみてきましたが、かしこく、伸びているお子さんに共通しているのは「好奇心のままに勉強している」ということです。この点はすごく大事で、勝手に伸びる子は「おもしろいから」という理由で勉強しているのです。

 一方で、親が徹底的に管理して、子どもの欲求に関係なくタスクをこなさせるという方法もあります。ただこの方法では、子どもが自律を習慣化できません。そのため、学習内容のレベルも上がり、部活などスケジュール管理も必要になる中学に入ってからは、能力が伸びなくなります。そこで、かしこく、伸びる子を育てるためには「学びと遊びを分けない」ことで、好奇心を養うことがキーワードになると考えています。

--子どもが好きでやっていることは止めないということですね。

 興味を持って熱中して遊んでいるときには、「たっぷり遊びなさい」と言って見守ってあげてください。勝手に遊んでいるからといって放置するのではなく、見守りながら「何が楽しかったの?」と聞いてあげたり、さらに「こういう楽しいものもあるよ」と新しく関連するものを提示してあげたりして、視野を広げてあげることが大切です。

自律を促すコミュニケーションのコツ



--進んで勉強する子に育てるためのコミュニケーション法はありますか。

 自律した子どもに育てていくための親の原則を、「認める」「見守る」「待つ」という3軸で考えています。

 「認める」というのは、たとえば、おもちゃ屋さんの前で子どもが駄々をこねた時でも、頭ごなしに叱るのではなく、「あなたはこのおもちゃがほしいのね。今日は買えないけど、ほしいという気持ちは理解したよ」というように、子どものありのままを認めてあげることです。

 「見守る」は、子どもが取り組もうとしているようすを、適度な距離感で見守ることです。公園での見守りがよい例だと思います。0歳だとまだ抱っこですが、2歳ごろなら砂場遊びをしている子どもを砂場の縁に座って見る、あるいは5歳ごろなら走り回っているようすをベンチに座って遠目に見る、というようなイメージです。子どもの成長によって、見守る際の距離感は変わります。

 「待つ」は、子どもが何かにチャレンジしようとしているときに「信じる」ことです。たとえば子どもが宿題をするのを待つ場合、いつになったら始めるのだろう、どうせやらないだろうとイライラしながらギリギリまで待つのではなく、きっとやると信じて待つようにしてください。普段から子どもの気持ちを認めたり、ようすを見守ったりすることで、次第に子どもを信じて待つことができるようになるはずです。

インタビューに応じる小川大介氏
「主体的に学ぶ自律心を育むために必要なのは、「認め」て「見守り」「待つ」こと

絵本は世界に開かれる「はじめてのドア」



--絵本は親子のコミュニケーションに最適なツールと言われています。絵本で身に付く力を教えてください。

 絵本は、子どもたちにとって、図鑑や辞書や参考書などすべての本への入口だと思います。絵とそこに添えられた言葉によって、イメージと言葉(音)がつながり、子どもの成長段階に応じて知識や感覚として取り込まれていきます。

 実際の世界での経験が浅い子どもたちにとって、絵本は世界に通じる最初のドアと言ってもいいかもしれません。それから、絵本には何といっても、感情とつながる色彩があることは大きいですね。

--絵本を読み聞かせるコツはありますか。

 子どもが絵本を読んでいるときには、ストーリーに関係なく、特定のページばかりを見ていることがあります。そのページには、その子に響く理由があるはずです。いろいろなイメージが膨らんで、その子だけのオリジナルの物語が始まっているのかもしれませんし、心の中でセリフや音が流れているのかもしれません。そういうときは、無理に急かすことなく、じっくり見守るとよいですね。

 「おもしろいから今じっくり見ているんだ」ということを子どもに実感させてあげるためにも、「どのあたりがおもしろい?」など、声をかけてあげるとよいと思います。そのときの子どもからの答えが、大人にとっては理解不能であっても、オウム返しでもよいので受け止めてあげてください。

 もちろんストーリーを追わなくてもかまいません。学びのツールとしてだけではなく、「本で遊んでいいんだ」という本そのものの楽しさを幼いころに伝えてあげたいですね。

「ほんのハッピーセット」の第2弾の絵本「ねんねこ」を手に取る小川大介氏
「ほんのハッピーセット」の絵本を手に取る小川大介氏

--そのためにも、読み聞かせを通じ、幼いころから親子でいろいろな本を楽しむ習慣づくりが大切なのでしょうね。

 同じ絵本でも、刺激を受ける箇所、好む箇所は、それぞれの子どもによって違います。絵本はメッセージがシンプルで、イメージをふくらませやすいです。保護者の方から「読書をさせたい」「図鑑に慣れさせたい」という相談を受けたときには、まず絵本をおすすめしていますよ。

好奇心、抽象化能力、観察眼…図鑑で養える、たくさんの力



--そういった点では、定期的にいろいろな絵本や図鑑に出会える「ほんのハッピーセット」は、自然に読書習慣を身に付けるきっかけにできそうですね。絵本の良さと同様に、小川先生は、子どもの成長には「図鑑」も大切だと説いていますね。図鑑では、どのような力が身に付くのでしょうか。

 図鑑は、基本的にページを開くと同じページ上に複数のものが載っていますから、「比べる楽しさ」があります。

 比べる力というのは、共通点を見つける力でもあります。図鑑を読むことで、単に物知りになっていく、というだけでなく、比較する力は物事の違いを「抽象化する力」にもつながっていきます。図鑑を楽しく読むだけで、その裏側では物事を比べる素地が養われているし、違いに気付く「観察眼」にもつながっていきます。そういった意味では、図鑑を読むことは、知識を蓄えるだけではなく、社会生活で必要な力を養っていること言えるでしょう。

--たとえば「ほんのハッピーセット」のミニ図鑑であれば、どのように読めばよいでしょうか。

 まず親は子どもがどんな楽しみ方をするかを観察するとよいですね。子どもはいろいろなことに興味を持ちます。動物の名前について素朴な疑問を持ったり、以前読んだ漫画に出てきた動物と同じ動物が図鑑に載っていて感動したり…。ひっかかるポイントは子どもによって異なります。

 「ほんのハッピーセット」のミニ図鑑のベースにあたる「小学館NEOシリーズ」は、イラストをベースにしているところがいいですね。絵本との架け橋になるだけでなく、幼少期の子どもはたくさんの情報を処理できないので、イラストでデフォルメしているほうが理解しやすいのです。ところどころに写真も載っていますから、実際の姿の写真にも触れ、関連づけることもできます。小さな子どもの場合、動物を実際に目にしても微妙な色の違いなどを認識できないこともあります。子どもにもわかりやすいように、そういった形や色合いなどのたくさんの情報を、写真とイラストでバランス良く説明している点も良いですね。

--親子で一緒に図鑑を読む際のアドバイスをください。

 巻末にオリジナルの動物クイズが10問ついていますね。このクイズをヒントにして、オリジナルの問題を作ってあげるのもよいでしょう。クイズといっても、たとえば跳ぶのが得意な動物がジャンプしているようすが描かれていた場合、答えに関係するキャプションを隠しながら「なぜジャンプしているのでしょう? 1、趣味だから。2、びっくりして飛び上がってしまったから。3、獲物に飛びかかっているから。」と質問するような、簡単なクイズでよいと思います。子どもも「次は僕がクイズを出す!」と言い出したりして、クイズ大会になるかもしれませんね。

ミニ図鑑の巻末にあるオリジナルクイズ
「ほんのハッピーセット」ミニ図鑑の巻末にあるオリジナルクイズ

--絵本・図鑑ともに、楽しみ方に際限がありませんね。「ほんのハッピーセット」は、2018年8月31日に第2弾の発表を予定しているそうです。

 とても良い取り組みですね。親子で一緒にご飯を食べることが嫌いな子どもはほとんどいないと思いますし、そのような楽しい食事の場所で経験した読書の記憶は、それ自体が「楽しい思い出」として残ります。親としても、家事をしながらバタバタと絵本の話をするよりも、リラックスして楽しめますよね。本を読むという行為が楽しいことだと自然に印象付けられる「ほんのハッピーセット」の企画に、今後も期待しています。

--進んで本を開くことのできる子どもにするには、「本で遊ぶ経験」をたくさんさせてあげることが大切だと実感しました。本日はありがとうございました。

 子どもたちが興味を持つきっかけを作り、それをありのままに受け入れ、認め、どれだけ広げてあげることができるのか。それこそが、伸びる子の共通点「好奇心」を育む最たる方法だ。2018年7月20日から全国で販売を開始した「ほんのハッピーセット」は、親子のコミュニケーションと好奇心育成のきっかけを手軽に提供してくれるツールでもある。

 第1弾の絵本「きもちのかたち」図鑑「動物 ネコのなかま」は、発売から2週間で売り切れの店舗もあるほどの人気だという。保護者だけでなく、子どもたち自身が絵本や図鑑を選ぶことも多いと聞く。人間が元来持っている「知りたい」「楽しみたい」という欲求ゆえだろう。

 第2弾は2018年8月31日に発売される。絵本は、ザ・キャビンカンパニーがオリジナルに描き下ろした「ねんねこ」、図鑑は「動物 イヌのなかま」が予定されている。この後も2、3か月ごとに新しいシリーズが続々と登場するとのこと、すでに心待ちにしている家庭も多いだろう。自宅で、電車で、公園で、マクドナルド店内で本を開き、「おもしろい」「楽しい」を親子で体感する時間をぜひ作ってほしい。
《渡邊淳子》

渡邊淳子

IT系メディアのエディター、ライター。趣味はピアノ。

+ 続きを読む

【注目の記事】

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top