全部門を制覇し8年連続最優秀賞
「イード・アワード2019 電子辞書」で、シャープの「Brain」が最優秀賞となった。8年連続での受賞である。しかも今回は、「操作性」「検索機能」「画面の見やすさ」「閲覧性」「音声品質」「携帯性」「デザイン」「耐久性」「コストパフォーマンス」といったすべての部門でトップという結果だった。
「今回は部門賞もすべていただけて、これまでやってきたことが報われた思いです。誇りに思っていますし、とても嬉しいです」と奥田氏。「来年も受賞するためにも頑張ろうと、開発メンバーのひとつの目標にもなっています」と西田氏も喜びを語ってくれた。
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シャープ 国内スモールアプライアンス事業部 商品企画部の部長 奥田哲也氏
Brainの良さを継続しさらなる改善と機能拡張
Brainの最大の特徴は、「360°オープンデザイン」だろう。キーボードを使いたいときにはノートパソコンのように開き、スマホのように持って使いたいときにはキーボード部分を360°回転させて縦型で利用できる。この利用しやすさという基本を貫きながらコンテンツや機能を追加し、新しい特徴も生まれている。
特徴1:人気の英語コンテンツを追加
電子辞書で一番使われる教科といえばやはり英語。新モデルでは、高校生に馴染みの深い次の3つの人気コンテンツを収録している。
●Vision Quest 総合英語 2nd Edition(啓林館)
●総合英語Evergreen(いいずな書店)
●システム英単語 改訂新版(駿台文庫)
「いずれも多くの学校で使われている教材です。特に『Vision Quest』は学校専売の副教材で、書店では購入できません。こうしたコンテンツを収録できたことは大きな強みになりました」(西田氏)
特徴2:キーボードトレーニングの追加
文部科学省が2019年6月25日に示した「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」によると、学習者用コンピューターに小学校中学年以上ではキーボードが必須とされている。Brainでは、高校生モデルだけでなく中学生モデル(PW-AJ1)も、ローマ字入力を楽しくマスターできるコンテンツが収録されている。
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「いざパソコンを使おうというときにはキーボードでの文字入力が必要になってきていますので、早いうちからタイプライターキー配列を覚えて頂けるよう収録しました」(西田氏)
特徴3:英語4技能学習をサポート
従来からあった「英作ボード」に、自分の声を録音し聞き比べる機能を追加し、英語4技能(聞く、話す、読む、書く)学習のサポート強化をはかっている。
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「これまでも自分の作った文章をキーボードで打ち込み、音声合成(TTS)で聞く機能はありましたが、新モデルでは自分の声を録音することもできるようになりました。ですので、聞き比べて発音などのチェックが行えます。1分間スピーチが授業にも取り入れられてきていると聞いていますので、書くだけでなく話すということに発展させたのが今回のモデルになります」(西田氏)
特徴4:使い勝手の向上
Brainにはもともと多くのコンテンツが収録されているが、頻繁に使うコンテンツは利用者により異なる。そうした利用者の使い方をふまえて、自分がよく使うコンテンツをすぐに使えるように1画面にまとめておけるようになった。スマホの画面上にアプリのアイコンが並んでいるようなイメージだ。
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西田氏によると「たとえば電卓やタイマーといったツール類も置けます」とのことだ。山口氏は「操作性に関する利用者からの声を、どのように実現し、改善していくか、毎年見直しを行っています。過去に悩んだことが、今になって参考になることもありますし、改善の積み重ねが大切だと思います」と言う。
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シャープ 国内スモールアプライアンス事業部 販売推進部の部長 山口直樹氏
特徴5:受験対策にも役立つ6教科の暗記学習サポート
これまでにも、学習法を提案する「Brain English」があったが、新製品では6教科対応に拡大し、「Brain Learning」にパワーアップ。各教科の暗記学習をサポートしている。教科ごとに暗記学習ができ、一度調べた用語や単語を科目ごとに一覧表示し、知識の定着度に応じてマークを付け、繰り返し確認することも可能だ。たとえば「チンギスハン」を調べた場合、世界史での取り上げ方、日本史での取り上げ方では異なるだろう。世界史辞典で調べた場合は、世界史の用語として一覧表示され、効率的に学習することができる。
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「電子辞書なので意味を調べることがベースになりますが、意味を調べるということはその言葉を知らないということなので、教科ごとに覚えやすいような仕様にしました。ただたくさんの単語を収録しているだけではなく、よりわかりやすく使っていただくために、日々使いやすさの実現に向け努めています」(西田氏)
特徴6:友達とデータ交換
microSDカードでのデータ保存が可能になったことで、たとえば先ほど紹介した英作ボードで作った自分の文章データを保存して、Brainを使っている友だちとデータをやりとりすることが可能になった。
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「スピーチネタでこれが使えるよ、といった形で友だちにデータをあげたり、もらったりすることが簡単にできるようになりました」(西田氏)
特徴7:ハードウェアの強化
子どもたちが持ち歩き日常的に利用する電子辞書には、軽量かつ丈夫であることが求められる。Brainではこれに加え、特徴である360°オープンデザイン・縦型を実現するために、さまざまな工夫を凝らしている。西田氏は「持ち歩いて使うものですから、軽くて頑丈であるよう工夫しています」と語る。
特に頻繁な開閉に耐えるために開発されたのが、ヒンジ部分の金属部品で、小さいが丈夫でしなやかな動きを可能にした作りになっている。また、液晶を保護するために液晶の裏に頑丈なアルミ合金(ダイキャスト製)を貼っており、年々ハードウェアが強化されている。
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360°オープンデザインの実現と、頻繁な開閉に耐えるために開発されたのが、ヒンジ部分の金属部品(本体の右側)
スマホ時代における電子辞書の強み
強み1:オフラインで利用可能
タブレットやパソコンが学校現場にも導入されはじめ、中高生の多くがスマホを所有している。そのなかでの電子辞書の強みは何だろうか。西田氏がまずあげたのは、オフラインであることの強みだ。「通信環境が整っているとはいえない教室もまだ多くあります。オフラインで使えることも電子辞書の強みといえると思っています」(西田氏)
強み2:信頼度と情報量
また、情報の信頼度と情報量の多さも強みのひとつ。
「電子辞書に収録しているコンテンツは書籍として利用されてきたものなので、情報の信頼度が高いですし、情報量も多いです。たとえば高校生モデル(PW-SH6)では英語辞書だけで10タイトル、その上位モデル(PW-SS6)では14タイトルを収録していて、そのすべてを横ぐしで検索できます。スマホやタブレットはちょっと調べるのには便利ですが、じっくり学習するには電子辞書と。こういう具合に使い分けるとよいと思います」(西田氏)
「電子辞書を使いこなしている学習者には、複数の辞書を引き比べて、辞書により異なる説明や表現方法を確認し、より深い学びへとつなげている方もいらっしゃいます。こいう学習は、アプリや紙ではできないことだと考えています」(奥田氏)
強み3:専用機ならではの効率的な操作性
そして、電子辞書という専用機の強みはなんといっても「調べるシーン」を考え抜いた使い勝手、操作性の良さにある。西田氏は「専用機なので、さまざまな調べるシーンを考慮したうえで、操作性を考えて提供しています。そこでの強みがあると思います」と自信を見せる。
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シャープ 国内スモールアプライアンス事業部 パーソナルソリューション企画開発部の主任 西田真理子氏
Brainを活用した学習法と成績アップのコツ
ニーズの高い英語学習を中心に、Brainを使った学習のコツ・裏技を教えてもらった。
コツ1:縦型で暗記ツールを使う
西田氏がコツとして最初にあげてくれたのは「暗記ツール」の活用だ。単語を覚えるときに、赤や緑の暗記シートを利用することが多いと思うが、Brainには赤・緑・紺の暗記シートが用意されている。Brainを縦型にし、画面上のシートをずらすことで、通学中のすきま時間でも単語の暗記学習ができる。また、電子辞書の画面に、書いて覚える機能もある。
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「覚えるというプロセスのなかで、書きたいという人もいます。そういった人のために、書いて覚えることができる機能も用意しています」(西田氏)
コツ2:6教科の暗記画面で表示方法を変える
新モデルの特徴でも紹介した6教科の暗記学習の画面では、調べた単語の履歴がリスト化される。その単語リストの順番を変えることで、暗記学習を効率化する方法が2つ目のコツだ。「調べた順番でソートをかけたり、定着度をマークしておき、覚えていないものを抽出することもできます。確実に単語を覚えるために、リストの並び順を変えることで、繰り返し学習できるようにしました」(西田氏)
中学生モデルの対象は小学生(高学年)から
2020年度から小学校高学年でも英語が教科化される。そこで、Brainの「小学生モデルが提供されるのか」が気になる方も多いだろう。実は中学生モデルは、小学校の高学年からの利用を意識したモデルとなっている。たとえば、「レインボー 英和辞典」「レインボー 和英辞典」「ニューワイド学習百科事典」など、小学生向けコンテンツを搭載している。
「新学習指導要領の実施を目前に控え、店頭などで小学生モデルのお問合せが増えています。その場合は、中学進学後も利用できる中学生モデルをご案内させていただいています。小学校から中学校まで、長く使っていただきたいと思います」(山口氏)
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インタビューに応えるシャープ 国内スモールアプライアンス事業部の皆さん
最後に奥田氏は「Brainは“調べる”というだけではなく、“新しい学習ツール”としてこれからもさまざまな提案をしていきたい」と語った。今回のインタビューを通して、Brainは、電子辞書として「調べる」ことに真摯に向き合い、電子辞書だからできることを追求して作られた製品だと感じた。さらに、新しい時代の電子辞書として学習者に何が届けられるのかを徹底的に研究し、学習ツールとして挑戦し続けていることが、連続8年の最優秀賞につながったのではないだろうか。