【高校受験2021】今夏の不安は皆同じ…湘ゼミに聞く神奈川公立入試対策

 神奈川県公立高校の入試の動向や、これからの時期に押さえておきたい勉強のポイントなどについて、湘南ゼミナールの教務支援部特色検査対策責任者の渡邉豪氏、同部進路情報戦略室長の秋山清輝氏に話を聞いた。

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湘南ゼミナールの秋山氏・渡邉氏
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  • 湘南ゼミナールの教務支援部進路情報戦略室長 秋山清輝氏
  • 神奈川県公立高等学校の入学者の募集及び選抜の主な日程
  • 湘南ゼミナール教務支援部特色検査対策責任者 渡邉豪氏
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 今年は新型コロナウイルス感染拡大に伴う休校措置もあり、受験生や保護者にとっての気がかりは例年以上に多いことだろう。そこで、神奈川県公立高校の入試の動向や、これからの時期に押さえておきたい勉強のポイントなどについて、湘南ゼミナールの教務支援部特色検査対策責任者の渡邉豪氏、同部進路情報戦略室長の秋山清輝氏に話を聞いた。

2020年度神奈川公立入試を振り返る



 --2020年度の神奈川県の公立高校の入試を振り返り、難度を上げた学校や人気校の変化とその理由、また募集人員の増減など入試の変更点や、それらの2021年度入試への影響についてのお考えをお聞かせください。

秋山氏:今春入試、全日制普通科で高倍率になった学校は3タイプに分かれます。

湘南ゼミナールの教務支援部進路情報戦略室長 秋山清輝氏
湘南ゼミナールの教務支援部進路情報戦略室長 秋山清輝氏

 まずは横浜翠嵐を始めとした進学実績の出ている上位校です。中でも大きく倍率が上昇したのは、人口増の川崎市の学校である新城や市立高津、中高一貫校となって高い進学実績が出始めた市立南です。これらの学校では倍率が0.2~0.3ほど上昇し、難化したと言えます。

 市立南高校は、高校でも1クラス分の募集があります。近年は、それでも定員を割ることもありました。しかし、中高一貫校となって6年が経過し、高校から入学した生徒たちが中学から入学した生徒に刺激を受けて頑張った結果、上位大学に進学したという話を聞きます。そのあたりが知られるようになったがゆえの高倍率なのではないでしょうか。

 次に、人気がありながらも定員減少のあった学校です。これは横浜サイエンスフロンティア、港北、湘南台が代表的で、やはり倍率上昇により難化しました。横浜サイエンスフロンティアはもともと人気がありながらも附属中学からの進学者受け入れに伴い定員減少となりました。川崎総合科学の科学科も倍率が0.4近く上昇しましたが、これは横浜サイエンスフロンティアの定員減少が影響したと思われます。

 ほかに、特徴的な高校として港北や湘南台があげられます。根強い人気がありながらも、昨年度の入試では倍率が下がっていた高校です。その影響か、今年度は定員が減少したにもかかわらず昨年以上の志願者が集まったため、倍率が上昇し厳しい入試となりました。

 最後に専門学科など特色のある学校です。人気が高まったのは、やはり国際系の学科です。新設2年目の横浜国際IBコースは1.45倍と初年度の1.15倍から上昇しました。川崎市立橘の国際科は昨年1.18から一気に1.74倍にまで上昇しました。これは神奈川県のすべての公立高校でもっとも高い上昇率でした。専門学科はそもそも定員自体が少なく、1~2クラスの募集が多いのですが、その中で志願者が数十人増えると一気に倍率が跳ね上がるということも原因です。

 「上位校」「国際系」「人口増の地域」「定員減少」という要素で倍率が上下する傾向は今年だけのものではなく、近年ずっと続いており、来年度の入試でも同様の傾向になると考えられます

学力検査日程が変更、会場試験が数日続く



 --2021年度入試の基本情報の変更や、新設校・新コースなど、何か特徴的な動きはあるのでしょうか。

秋山氏: 2021年(令和3年度)の神奈川県公立高校入試の共通選抜入試日程が発表されています。2021年度の特徴として、まず学力検査がバレンタインデーではなくなりましたね(笑)。また合格発表が3月1日というのも神奈川県では珍しいです。

 それはさておき、一番のポイントは、学力検査から面接、特色検査まで休みなく2~3日連続で会場に行って試験を受けることです。間に土日が挟まると体調や気持ちを整え、最終確認の練習や復習をしてから面接や特色に臨むことができるのですが、今年は万事万全で2月15日を迎える必要があります。例年以上に体調管理が重要です。

神奈川県公立高等学校の入学者の募集及び選抜の主な日程
神奈川県公立高等学校の入学者の募集及び選抜の主な日程

 万が一インフルエンザなどの疾患にかかった場合の対応として、公立入試では「追検査」という振替え日程が用意されています。ただし、面接と特色検査に追検査はないので、注意が必要です。

 特色検査は、実技と自己表現検査に分かれますが、自己表現検査の中でも「筆記型」と呼ばれる試験は、学力向上進学重点校として指定された学校や、その指定を目指すエントリー校のすべてで課されています。

 「学力向上進学重点校」は、難関上位大学へ合格できる高い学力を育成する役割を担う高校で、現在は横浜翠嵐、湘南、柏陽、厚木の4校のみ正式に指定されています。国公立や最難関私大へ進学したい場合はぜひ目指してほしい学校です。中でも横浜翠嵐と湘南は2トップですが、近年は東大合格者を安定して2桁輩出しつつ、京大など関東以外の難関国公立へも合格者を輩出しています。

 「エントリー校」は、横浜緑ケ丘、川和、多摩、希望ケ丘、光陵、横浜平沼、大和、相模原、平塚江南、茅ケ崎北陵、小田原、鎌倉、横須賀の13校。エントリー校の各校にも早慶やGMARCHの合格者数を中心に実績を伸ばしている学校があります。また、エントリー各校の取組みが多種多様で、面白いものとなっています。

 そういった各学校の想いや考えが特色検査の問題にも反映されているのではないかと思います。特色検査の特徴は何といっても「科目横断型」であることです。英語で書かれた数学の問題、技能科目との融合問題、プログラミングのような問題、4コマ漫画の起承転結の問題など、全国のどこにもないような問題がバリエーション豊富に出題されます。ほとんどが初見の問題であるうえに、資料・グラフ、リード文の量も非常に多く、トップ校受検者でも時間内に解き終わるのが難しいほどです。全国でも最高難易度レベルの公立入試問題と言って間違いないでしょう。

 今春入試では、こういった問題群の中から大問2つ分は共通問題として全校同じ問題で、残りの大問2つは、5つの大問群の中から学校ごとに2つを選択・指定してよいことになり、各校の特色が出た学力検査でした。おそらく今年度入試も今春と同様の特色検査の傾向になるのではないかと考えています。

 そして2021年度入試ですが、新設された学科・コースや、統廃合が行われる学校があります。中でも、神奈川総合高校に「舞台芸術科」という大変珍しい学科が新設されるのは注目です。全国でも数少ない舞台に関する学科です。

 県の設置案では、役者、舞台監督や照明、脚本など舞台に関するさまざまな役割を学ぶことができ、大スタジオの整備も進められているとのことです。舞台は、教育的な視点から考えると「他者から観た自分」を常に意識しながら自己コントロールするという高度な認知力を必要としますし、チームで綿密かつ膨大なコミュニケーションを取りながら仕事を進める必要のあるものなので、必ずしも役者や脚本家になると決めていなくても、興味があれば調べてみてもいいのではと思います。

 一方、神奈川でも高校再編が進んでいます。今年度は、3校の募集停止があります。瀬谷高校との統合で瀬谷西高校が募集停止、同様に逗葉高校との統合で逗子高校が募集停止、城山高校との統合で相模原総合高校が募集停止となります。また、今春入試では、全日制で定員割れとなった学科・コースが過去最大となりました。大きな流れとして、就学支援金制度の拡充などの影響で公立中堅校以下の受験生を中心に、公立より私学を選択するケースが増えてきています。

併願校決定のポイント



 --併願する私立を選ぶ際のポイントはどういったところにあるのでしょうか。また、私立と公立の受験スケジュールの注意点はどんなところでしょうか。

渡邉氏: 併願私立を「滑り止め」と軽く考えないことです。公立高校が第一志望である場合、併願私立は「2番目、もしくは3番目に行きたい高校」として考えたほうが、「あの高校に合格している」という安心感をもって第一志望の公立高校の受検に臨めますし、万が一のことがあっても、4月以降前向きに入学でき、結果として高校受験そのものがうまくいくことが多いように感じます。そのためには、高校生活で何がしたいのか、高校卒業後にどうなっていたいのかといったところから、行きたい高校ややりたいことができる高校を探すことをお勧めします。

湘南ゼミナール教務支援部特色検査対策責任者 渡邉豪氏
湘南ゼミナール教務支援部特色検査対策責任者 渡邉豪氏

 2021年度入試は緊急事態宣言の影響もあり、不明な要素がたくさんあります。ですので、例年の受験生以上に自分の成績の上下の想定幅を広くとり、「受験する可能性がある高校」を数多くもつことが大切です。その準備ができていれば、全力で勉強して成績が確定した後にすんなりと受験校を選べるのだと考えています。

 神奈川・東京では私立高校の入試解禁日が例年2月10日以降です。併願国・私立を2校以上受験する際は、受験日や手続き日の確認も大切です。公立高校が第一志望でない場合は、神奈川では追加合格を出さないため、3月1日の公立高校合格発表日前日の正午までに辞退しなければならないので注意が必要です。

新型コロナの入試への影響と親の心構え



 --今年度はさまざまな面から心配されているコロナの影響ですが、現段階で入試への配慮に関する情報や、志望校選択への影響はありますか。

渡邉氏: 入試範囲の変更点は、まだ明らかになっていない部分です。まずは皆が同じ条件であることを念頭に、目の前の学習に取り組むことが大切です。

 1、2年生の学習内容は確実に出題されますので定着させることが必要です。また、中学校が再開して新たに習う範囲もしっかりと学びましょう。しかし、焦って中3の新規内容の学習と今までの復習をこなそうとし、両方とも中途半端になることは避けたいところです。湘南ゼミナールでも、時期によって適切に両方のバランスを取るカリキュラムを再構築しています。

 --塾生の保護者から、新型コロナに関してはどのような相談がありましたか。また、親の心構えとしてどういったことを気をつけるべきでしょうか。

渡邉氏: いただいた相談は「休校措置がなければおそらくされなかったであろう相談」と、「休校措置がなくてもされたであろう相談」の2つに分けられます。大人もいつも以上に不安を感じていますので、どうしてもコロナ関連に目が奪われてしまいますが、紐解いてみると、今回の騒動がなくてもお子さまの成長過程から自然に発生するお悩みであることも多かったです。

 新型コロナウイルスにかかわる休校措置の影響によることが明らかな悩みは、映像授業の見方についてです。湘南ゼミナールでは休校期間中に映像配信の授業に切り替えて学びの継続を図ってまいりました。対面授業・映像授業には、それぞれに長所と短所があり、しかもやり方次第で長所と短所が入れ替わることもあります。

 映像授業の長所は、繰り返し見ることが可能な点。わからなかった部分は映像を止めることもできますが、授業は流れで構成されているので、立ち止まりすぎて全体像を見られないと、時間ばかりかかって理解が進まないということにもなります。そこで「映像授業を視聴しているようす」を保護者の方にお聞きしながら、「止めたほうがよい部分」「流してもよい部分」などを具体的に決め、その後経過観察と対話を続けています。

 今回のような状況では、保護者の皆さまの負担はかなり増えたと感じていました。ご家庭で多くのことを背負うのは本当に大変です。多くをご家庭で背負わなくてもすむように、状況をお聞きしながら塾にお任せいただく部分を増やすことを提案したり、お子さまに求めるラインをほんの少し下げてみながら、ちょっとご本人の自主性を刺激することを提案することもありました。

 大人から見ると物足りなくても、お子さまなりに頑張っていることが意外と多くありますし、小さな成長は必ずあります。それまでやっていなかったのに食事の後に自ら食器を下げたのであれば、それも立派な成長です。お子さまに何かを「やらせる」だけではなく、お子さまが自分でやれることを考え決めるよう、見守ったり、サポートしたり、ときに促すことなどは、コロナだからというわけではなく今後も大切なことなのだと思います。

 また、学校情報が手に入らない、入試がどうなるのかわからない、周りと比べて遅れるのではないかなどの不安も今回新たに生じた悩みです。これらの心配は察して余りありますが、実は周りの皆さまが抱かれている悩みですので、悩みすぎないことが大切です。

 今、公立高校も私立高校も情報発信の機会が極端に減っており、多くの高校を比較するほどの情報が手に入りにくいのが現状です。つまり、それぞれの情報が手に入るタイミングに手に入れれば大丈夫といえます。学校が再開するタイミングも基本的に県内ほぼ同じです。入試問題も公立であれば同じです。「同じ条件の中でどこまでやり切れるのか」という視点で見ると、やるべきことをひとつひとつこなしたことが成長に結びつく構造は変わっていません。

 もちろん、塾も手をこまねいているわけではありません。湘南ゼミナールでは、神奈川に東京・埼玉・千葉を含めた4都県の私立高等学校など約400校のデジタルパンフレットをご覧いただくサービスもあり、そこで手に入る情報は決して少なくないと考えていますし、さらにそのほかの情報発信も行う予定です。ぜひご期待ください。

夏休みの学習のアドバイス



 --慣れない自宅学習で、波に乗れず焦りを感じているお子さんが多いのではと思います。学習目標の具体的な設定方法や、受験生が各科目の重点的におさらいしたい単元はどういったところでしょうか。

渡邉氏: 休校によって学習の遅れを心配される方もいらっしゃると思いますが、神奈川県のほとんどの受験生が同じように止まっていたので、今からやれば十分取り戻せると思います。

 学習目標を定める場合には、第一志望が定まっていると決めやすいです。今は、進学情報誌やWeb上に、目安となる内申や偏差値が多く載っているので、目標の成績は見つけやすいと思います。また、これまでに入試模試を受けていれば、弱点となっている科目も把握しやすいでしょう。もしまだ本格的な入試模試を受けたことがない場合は、湘南ゼミナールでも塾外の生徒さんを対象とした進路面談付き自宅受験模試を行っていますので、ご検討ください。

 目標の数値と弱点を把握したら、次にどの科目のどの単元を優先して学習するかを考えてみましょう。中2までの範囲で一般的に、最後まで受験生の苦手単元として残りやすいのは、理科で中1の「光・音」、中2の「化学反応式」あたりです。社会では歴史の古代から鎌倉時代あたりです。英数国では、中2までの英単語、連立方程式や関数、漢字をしっかり復習できていれば、例年の受験生と互角に勝負できると思います。それくらい、中2までの内容には、定着度に差があるということです。

 学校が再開して本格的に中3内容の学習が始まりますが、絶対に定着させる必要があるのは数学の「平方根」の単元です。ここの定着が弱いと中3数学全般に影響が出てしまいますので、時間をかけて演習しましょう。

 学習面以外での進路準備は、夏までに以下の1~3をループするイメージで進めてほしいです。

 1.自分の価値観を掘り下げて、志望校選びの優先項目を考える
 2.学校の情報を集める
 3.もう一度志望校を再考してみる

 学校選びは、自分の価値観を掘り下げて、志望校選びの優先項目を考えることができていれば、選択に迷いがなくなります。たとえば、最初は「野球部のある家から近い学校」という優先項目で志望校を選んでいた生徒さんがいたとします。その後、学校のHPや資料を読んでみて、「A校の野球部より、B校の野球部がいいな」と感じたなら、部活に関して何かほかの価値観を自分がもっていることになります。それが何かを掘り下げてみてください。

 自分が価値を感じているのが、強豪校で自分を限界まで鍛えることなのか、仲間と何かに取り組むことなのか、努力してチームに貢献することなのか、自分の指示で人を動かすことなのか、など色々出てくると思います。そういった掘り下げを、高校卒業後の進路や学校行事なども鑑みて行ったうえで優先順位を付けておけば、高校の説明会が本格化するであろう夏以降に志望校を観る視点が深まっていると思います。

湘南ゼミナールの秋山氏・渡邉氏
 --ありがとうございました。

 不安なことも多いかもしれないが置かれている状況はみな同じ。焦ることなく着々とやるべきことをこなし、力を積み上げることが必要とされていると心に留め、受験生にはこの「夏」を有意義な時間にしてほしい。
《編集部》

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