そう言って笑うのは、神谷久美子さん(ヤマハ発動機 PF車両ユニット PF車両開発統括部 車両実験部)。大学で機械工学を学び、ヤマハ発動機で新型バイクの開発に携わる、いわゆる“リケジョ”(理系女子)だ。
◆ベトナム女性の美意識をスクーター開発に
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ヤマハは2018年12月に、ベトナムにて125ccのハイブリッドスクーター『NOZZA GRANDE(ノザグランデ)』を発売したが、初期段階まで開発チームで車両実験チーフとして携わった神谷さん。男性ばかりの開発陣のなか、女性目線は大いに活かされた。
プロジェクトリーダーの西村健さん(ヤマハ発動機 PF車両ユニット PF車両開発統括部)によると、「(ノザグランデの)ベトナムでのユーザーは9割が女性」とのこと。「いかに女性に気に入ってもらえるかがカギでした」という。
女性ユーザーの意見を新型モデルの開発に反映しようと、神谷さんはベトナムでのリサーチを続けた。
「ベトナムの女性たちはとても美意識が高く、スクーターに乗るときも、自分がどう見られているかをとても気にされます。背筋が伸びて、足が長く見えるかなど、走行中の姿勢も美しくなければならないと、現地の女性たちの声を聞いてわかったのです」(神谷さん)
◆ピンヒールのサンダルを履いて走行テストも
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ユーザーからのヒアリングによって、スカートでピンヒールのサンダルでもスクーターに乗って出掛けることを知ると、自身でも試験コースで実験してみた。「お客様の使い方を知らないと、仕様は決まらないので…」と、ベトナムのユーザーになりきった。
もちろん男性ユーザーもいるので、着地点はチームで決まっていく。ただし、現地で徹底リサーチした女性目線の意見だから、そう簡単には譲れない。
「フルフラットなのはもちろん、フットボードの滑り具合ですとか、スカートでキレイに足を閉じて揃えられるかなどシート形状にこだわりました。肘がしまって美しく見えるか、ハンドル形状やグリップ位置も重要です」(神谷さん)
◆ユーザーの声を聞いて製品に反映したい
そもそも、どうしてバイクメーカーで働こうと思ったのだろうか?
「子どもの頃から図工が得意だったり、ものづくりが好きでした。テレビでF1を見て、エディ・アーバイン選手を応援するようになってのめりこむと、モータースポーツ全般が好きになって、レーシングカートも大学に入ってから楽しむようになったんです」
「バイクはヤマハに入社してからSR500に乗るようになり、スタンドを立てなくともキックスターターでエンジン始動ができるように練習しました。TT-R125でオフロードライディングを学んだり、レースも好きで、社内のロードレースクラブに所属してお手伝いも楽しんでいます」(神谷さん)
ヤマハは社員チームが鈴鹿8耐に参戦しているが、そのメカニックとしても活躍した。また、MotoGPマシンやスーパースポーツのマシン開発には興味ないのだろうか? 今後、やっていきたいことも聞いてみた。
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「鈴鹿8耐ではタイヤ交換を担当しました。やり甲斐もありましたし、緊張感もあり、いい経験だったと思います。レーシングマシンやスポーツモデルの開発ももちろんやってみたいと思いますが、自分の強みを活かせるのは生活に密着したシティコミューターなんだろうなって思っています。特にアセアンでは、スクーターは日常の足に欠かせないもので、ベトナム向けのモデルに携わることができたのはよかったですね」
「ユーザーの声を聞いて製品に反映するというのがメーカーには重要で、もっと要望に応えられるような仕組みづくりに今は取り組んでいるところです」(神谷さん)
話しを聞いていると、今後も登場してくるヤマハの女性をターゲットにした製品が楽しみになってくる。バイクだけでなく、アパレルやグッズ、イベントなどにも女性目線がもっと活かされていくはずだ。
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