【専門家に聞く「発達障害」2/3】兆候と診断、ケアやアドバイス

 発達障害に関してまず正しい認識をもつために保護者の立場から立命館大学・名誉教授の荒木穂積先生にお聞きした。全3回のシリーズの第2回目「発達障害の兆候と診断、ケアやアドバイス」をお届けする。

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  • 乳幼児期にはむずかしいADHDおよびLDの診断
  • 乳幼児期には難しいADHDおよびLDの診断
  • 乳幼児期には難しいADHDおよびLDの診断
  • 地域のネットワークの他、小さいころからの成長を知る人や専門家とのつながりが大切
  • ADHDおよびLDのある子どもへの発達支援(地域ネットワーク)
 立命館大学・名誉教授の荒木穂積先生に、保護者の立場から発達障害についてお聞きする全3回のシリーズ。第2回目の今回は「発達障害の兆候と診断、ケアやアドバイス」についてお届けする。

第1回:特徴と原因、性別や環境の影響は?
第2回:兆候と診断、ケアやアドバイス
第3回:日常生活や学校生活への影響


発達障害の兆候と診断



Q7.子供と一緒にいて落ち着きがない、うっかりしているところが多いといったことが気になります。



 保護者の方は、子供の落ち着きのなさなどで「うちの子は何らかの発達障害ではないか」と心配になることがあると思います。実際に発達障害と診断されるなかでいちばん多いのはLD(学習障害)で、その次がADHD。この2つに比べると相対的に少ないのが自閉スペクトラム症です。

 知的障害や自閉スペクトラム症は、乳児期および幼児期初期の診断が可能ですが、ADHDや学習障害の場合は、小さいときから症状が現れるにも関わらず、診断ができるのは小学校に通いはじめる学齢期になってからです。

乳幼児期にはむずかしいADHDおよびLDの診断

 それは、落ち着きがなく多動である、注意力が散漫で「うっかり」がよくある、約束や決まりごとが守れない、せっかちでいらいらしてじっとしていられず衝動的な動きが目立つなどは、そもそも幼児期、特に3歳ごろまでの子供たちのもっている「特徴(特性)」ともいえるもので、成長が進むにつれて症状や行動が落ち着いてくるものなのです。多くの場合、これらの行動や特徴は4歳をすぎてくると目立たなくなります。幼児期後半学齢期に入ってもそうした症状や行動が目立つ、あるいはそれらの症状や行動が原因となって学校の中でトラブルを起こしてしまうという場合には、一度、専門家や専門医療機関に相談してみると良いでしょう。

乳幼児期には難しいADHDおよびLDの診断

乳幼児期には難しいADHDおよびLDの診断

 ADHDの場合は、特徴のひとつとして「薬」に反応して症状や行動が落ち着くということがあります。実際に薬を服用してしばらくようすをみると、学習に集中できたり、忘れ物が少なくなったりするなど、落ち着く子供たちがいるのです。LDや自閉スペクトラム症でADHDを合併している場合も同じです。こうしたケースではよく相談しながら薬の効果を確かめていきます。

 専門医は副反応(副作用)に注意して薬を処方します。薬の効果がみられた場合、行動改善効果から、結果的にADHDの診断は妥当だったとされることがあります。ただし、服用した全員に効果がみとめられるわけではないので、薬を何か月か試してみてあまり目立った効果がないようならば、薬の服用は中止になります。また数年の経過の中で、落ち着いた状態が続く場合には、子供自身の発達や成長によって薬を止める場合もあります。専門医と相談して薬を服用するか、服用した場合の期間をどうするかを決めていくことになります。

 家庭や園・学校の周囲の環境が原因で、なかなか気持ちや行動が落ち着かないこともあります。たとえば、家庭や園・学校の周辺が非常に騒々しくて落ち着かないとか、教室内の掲示物が気になるなどです。また、特定の人の動きや持ち物などが気になって集中できない、という場合もあるでしょう。

 音・色・形・光・におい・肌触りなどの感覚刺激や視覚刺激によって集中できないなどの場合は、その集中できない原因が取り除かれることで落ち着いてくることがあります。たとえば、教室の蛍光灯が気になってしかたがないという場合、白熱灯にかえると落ち着いたりすることがあります。環境調整によって気になる症状や行動が落ち着くことがあります。子供の内部への働きかけと、外部への働きかけの両方を考えてあげましょう。

 自閉スペクトラム症、ADHD、LDの3者の間では共通する行動も多いですが、診断の決め手となる症状は異なっています。自閉スペクトラム症、ADHD、LDには特徴となる障害特性があり、専門医はそれをみきわめて診断します。ただし、主症状のほかに別の発達障害の症状を合併している場合があります。診断が難しくなるのは、合併している場合です。

 ADHD、LD、ASDにおいては、その2者または3者が合併している場合がありますので、気になる行動や困っている行動があれば、頻度や場面、状況、対人関係などを丁寧に記録しておいて、診察や相談の時に伝えると良いでしょう。以前には、知的障害の診断をうけるとADHDやLDの症状が見逃される場合がよくありました。こうした場合は、その2つの障害特性からの支援が必要であるといえます。そのため、発達障害の診断にあたっては主症状のみで診断するのではなく、ほかにも気になることはないかどうか、主症状のほかにも合併する発達障害の症状がないかどうかを見逃さず、丁寧に診ていく必要があります。

Q8.手先が不器用なのが気になっています。



 赤ちゃんの中に、乳児期にお座りや歩行が遅かったり、手先の運動や運動に不器用さが目立ったりする子供がいます。主治医や専門医、保健師さん、発達相談員など専門家に相談すると良いでしょう。その赤ちゃんに応じた早期支援プログラムが準備されています。赤ちゃんによっては、特別なことをしなくても成長とともに改善され、気になっていた症状や行動が次第に目立たなくなるケースも少なくありません。幼児期以降に気になる症状や行動が残る場合でも、市町村でリハビリテーションや発達支援の場所や機会が準備されている場合がありますので、相談してみてください。

 最近では、医学の進歩によって、低体重で出生したり、出生時にトラブルがあったりしても障害発生のリスクを抑えられるようになってきています。また、そのような子供たちのフォローアップ(経過観察)もしっかり取り組まれるようになってきています。経過の中で、発音不明瞭が長引いたり、不器用であったり、運動が苦手だったりする子がいます。小学校に入学してからも読み・書きに困難が見られるなどLDに類似した症状が残る子もいます。不器用を主症状とする場合には、「発達性協調運動障害:DCD,Developmental coordination disorder」として、これまで取りあげてきた学習障害とは区別して診断されます。

 発達性協調運動障害のある子供というのは、料理や裁縫が下手だったり、造形や工作が苦手だったりと、協調動作や協調運動の面で不器用が目立ちます。多くの場合は、知的発達に遅れはないのですが、知的障害と合併する場合には、発達の遅れによる「不器用」なのか、障害特性による不器用なのか区別をつけるのが難しくなります。協調動作や協調運動の面での不器用は、幼児期や小学生時代は苦労しますが、中学生や高校生になると不器用は改善されていきます。また、特定の不器用さを補う代替スキルを習得するために、苦労は少なくなっていき、大人になってからは発達障害として支援を受ける必要はほとんどなくなります。

 これまで自閉スペクトラム症・学習障害・ADHDの症状のひとつに不器用さをふくめる場合がありましたが、今日では、発達性協調運動障害と合併していると考えられるようになってきています。たとえば、自閉症の中に不器用な子がいたり、学習障害の中に手先や目と手の協調運動が不器用な子が見られます。この場合は、発達性協調運動障害の障害特性があらわれているとみることができます。それぞれの障害特性に応じた支援プログラムを準備することになります。

ケアやアドバイスの求め方



Q9.わが子が発達障害とわかった場合はどのようにケアをしていけば良いでしょうか。



 その人の成長や発達段階によって、発達障害の困難さや合理的配慮の内容が変化します。私たちがお母さんによくアドバイスするのは「発達障害は、成長や発達のプロセスでだんだんと困難が現れてくるものです。だから専門家への相談は早いに越したことはない、困難さが現れ始めたときか現れる前に、気になることがあれば専門家に相談する」ということです。子供を幼少期からよく診てくださっている医師や専門家などがいれば心強いと思います。ご近所のかかりつけの医師でも良いですし、市町村の乳幼児健診で出会う保健師さんや発達相談員などの専門家でも良いと思います。相談できる人が複数だとなお良いでしょう。

 地域のネットワークを活用すること、そして、幼いころからその子の成長をよく診て知っている医師や専門家とのつながりがとても大切です。発達障害に関わる悩みや相談ごとは、1人でかかえ込まないこと、家族以外にも相談できる人を見つけることがとても大切です。

地域のネットワークの他、小さいころからの成長を知る人や専門家とのつながりが大切

 私たちは、保護者の方が信頼できる医師や専門家、アドバイザーを見つけて信頼関係が築ければ、気になる行動や問題行動がなくなっても、関係を保って、長く付き合うようにとアドバイスしています。極端ですが、ライフサイクルの視点で考えると消失したように見える症状や行動が姿や形を変えてあらわれる場合があります。一生のお付き合いをするぐらいの気持ちでいると良いでしょう。

 病院では、満15歳を過ぎると、小児科を卒業して内科で診てもらうようになります。これまで診てもらっていた医師に診てもらえなくなる場合もあるかと思います。つづけて診察を受けられない場合でも、それまでの診療経過を次の医療機関に伝えてもらったり、機会を見つけて、こんなふうに元気にしていますと現状報告したりすることが大切です。学校の場合も同じで、小学校時代の先生に中学や高校に入ってからのようすを報告したり、現在の悩みを聞いてもらったりするなどして、幼いころからの成長や発達過程を知っている人たちとのつながりを大切にしてほしいのです。

 幼いときに見られた基本的な症状や行動は、成長とともに軽減するか、消失していきます。基本的な症状が成長してから新たに出てくることはありませんが、その子が抱える問題(二次的障害とよばれる)は成長とともに姿を変えてあらわれてきます。たとえば、クラスでの友だち関係に悩んでいたのが、青年になると職場の人間関係(多くの場合は上司との関係)や恋愛関係(異性との関係)で悩むようになります。

 職業選択も人生のなかでの大きな壁となりやすいようです。就職のときにどういう職業選択をしたら良いのかわからないなど、人生の見通しと自己決定が求められるときに「決められない」ことがよく起こります。そのときに、信頼できる相談相手や友だちの存在があるかないかで問題解決の道筋はまったく違ってきます。

 現在、特に自閉スペクトラム症の支援や研究で重視されているのは「二次障害」についてです。発達障害の人は、思春期・青年期以降になるとストレスや不全感からうつ病や統合失調症、心身症などにかかりやすいといわれています。思春期・青年期はライフサイクルのうえで、困難を抱えやすい時期と言われていますが、発達障害の人も例外ではありません。精神的な不調に陥りやすい人が多いので、精神的なサポートが必要なことを頭の片隅に置いておくことが大切になります。

 大学の障害学生支援室などでは、発達障害の学生がカウンセリングを受けることで良い効果を示す場合があります。大学生活を楽しめているか、大学生活の中で友人関係に悩んでいないか、授業やゼミで疎外感に陥っていないか、進路や就職の見通しはどうか、そういうことを一緒に考えてくれる専門家や伴走者がいることで、思春期・青年期の危機や困難が乗り越えやすくなるでしょう。障害学生支援室やカウンセリング室はこの時期の支援の窓口のひとつになります。社会人の場合には、発達障害者支援センターなど地域のリソースを活用すると良いでしょう。

Q10.発達障害が疑わしいときに、最初はどういうところに相談すると良いでしょうか。



 日本には、妊娠がわかった時期から子育てを支援するシステムがあります。日本のどこの地方自治体(市町村)に住んでいても、妊娠を届け出ると妊婦健診や子育て準備の妊婦教室への参加ができます。出産後(出生後)は、母子手帳を活用したフォローアップや乳幼児健診システムへのアクセスが、すべての地方自治体で例外なく可能です。一般の乳幼児健診で気になることがあった場合には、希望すればさらに詳しく相談できるフォローアップ・システムが構築されています。

 一例をあげると、1歳半で乳児健診を受けたときに、発語や歩き始めるのが遅いのではないかという不安や兆しがある場合、あるいは日頃の育児で悩んでいるという場合です。健診での育児相談・発達相談の結果、専門の医療機関の紹介を受けたり、親子教室や子育て教室への参加を呼びかけられたりします。子育て中の親と子が孤立してしまわないような工夫がどの地方自治体でもされています。インターネットの情報に頼るだけでなく、地域の保健師さんなど身近なところの専門家の人に相談しましょう。求めるアドバイスや適切な専門機関についての情報が得られます。お子さまが保育園に通っている場合には、保育園の園長先生や保育士の先生に相談するのも良いでしょう。きっと相談の窓口になってくださると思います。

ADHDおよびLDのある子供への発達支援(地域ネットワーク)

 発達障害が疑われる場合、子育てをどうしたら良いかと1人で悩んだり、考え込んだりせずに、適切な発達支援が受けられる場所を探しましょう。乳幼児で保育園などにまだ就園していない場合には、「親子教室」や「あそびのひろば」といった育児支援ルーム(事業)に、まずは足を運んでみるのが良いでしょう。そこには発達支援の専門家がいますので、家での遊び方や関わり方のアドバイスを得ることができます。就園の手続きや希望する園についての情報を得ることもできます。また、その地域の発達支援のリソースや専門家についての情報などが得られるはずです。同じような悩みを抱えられている親子やグループの方と知り合いになれたり、情報交換したりできる点でも良い機会にもなります。

 このようにしてインターネットの情報だけに頼るのではなく、身近なところの人間関係や地域システムを活用し人間関係を広げたり、そこから情報を得たりするようにとアドバイスしています。インターネットでも役立つ情報が得られますが、情報はフィルターをかけずに発信されています。間違った情報をそのまま受け取ってしまうと、その情報にとらわれたり、振り回されたりすることがあります。情報を精査する中で、実際に相談できる「信頼できる専門家」を見つけることが望ましいし、適切な発達支援プログラムへのアクセスになるでしょう。

 今日、発達障害についての研究が進み、支援プログラムも多く紹介されるようになってきています。また、就園先の保育園・幼稚園の先生や学校の先生が発達障害や特別支援教育の研修を受ける機会も、格段に増えてきています。地域によってはピア・サポートといって発達障害の子育ての経験のある保護者の方が、経験の少ない別の保護者の方の支援をするシステムがある地方自治体もでてきています。まずは、身近な先生や専門家に相談してみることです。その地域のどこにアクセスすればどのような情報が得られ、どこで発達支援プログラムが準備されているか、それに、その地域におられる医師や専門家についての詳しい情報も得られることでしょう。

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 保護者はひとりで悩んだり、考え込んだりせずに地域のネットワークにアクセスし、インターネットからの情報だけでなく、人とのつながりから情報を得て、専門家に相談していくことがいかに大事かを痛感した。次回は「発達障害による日常生活や学校生活への影響」を中心に聞く。

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《編集部》

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