大阪【高校受験2021】公立上位校人気は高止まり、私立専願増加か…第一ゼミナール

 今春のコロナ禍における大阪府の高校入試の傾向や来春(2021年度)の入試に向けての心構えを、関西圏を中心に、第一ゼミナールやファロス個別指導学院などを展開するウィザス 第一教育本部教育情報室室長の高澤隆一氏に聞いた。

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ウィザス 第一教育本部情報企画室室長 高澤隆一氏
  • ウィザス 第一教育本部情報企画室室長 高澤隆一氏
  • ウィザス 第一教育本部情報企画室室長 高澤隆一氏
  • 2021年度公立高校入学試験 都道府県別出題範囲配慮(除外範囲)の内容/人口トップ5都府県
 来春の大阪府公立高校入試は2021年3月10日に予定されている。コロナ禍が収束していない入試直前期にあって、どのような心構えをもてば良いのか思案している保護者や生徒も多いことだろう。近年の大阪府高校入試における傾向や来春(2021年度)の入試に向けた過ごし方などを、関西圏を中心に、第一ゼミナールやファロス個別指導学院などを展開するウィザス 第一教育本部教育情報室室長の高澤隆一氏に聞いた。

2020年度の入試は、実施できたことに最大の安堵感



--今春の入試(2020年度入試)は各地で休校が拡がっていく中で実施されましたが、振り返ってみて、受験生たちに何か影響はありましたでしょうか。

 コロナ禍でまだ状況がよくわからない中での入試でしたが、とにかく入試が行われたことに安堵感がありました。本当に自分たちが満足な入試ができるのだろうかということがあったので、まず入試ができたことに一安心したのが本音だと思います。入試の結果や動向に大きな変化はなかったと感じています。

調査書評定の府内統一ルールによる大きな変化はなし



--調査書評定の府内統一ルールによる影響を教えてください。

 今年度は新型コロナウイルスの影響により、中学3年生を対象としたチャレンジテストの実施が中止になりました。それによって、中学2年生2学期末までの評定状況と中学2 年生の1月に実施したチャレンジテストの結果を使って、府全体の「評定平均」を定めることとなりました。5教科の評定平均は3.49で、昨年度と同じ数値となりました。

 大阪府の文理学科10校(北野高校、豊中高校、茨木高校、大手前高校、四條畷高校、高津高校、天王寺高校、生野高校、三国丘高校、岸和田高校)といった難関校の場合、当日の学力検査の点数と内申点の比率は7:3です。内申点が少し動いたとしても入試当日に実力を発揮すれば、合格圏内に入ることができます。難関校に対するルールの影響は少ないでしょう。

--難関校以外ではいかがでしょうか。

 難関校同様、大きな動きはないものと考えています。生徒側は、3.49だからどうしようという考え方ではなく、しっかりと過去問を解いて、学力検査で1点でも多く得点するために訓練するだけです。結果として出てきた自分の通知表で入試の方向性をどうするかと考えていくことになると思います。そのためルールの影響はあまりないと思います。

 私たちが行った第3回 第一ゼミ公開テスト(年5回、第3回は9月5、6日開催)の結果をもとに志望校の分析をしたところ、昨年と大きな変動はありませんでした。ただ次の11月初頭に実施する第4回公開テストで変動があるかもしれませんので、引き続き注視してまいります。

 夏休み前は、「満員電車に乗って遠方まで通わせて大丈夫か」と懸念される保護者がおられました。新型コロナウイルスという、未知のものに対する大きな不安を抱えられていたのでしょう。しかしながら、入試が近づくにつれ、「コロナは心配だけど、子どもの進路の方がもっと心配」と考える方が増えてきたようです。昨年同様、大学附属校を希望するご家庭が多く、withコロナで乗り切っていくしかないという考えに至ったのではないでしょうか。保護者のメンタルが大きく揺れた数か月でしたが、最終的には例年どおりの志望校選択になっていくのではと感じています。

ウィザス 第一教育本部教育情報室室長 高澤隆一氏
ウィザス 第一教育本部教育情報室室長 高澤隆一氏

--公開テストは例年どおり実施されていますか。

 はい。自宅受験か来校かを選べますが、9月時点では圧倒的に来校されての受験が多いです。第一ゼミナールの各校の授業でも、先生が消毒作業などの感染防止に尽力しているのをよくご存知ですので、徐々に生徒や保護者の不安は取り除かれていると思います。だからといって、慣れすぎると次の感染拡大にもつながってしまいますので、私たちもさらに気を付けたいところです。

公立上位校の人気は高止まり



--人気校について教えてください。

 文理学科10校では、今年も変わらず北野高校と天王寺高校の人気は高いです。しかし、高止まりしていて、その両校を避けて茨木高校や豊中高校、大手前高校、高津高校、三国丘高校などに受験生が集まる傾向が見られます。例年、隔年現象もあるので、今春の入試で倍率が高かった高校は少し敬遠されるとは思います。北野高校と天王寺高校の倍率は、これ以上、急激に上がる見通しは今のところ立てていません。安定的な倍率でしばらく推移すると思います。

--そのほかの公立高校はいかがでしょうか。

 文理学科以外の公立高校も今年はそれほど大きな動きはないと思います。普通科の公立高校の一部では、例年、倍率が高めに出るところがあります。たとえば春日丘高校、布施高校、花園高校、泉陽高校などは毎年高倍率となりますが、来春も例年通り高い倍率になると思われます。第3回公開テストの結果を見ても、今のところ公立高校の動向に大きな変動はなさそうです。

 ここ数年で人気が高まっている高校では、門真なみはや高校があげられます。1.28倍→1.34倍→1.46倍と着実に人気が集まっています。この高校はネットの口コミが良いことが特徴で、学校選びもグルメサイトと同様、口コミ評価の高いところに人気が集まる傾向が出てきました。

英検2級より難しいといわれるC問題



--英語の民間試験の見なし点(読み替え点)で変化はありましたか。

 今年はコロナ禍で、英検の中止や延期の影響が出たので、英検に取り組んできたお子さんの中には少し不安だった時期もあったと思います。今は再開されているので、例年どおり英検を取得して入試に臨むでしょう。特に文理学科の上位校である北野高校や天王寺高校は、英検2級を取得することで初めてスタートラインに立てるという状況です。英検2級以上取得率(定員比率)の高い高校では、茨木高校56.6%、大手前・天王寺高校46.1%と定員の半数に及ぶ比率となっております。北野高校にいたっては82.5%という驚異的な比率です。受験生が英検2級を取得していた場合、英語学力検査で72点が約束されますから、残り4科目の学習に集中できるのはアドバンテージといえるでしょう。

 実際に大阪府のデータを見ると、英検2級を取得した生徒の87.6%は、入試当日のC問題で8割取れていないこともわかっています。C問題のほうが明らかに難しい。英検2級は合格への近道なので、これをご覧になった中学2年生のみなさんは、英検2級を早めに取得しておくことをおすすめします。

--御塾には英語学習の対策などはありますか。

 私たちは、教育のグローバル化の方向性にマッチする形で英語教育をひとつの柱としていて、通常授業でリスニングとスピーキングのオンラインによる指導をしています。これは全国でも珍しいケースではないでしょうか。また、タブレット学習による、アダプティブラーニング形式も導入し、入試のためだけの英語ではなく、読む・聞く・話す・書くといった英語4技能をバランスよく伸ばす指導を展開しております。

大学附属校の人気が続く



--私立併願校の傾向や注目の学校を教えてください。

 近畿大学附属高校、大阪産業大学附属高校、上宮高校、箕面自由学園高校、大阪高校、桃山学院高校の6校は、昨年に引き続き受験者が2,000名を越えました。安定的な人気を博しています。

 今春(2020年度)、新たに受験者数1,000名を超えて伸長してきた高校としては、大阪青凌高校、清明学院高校、大阪電気通信大学高校の3つの私立高校があげられます。

 大阪青凌高校は新校舎を建てたことが要因のひとつにありますが、新校舎ができたからといってすぐに受験者が集まる時代ではありません。大阪青凌高校が以前より非常に手厚い指導を展開していることが口コミで広がっていて、新校舎設立が最後のひと押しとなって人気化したと思います。

 大阪電気通信大学高校は、大阪近辺のボリュームゾーンであるご家庭が大学進学に対して憂慮していることが背景にあると思います。

 共通テストによる大学進学を想定すると、高校受験での附属校人気は高く、さらに難易度も上がっています。関関同立や産近甲龍の附属校、特に近畿大学附属高校の難易度の上がり方は非常に顕著になっています。

--来春の入試もそれらの私立高校に人気が出るのでしょうか。

 大阪電気通信大学高校は3年連続で志願者が増加していますが、4年連続はなかなかないことなので少し落ち着きを見せ始めるかもしれません。さきほど申し上げた受験者2,000名を越える6校については、来春も高い人気となるでしょう。

 今年の大阪府下の中3生は、昨年よりも3,000人ほど少なく、その目減りの影響を各高校はかなり気にしています。さらにコロナの影響によって、私立を受験せずに公立一本で行こうとするご家庭が増加してもおかしくありません。そのため、私立高校では「特待制度」を充実させて受験してもらおうという動きが見られます。たとえば、制服をはじめとする制定品や修学旅行の無償化があげられます。大学附属校は、大学と同様に中学生や高校生に一律ICTの充実費用を支給する対応も見受けられました。これらはアピールポイントになっていますね。

「円周角と中心角」除外の影響が大きい公立入試



--休校の影響による出題範囲の配慮でおさえるべきポイントを教えてください。

 生徒の皆さんがもっとも気にしているのは「数学」のテスト範囲がどうなるか。大阪府は、中学3年生で学習する内容のうち「円周角と中心角」の除外を早期に表明しました。これによって、基本的には「円」の複合的な問題が出題されにくくなることも想定されますので、少し取り組みやすい問題になると思います。もちろん、実際に問題を見てみないとわかりませんが、もし取り組みやすい問題になると、数学の平均点もある程度は高くなることが予想されます。その場合、ミスをしない生徒が有利で、ムラのある生徒は難しくなる可能性はあります。

2021年度公立高校入学試験 都道府県別出題範囲配慮(除外範囲)の内容/人口トップ5都府県
2021年度公立高校入学試験 都道府県別出題範囲配慮(除外範囲)の内容/人口トップ5都府県

 また「三平方の定理」が出題されませんが、今の公立中学校のようすでは「三平方の定理」までしっかりと指導しきれる状況になっています。第一ゼミナールでも「三平方の定理」を指導しきって送り出す形ですので、実際には出題されなくても進学後の影響は出ないでしょう。残りの4教科は、英語で「後置修飾」が除外されるなどもありますが、それほど影響はないものと考えています。

私立高校の専願が増えていく



--保護者は私立の志望校を決めるときにどのようなことを重視しているのでしょうか。

 私立の事情を勘案すると、本当に今、各校がコロナ禍にどう対応していくか、大きな課題を突きつけられている状況です。大阪の私立高校の専願率は今、27.3%程度まで高まってきて、受験生の4分の1以上が私立高校を専願するようになっています。私学の無償化が浸透したことにより、公立よりも私立だと考えるご家庭もだいぶ増えてきました。さらにコロナ禍において、公立私立高校間格差が顕著に現れました。たとえば、隣の高校ではいち早くYouTubeで授業を配信したのに、うちの高校では何もしてくれないなどといった状況です。隣の高校では課題が山ほど送られているけれども、うちは何もしてくれないなどといった状況です。そうしたことが口コミでかなり広まっており、高校選びの大きな要因になりつつあります。

 もし再びコロナによって休校になったときに、この高校はどこまで対応できるのか、という保護者の皆さんの関心は高まっているといえるでしょう。その意味では、ICT環境が充実しているところを積極的に選ぶ傾向もありますね。特に公立よりも私立が手厚い対応をしているのも周知されていますので、さらに私立高校の専願率の上昇が見込まれるのではないでしょうか。

まずは「健康管理」を徹底



--受験生(中3生)や保護者に向けてアドバイスをお願いします。

 入試制度や動向については大きな変化がないので、とにかく安心して受験をしていただきたいです。私たちが提供している受験対策などを信じて、しっかりと合格してほしい。保護者にご協力いただきたいのは「健康管理」。生徒本人がコロナに罹患することは、やはり避けないといけません。本当に健康に受験ができることが一番です。第一ゼミナールでも、マスクの着用をはじめとして感染防止対策を徹底しています。

 今、皆さんの意識も少しずつ緩和してきて、模擬試験や授業も対面で実施していますが、やはり行かせたくないという保護者の方もいらっしゃいます。そこで私たちはZoomを利用して授業を同時配信し、ご自宅で授業を視聴できるようにしています。これによって高校入試まで安心して学習を継続できると思います。

--生徒にはどのような声掛けをしていますか。

 健康面では、生徒にマスクの着用などを呼びかけて、今は日常化しています。また生徒同士でも指摘し合っていますね。皆、同じようにwithコロナの高校入試に向かっています。自分だけが苦しいわけではないので、必要以上に過敏にならず、いつもどおり頑張るようにと伝えています。

 勉強面では、11月や12月になってから新しいことに手を出すのは望ましいことではありません。またこれまで苦手なものが得意になるということは難しい。今まで学習してきたことを、しっかりとできるようにすることに時間を割いていくことが大切です。ただ今年に限っては、各中学校で学習進度に差が出てきているのは事実です。学校によっては、新しいことにも手を付けないわけにいかない状況もあるでしょう。第一ゼミナールでは例年どおりのカリキュラムですべての課程を終わらせて、その後は、過去問の指導や間違えたところのチェックなどの徹底に向けてスケジューリングしていきます。志望校の合格を実現できるよう、見通しを立てることが重要です。

--ありがとうございました。

 大阪府の高校入試は、コロナの影響を受けながらも、文理学科10校の人気は継続し、コロナ対応に手厚い私立高校への人気も高まっている。高澤氏が話したように、withコロナの入試では、いかに平常心で受験を迎えられるかが大切な視点になるだろう。入試本番まで残り100日前後のこの時期、まずは油断のない感染対策と健康管理を念頭に、学習を焦らず継続することで、元気に入試の日を迎えてほしい。

 第一ゼミナールでは、今冬も無料の公開テストや公立対策模試、冬期講習会などが予定されている。最新情報については公式サイトで確認してほしい。

学校がある日も無理なく通える!第一ゼミの冬期講習会


講習期間:2020年12月21日(月)~2021年1月9日(土)
第一ゼミの冬期講習会
詳細はこちら


第1回 大阪府公立対策模試(中3)・文理学科10高模試(中1・2)


開催日:2020年12月6日(日)
大阪府公立対策模試(中3)・文理学科10高模試(中1・2)
詳細はこちら
《佐久間武》

佐久間武

早稲田大学教育学部卒。金融・公共マーケティングやEdTech、電子書籍のプロデュースなどを経て、2016年より「ReseMom」で教育ライターとして取材、執筆。中学から大学までの学習相談をはじめ社会人向け教育研修等の教育関連企画のコンサルやコーディネーターとしても活動中。

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