偏差値35から一発逆転…ドラゴン桜的東大生・西岡壱誠さんを変えた中学時代の恩師の言葉

 偏差値35から東大を目指すも2年連続で不合格。崖っぷちの状況で編み出した勉強法で偏差値70超、東大模試全国4位になり、東大合格を果たした西岡壱誠さん。漫画「ドラゴン桜2」やドラマの監修も手掛ける西岡氏に、一発逆転のきっかけ、受験との向き合い方等について聞いた。

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偏差値35から一発逆転…ドラゴン桜的東大生・西岡壱誠さんを変えた中学時代の恩師の言葉
  • 偏差値35から一発逆転…ドラゴン桜的東大生・西岡壱誠さんを変えた中学時代の恩師の言葉
  • 西岡壱誠さん
  • 偏差値35と偏差値77の模試結果
  • 東大を受験する中で開発した勉強法のノウハウを多くの学生や先生に伝えるために、2020年にカルペ・ディエムを設立
 「ドラゴン桜『一発逆転』の育て方」(プレジデント社)では不登校、成績低迷、通っている学校や家庭の状況など、誰が見ても東大合格からは程遠かった子たちが逆転合格を手にした10のエピソードが描かれる。監修者である西岡壱誠さん自身、偏差値35から東大を目指すも2年連続で不合格。崖っぷちの状況で編み出した勉強法で偏差値70超、東大模試で全国4位になり、東大合格を果たすというまさに「ドラゴン桜的」な経歴の持ち主だ。そんな西岡さんに、一発逆転合格のきっかけ、受験との向き合い方について話を聞いた。

東大合格ノウハウを「ドラゴン桜」に



--ドラマ「ドラゴン桜」(2021年放送)と原作漫画「ドラゴン桜2」の劇中に登場する勉強法や問題を監修をされています。起業されたカルペ・ディエムの事業内容等、ご自身の現在の活動について教えてください。

 「思考法」「読書術」「作文術」…東大を受験する中で開発した勉強法のノウハウを多くの学生や先生に伝えるために、2020年にカルペ・ディエムを設立しました。出版やコンサルティングなどを通じて、教育格差を是正するための取り組みをしています。現役の東大生と共にYouTubeチャンネル「スマホ学園」を運営し、小学生から高校生に向けた楽しく勉強できるような動画コンテンツを配信したりもしています。

 在学中に起業したのは、自分と年の近い人が勉強法や考え方を語ってくれると、聞く側も受け入れやすいかなという思いからです。社会人ではなく学生である僕たち、少し前まで実際に受験勉強をしていた僕たちだからこそできると思い活動しています。「ドラゴン桜」では、実際に僕が実践してきた勉強法や発想法、東大生はこんな勉強をしていますよという案を出して、それをドラマ脚本の中に生かしていただいています。

勉強から逃げていた子供時代



--西岡さんの子供時代について教えてください。東大に受かるというともともと地頭が良かったのではと思ってしまうのですが、ご自身を振り返ってみてどんなお子さんでしたか。

 いえ、典型的な勉強のできない子でした(苦笑)。世の中の大半のお子さんがそうであるように、勉強よりもゲームの方が楽しいと思っていたし、家にこもってずっとゲームをやっているようなタイプでした。好きな教科も…ないですね。算数は唯一、パズルみたいで楽しかったんですが、それも中学でついていけなくなりました。

--中学受験をされていますが、そのときの経験を教えてください。

 中学も一応受けたという感じです。母親とオープンキャンパスに行った中学校を受験したのですが、入試科目が算数一科目だったので、大してできてないのにギリギリのところで受かったんでしょうね。もちろん偏差値も高くないですし、東大合格者が出るような学校ではありません。小学校までは母親も教育熱心で、勉強をみたり単語カードを作ってくれたりもしましたが、僕は何がわからないのかもわからない状態。「姉妹」を「しゅうとめ」と読んだり、「アイウエオの選択肢の中から答えなさい」という問題なのに数字で答えたり…。出来の悪いことしか浮かびません。塾でも一番下のクラスだったし、塾に行くと言って近くのゲームセンターで時間をつぶしたり、とにかく勉強することから逃げていました

西岡壱誠さん
「典型的な勉強のできない子でした」と語る西岡壱誠さん

自分を変えてくれた「東大へ行け!」のひと言



--「イヤイヤやる」のではなく「嫌いなのでやらない」というのはある意味潔いですね。そんな西岡さんの勉強スイッチが入り、前に進んでいくきっかけはなんだったのでしょうか。

 中学に入ったものの、宿題は答えを写す、勉強するフリをしてボーっとしている…当然ですが成績は最低ですよね。担任との三者面談では3時間じゃ話し足りなくて、翌日も合わせて6時間話し合ったこともありました。このままでは高校には上がれないし、中学を辞めてもらうとも宣告されて。

 そんな僕を変えてくれたのは、中3のときの恩師である渋谷先生です。今考えてもよくわからない先生なんですけれど(笑)、完全に落ちこぼれていた僕に対してこう言ったんです。

 「お前って奴はやらされているばっかりで、自分の意志でやってないから成績が上がらないんだよ。お前は何がやりたいんだ? 勉強したいならすればいい、ゲームがやりたいならトコトンすればいい。ただ、お前自身がやりたいことをわかってやらない限り、お前はずっとそのままだ」って。

--これは心に刺さる言葉ですね。

 「お前は、自分はここまでの人間だって範囲を決めているから、いつまでもそこから出られない。だからお前は自分の意志がないように見えるんだよ。自分で線を決めるな」とも。

 で、「その線を超えるにはどうしたらいいですか?」っていう僕の質問に「東大に行け!」ってひと言。何なんですかね(笑)。そもそも音楽が専門の先生だし、東大のことなんて何もわかっていなかったと思うんですけれど、「線を超えてみろ」ってことを言ってくれたんですよね。それがわかりやすいのが勉強であって、東大だった。僕もよくわからないまま「じゃあやってみます」って。渋谷先生の言葉がなかったら東大を目指そうなんて思わなかったし、今の自分はありません。今でも人生の師匠です。

--「東大に行け!」「自分の線を決めるな!」というリアル桜木先生の言葉でスイッチが入ったんですね。

 もうひとつ、渋谷先生に「できない自分を払拭するために生徒会長になれ」と言われて生徒会に入ったこともきっかけです。議事録を書くのに制服の「制」の字すら書けなくて、まわりに笑われるような生徒会長でしたが、今まで自分の殻にこもって1人でゲームばかりやっていては見えなかったことが、いろいろ見えてきて。学校っていうのは、いろいろな人がいろいろな思いで活動しているんだなということを目の当たりにして、それまで何の努力もしてこなかった自分を痛感しました。生徒会もやってみるとけっこう大変で、高3の春まで活動は続きましたが、その時の僕の偏差値は「35」でした。

家族の期待も低かった



--東大を目指して勉強をはじめた西岡さんを、ご家族はどのように支えてくれたのでしょうか。

 母親は「東大って大変なんでしょ」という感じで、よくわかっていなかったと思います。小学校までは熱心だった母親も、中学受験で子供に勉強させようと頑張って、なんとか中学に行かせたけれど「行ってもやらないものはやらない」とわかったみたいで。もうそのころには放任でしたね。父親も「お前の人生好きにすればいい」って反対もしないけど応援もしない、そんなスタンスでした。

偏差値35と偏差値77の模試結果
偏差値35と偏差値77の模試結果

--親の期待値が低いというのは、良い意味で余計なプレッシャーが少なかったのだろうと察します。親は子供に過度な期待をかけてしまいがちなところがありますから。とくに都市部では中学受験熱が年々上がっています。高まる中学受験人気についてどのように感じていますか。

 正直に言わせてもらうと中学受験は嫌いです。ただ、僕のまわりの東大生に「中学受験して良かった?」と聞いてみると、「あのとき勉強の楽しさがわかった」「良い順位が取れて楽しかった」と中学受験の経験を良いものとして捉えている人も多いですね。

 とはいえ、受験勉強の渦中にいる大半のお子さんにとって、受験は辛いし楽しくないですよ。中学受験もあくまで子供が主体で、勉強をして行きたい学校がある、たとえば電車が好きだから鉄道部のある学校に行きたくて勉強するというなら良いんです。僕が反対なのは、親の方針や価値観を子供に押し付けてしまうような受験です。人間には時期があって、中学受験で伸びる子もいれば高校、大学受験で伸びる子もいます。子供の気持ちが乗らないのに「こうしなさい」と親の考えを押し付けるばかりで、子供の気持ちをないがしろにしてしまうことが中学受験ではありがちだからです。

 親は「その子の人生なんだから」という意識をもっていないとダメですね。親の言うことだけをやってきたために、高校や大学に上がっても自分で意思決定ができなかったり、逆に親の言いなりはうんざりだって反抗するようになる東大生をたくさん見ています。

中学受験の意義とは



--中学受験を経験した子と、公立中学から高校受験を経て大学受験に挑む子の間で、素地となる学習習慣や学力に差があると思いますか。

 中学受験は、有利か不利かといえば有利だとは思います。受験そのものが成功体験になることもありますし、中学受験で得られる知識、計算力、語彙力、そして努力の量を考えると中学受験をしたほうが東大にも合格しやすいのは事実。だからといって中学受験させたら良いという結論にはなりません。子育てのゴールを「東大」と決めているのなら効率的かもしれませんが、「自分の人生を自分で決めて歩んでもらいたい」というのなら、中学受験は選択肢のひとつに過ぎないと思います。

 受験して中高一貫校に入る一番のメリットは、友だちもみんな勉強していたら自分もするようになるという環境ですよね。周りに東大に入る人が当たり前にいることで「あの先輩が東大に行けるなら、自分も行けるんじゃないか」と思わせてくれる効果もあります。偏差値がどうのというのではなく、前向きに勉強に向かわせてくれる学校はたくさんあると思うので、そういう意味で「良い学校」に行くというのはアリだと思います。ただそれが杓子定規的に中学受験をしろとか中高一貫校がいいという話ではないですね。

親は選択肢を与えても、決定は子ども本人



--子供には自分で道を切り開いて向かってほしい。でも子どものためにいろいろ準備してしまうのも親心。親は子供にどんなことをやってあげればいいのか、やってはいけないのか、ぜひお聞きしたいです。

 なんだかんだ言っても、子供が進もうとする道を整備するのは親の役割なのかもしれません。子供のために塾を調べる、学校のパンフレットを集めて情報を得る、参考書を買ってあげる、良い先生を連れて来る……。子供の食生活を整えたり、勉強に意識が向くような家の環境をつくってあげたりも大切ですから。そこまでは大いにやってあげていいと思います。

 いちばんやってはいけないのが、最終決定で口を出すこと。どんなに道を整えても歩くのは子供。親が手を引っ張ってこっちに来なさい、こっちへ行きなさいと背中を押してはいけない。そこまで手助けしてしまったらそれはその子の人生じゃなくなってしまうんです。選択肢を絞ることまでは親はやっていい。ただ、「やる・やらない」選択をするのは本人です。

 親が手を引っ張ってあげなきゃと思う時期もあるかもしれませんが、高校になったら絶対ダメですね。そもそも高校は義務教育ではありませんし、自分で決めなきゃならない時期なのにも関わらず親に従おうとしていたら「あなたの人生なのに、なぜ親に聞くの」と逆に怒らなければいけないと思います。

ストップウォッチで集中時間を計測



--ご自身の経験から、小学、中学校くらいのうちにこれだけはやっておいた方がいいという学習習慣があったら教えてください。

 勉強する習慣こそありませんでしたが、今になって思えば、「書くこと」だけはやっていました。アニメとかゲームとか漫画が大大大好きだったので、誰に読まれるわけでもないのに感想をめちゃくちゃ書いていました。だから「書くこと」は身に付けてほしい。

 何について書くかは自由で、他人にはどうでも良いことでも良いんです。爬虫類の生態でも、鉄道でも、幽霊はいるかとか河童はいるのかとか、親には理解できないものでも良いし、うまく書かなくても良い。それでも書いてみて、「アウトプット=言語化」する癖をつけることがとても重要です。やはり書かないと思考は整理できないので。

--現役と浪人時代、猛勉強されたと思います。受験勉強を振り返っていかがでしたか。

 受験を振り返って思うことは、努力を本気でしたことがある人や、超頑張ったことがある経験がある人っていうのは受験も成し遂げられるんですよね。高校までの僕は努力なんて無縁の生活だったので、始めたばかりのころは勉強を継続すること自体が難しかったです。

東大を受験する中で開発した勉強法のノウハウを多くの学生や先生に伝えるために、2020年にカルペ・ディエムを設立
東大を受験する中で開発した勉強法のノウハウを多くの学生や先生に伝えるために、2020年にカルペ・ディエムを設立

 受験生のときはとりあえず机に向かって1日14時間は勉強するようにしていました。その中で本当に集中して勉強している時間はどのくらいなのかストップウォッチで測ってみたんです。すると、眠くならずにちゃんと勉強ができているのはそのうちの7時間、2分の1ほどということに気付いて。ダラダラ机に向かうのではなく、いかに集中して学習効果を高めていける時間を伸ばしていくかということはかなり意識しましたね。

--ついついスマホを見てしまったりゲームが気になったり。誘惑とはどう戦ったのでしょうか。

 僕がよくやっていたのは勉強する場所を変えること。ゲームとか漫画とか気が散るもののないところで勉強するようにしていました。これは東大生あるあるなんですが、東大生の親は我が子が勉強している姿を見たことがないと言う。みんな家の外で集中して勉強できる場所を持っているんです。自習室でも図書館でもカフェでもいい、場所を変えて気分を変えたり、集中を途切れさせないことは有効だと思います。

行ける、ではなく行きたいところを目指せ!



--「ドラゴン桜」の最初のドラマ放送から10年以上たち、再び「ドラゴン桜2」の漫画もヒット、ドラマも話題です。「ドラゴン桜」が子供から大人も魅了するのはズバリなぜだと思いますか。

 これは僕の持論でもあるんですが。みなさん「ドラゴン桜」は受験マンガだと思っていますが、実はスポーツのマンガなんです。みんなスポーツは好きだし応援したくなりますよね?作者の三田紀房先生は「クロカン」「甲子園へ行こう」などの野球マンガをずっと描いていた方で、「ドラゴン桜」の1巻にも「受験はスポコンです」と書いてあるんです。

 スポーツという言葉にはラテン語で「deportare」(デポルターレ)といって、運ぶ、転換するといったところに語源があるんです。あるものを超えていくこと、できなかったことができるようになったり、低いところから高いところを目指すという意味合いです。明確な目的があって、高い目標に向けて頑張ることこそがスポーツ。つまり、それが「ドラゴン桜」の本質だと思っています。

--「ドラゴン桜」的な東大生予備軍である受験生たちにメッセージをお願いします。

 大学でも自分の将来でも、行けるところではなく、「行きたいところ」を目指してほしいと思います。自分はここまでだったら行けるだろうって線を決めてしまう人生は楽しくありません。自分で範囲を決めないで、行きたいと思う進路に進まないと後悔することになってしまいます。

 もうひとつ。僕が出会った東大生の中でものすごく優秀な子がいて、勉強法を聞いたら、「自分のまわりには勉強が上手な子がたくさんいるから、ただその真似をしているんです」と言うんですね。「自分は勉強法のプロじゃない」ということを定義し客観視して、それ以上無駄なことをしないという。その思考がすごいと思いました。

 変に自意識が高くて、自分のやり方にこだわって、他のやり方には目もくれない奴は落ちるんです。僕も2浪してやっと「自分のやり方は間違っていたんだ」ということに気付きましたから。その壁を破れるか。最後の最後の敵は自分なんです。

--ありがとうございました。

 「塾や予備校をサボりたくなっても『お前なんで来なかったの?』って言ってくれる仲間がいるかどうかで踏みとどまれる」と話してくれた西岡さん。ドラマでは「東大専科」が一丸となって東大を目指すが、リアルな受験勉強においても、まわりの言葉に耳を傾けること、共に高い目標を目指す仲間の存在が大切だという言葉が印象に残った。

ドラゴン桜 「一発逆転」の育て方

発行:プレジデント社

<著者:ドラゴン桜「一発逆転」プロジェクト&東大カルペ・ディエム>
 ドラマ話題沸騰! ! 人気コミック『ドラゴン桜』の逆転合格は事実だった。偏差値30台の学校からのチャレンジ、ゲームにハマって昼夜逆転からの猛勉強、ビンボーで予備校に通えないけれどあきらめない、高校で不登校、過疎地の学校に再入学…「普通の子」は、なぜ頑張れたのか。10人の一発逆転東大生の奇跡の物語。
 「ドラゴン桜2」の編集を行うコルクと、同作品の編集に携わりながら教育格差への取り組みを行う東大の学生団体「カルペ・ディエム」の代表・西岡壱誠、編集者である岡崎拓実を中心に企画。「だれでも人生は逆転できる」という理念に共感した家庭教育誌「プレジデントファミリー」により制作された。恵まれた環境などがない中で東大に合格した学生を取材し、「一発逆転」合格の法則を研究する共同プロジェクト。


《吉野清美》

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