激しくも、豊かな感情を示すギフテッドの子供5つの特徴

 一見誤解されがちなギフテッドの子供たちの特徴とは? うちの子は発達障害? ギフテッド? と感じたとき、保護者がわが子を支えるコツ、支援や配慮に繋がるヒントを、書籍「ギフテッドの個性を知り、伸ばす方法」(小学館/著者:片桐正敏、他)より紹介する。 

教育・受験 未就学児
精神運動性過度激動/「ギフテッドの個性を知り、伸ばす方法」(小学館)より
  • 精神運動性過度激動/「ギフテッドの個性を知り、伸ばす方法」(小学館)より
  • 感覚性過度激動/ギフテッドの個性を知り、伸ばす方法」(小学館)より
  • 想像性過度激動/ギフテッドの個性を知り、伸ばす方法」(小学館)より
  • 知性過度激動/ギフテッドの個性を知り、伸ばす方法」(小学館)より
  • 情動性過度激動/フテッドの個性を知り、伸ばす方法」(小学館)より
 映画等のイメージから「ギフテッド」という言葉は、幼いころより才能を発揮し、脚光をあびるような非凡な天才児のことをイメージしがちだが、小学館より発売中の「ギフテッドの個性を知り、伸ばす方法」(著者:片桐正敏、他)によると、「高い知的能力をもち、さまざまな潜在的可能性を秘めた、配慮や支援が必要な子供」をさすのだという。

 ギフテッドの子供は、どうして支援や配慮を必要としているのか。実は、適切な注意をうまく切り替えたり保持したりすることが苦手、同級生や学校生活に馴染めない等、本人なりに多くの不得手を抱えていて、日常生活や人間関係に支障が出るケースも少なくない。けれど、高い知的機能をもつゆえに困り感が周囲に伝わりづらく、誰にも助けを求められないまま悩んでいる場合が多いのだ。

 発達障害やギフテッドの研究・支援に長年携わり、ギフテッドたちの成長を見守ってきた北海道教育大学旭川校教授・片桐正敏氏をはじめとした複数の研究者たちが共同で執筆した「ギフテッドの個性を知り、伸ばす方法」より、我が子はもしかしたら発達障害? ギフテッド? と感じたときのヒントとなるギフテッドの子供が示す特徴を紹介する。

ギフテッドの過度激動(Overexcitability)とは



 精神科医のカジミシェ・ドンブロフスキは、ギフテッドには環境からの刺激に対する感受性や興奮性が高く、時に強い行動的・感情的反応を示す傾向があると考え、この傾向がギフテッドらしい能力の早期発達や人格発達を促す鍵の一つになると考えました(肯定的分離理論とも言います)。こうした特徴を過度激動(Overexcitability,OE)と言います(超活動性や過興奮性)等の訳がありますが、ここでは表記を過度激動と統一します。

 ドンブロフスキは、過度激動には脳神経の興奮のしやすさといった神経学的背景が想定されており、刺激に対する敏感性(sensitivity)や強い反応性(intensity)と表現されることもあります。過度激動はギフテッドの子どもの「精神的・行動的な激しさ」を示す言葉で、ドンブロフスキは過度激動を5つ(精神運動面、感覚面、想像的な面、知的な面、情動面での激しさ)に分類しました。一般的に、1人の中で、1つあるいは複数の過度激動が高い場合が多く、5つの過度激動すべてが高い場合は少ないとされます。

 ドンブロフスキは、通常自然に受け入れる物事に対して、過度激動を示すギフテッドは、精神的・行動的に過剰に反応してしまうため、日常にある疑問や矛盾に気づきやすく、強い関心やモチベーションを持つと考えられています。ギフテッドの過度激動による反応は、周囲と質的に差異を生みやすく、本人の中での葛藤や集団生活上の問題につながることがあります。そのため、ギフテッドの子どものカウンセリングを行う上では、自身の過度激動に関して理解を深めることが重要視されています。海外では過度激動の評価尺度である「OEQ-II14」が開発されており、日本でも現在私たちが原著者の許可を得て、日本語版OEQ-IIの作成を行っています。以下、尺度の質問項目の一部を参考までに挙げてみます。

過度激動日本語版OEQ-IIの質問項目例
1 精神運動性・私は動いているのが大好きだ。
・私は負けず嫌いだ。
2 感覚性
・芸術鑑賞は、総じて、夢中になる体験だ。
・自然の中の美しさに、感動する。
3 想像性
・退屈だと感じると、私は空想を始める。
・ 心の中に思い描くものは、現実のものと思えるほど鮮明だ。
4 知性
・自分の考えを、しっかり持っている。
・ 問題を解決したり、新しい概念を発展させたりすることが大好きだ。
5 情動性
・喜び、怒り、興奮、絶望などの感情を、私は強く感じる。
・悩みや心配なことが、たくさんある。

 次に、過度激動を強く示すギフテッドの子どもがどのような特徴を示すのか、5つの過度激動を紹介していきます。

精神運動性過度激動


一般的な生活では、刺激が足りない。自分に必要な強い刺激を求める傾向がある


 精神運動性スコアの高い人は、活動的でエネルギッシュな行動や生活を示すことが特徴です。一方で、「落ち着きがない」、「やるべきことをせずに思いついたことを衝動的に行う」といった“問題”として表面化する可能性もあります。例えば、私が出会ったある子どもは、着席を維持することが難しく、部屋を歩き回ったり、寝転んだりしながら知能検査や学習支援を受けていました。一見すると、活動に飽きたり、質問を聞いていないように見えるのですが、この子にとっては、集中を維持するために、むしろ身体を動かすといった刺激が不可欠なのです。このように、本人にとって必要な刺激を得るための活動が、 “普通”として求められるルールや行動から逸脱してしまうこともあります。学校の先生には、「精神運動性過度激動のスコアの高い子の特性」という方向で理解をしていただけると、子どもが過ごしやすい環境を整えることに一歩近づくのではないでしょうか。

感覚性過度激動


身体への外部情報のとりこみ方は、人それぞれ。刺激に対しての制御が上手にできない


 感覚性スコアの高い人は、視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚といった環境からの刺激によって生じる感覚体験が通常の人よりも強いことが特徴です。「感覚過敏」との違いは、感覚性過度激動は感覚体験のポジティブな側面にも注目している点です。例えば、物の色合いや質感、音やメロディに対して強い興味や喜びを感じるといった側面にフォーカスすれば、「感覚体験による快感情を増幅できる」ということでもあります。この特性があることで、些細な日常から芸術鑑賞まで、生活に彩りや豊かさが与えられることでしょう。ただ、幼児期・低学年期は、感覚に由来する不快感を言語化したり、不快な環境・刺激を避けたりといった対策を本人ができないことが多いので、子育てや集団生活が難しくなる傾向があります。早めに感覚性スコアの高さに気がつくと、本人も周りも楽ですね。また、聴覚の刺激を緩和するノイズキャンセリング対策など、環境からの刺激を緩和する選択肢があることも知ってほしいです。

想像性過度激動


想像力が、強い。想像に没頭するあまり、日常生活では、ボーッとしているように見える。


 想像性スコアの高い人は、豊かな想像力が特徴です。幼少期には、現実と空想が混ざった話をすることもあります。空想に没入するあまり、ボーッとしているように見えることもあります。考え方が柔軟で、思いがけない発想や発明をすることがあります。また、物語づくりや図画工作、レゴといった創造的活動を好む傾向があります。イマジナリーコンパニオン(空想上の友だち、Imaginary Companion、以下、IC)を持つことも多く、欧米では半分くらいの子に見られ、日本でも同じ結果が出ています。ただ、欧米では大人には見えないICが多く、日本ではぬいぐるみのICの割合が多いようです。空想上の国や世界をつくり遊ぶ(Imaginary World Play)ギフテッドもおり、IQや創造性の高さを予測するとされます。ICを持つことは、不安や緊張の解消といったストレス緩和の側面もあるので、さほど心配をせずとも大丈夫です。

知性過度激動


知的好奇心が強く、言語発達も早熟。時として、周囲と話が合わない困り感を抱える。


 知性スコアの高い人は、自分の考えを持ち、好奇心が旺盛です。ギフテッドの子どもに見られる知的・言語発達の早熟化は、知性過度激動が関わっている可能性もあると考えられています。また、自分が関心を持ったことは、粘り強く取り組みます。論理的な思考を好み、「なぜ?」、「どうして?」と質問をしたり、調べたり、思索に没頭したりします。いじめ、環境問題、ジェンダー、異文化対立など、社会問題や倫理的な問題に関心を示す人もいます。一方で、本人が魅力を感じない事柄に対しては、「しないといけないものだ」といった説明だけでは、なかなか動きません。客観的に分析する傾向もあいまって、例えば宿題の提出ができなかったことに対して、「宿題の意義や一日のスケジュールからみた構造的問題」といった内容を指摘し始め、「反省が見えない」と、叱られることもあります。日々の生活の中では難しいことですが、大人は、本人が納得できるよう、論理的な説明を心がけられるとよいですね。

情動性過度激動


感情のコントロールが、難しい。冷静に行動するにはどうすればいいのか、本人も悩んでいる。


 情動性スコアの高い人は、人や場所、物に対して強い感情を示す特徴があります。また、ポジティブな感情もネガティブな感情も強く増幅され、 短時間に入れ替わることもあります。ある子どもは、お出かけに際して「今日は最高の一日だ! 楽しい!!」と喜びを全身で表現しながらも、自分の思い通りにいかなかったことがきっかけで「最悪な一日だ!」と泣きながら強い怒りを表しました。感情の起伏が大きく、本人も周囲もその感情の影響を受け、疲れ果てることもあります。さらに緊張や不安、恐怖、羞恥心といった感情も強く増幅されるため、新しい環境では心理面での不調を訴える人もいます。人間関係からの影響も受けやすく、共感、同情、責任等を強く感じて、過度に人助けをしたり、自責的に振る舞うこともあります。「情動性過度激動」という言葉を知ることで、「自分は負の感情が増幅するような人や事柄とは、心して距離をとる必要がある」など、環境調整の方法を考え始めるきっかけになるといいですね。

<協力:小学館/イラスト:平松昭子>
※本記事内で紹介している内容についての詳しい情報、参考文献等は本書内をご確認ください
ギフテッドの個性を知り、伸ばす方法

編著/片桐正敏 著/小泉雅彦 著/日高茂暢 著/富永大悟 著/ギフテッド応援隊 構成/楢戸ひかる
本書は「ギフテッド」と呼ばれる子どもや知能の高い子どもの個性を知り、伸ばす方法についてわかりやすく解説します。保護者が我が子を支えるコツを専門の大学関係者と当事者、その保護者たちが執筆しました。本書のねらいは、子ども一人一人の特性を見極めて理解し、少しでも保護者が子育てできるようにするための書籍です。願わくば、子どもにも読んでもらって自己理解が深まるように、イラストやまんがで、直感的に理解し、読みやすく工夫をしました。親の言葉や当事者手記も掲載し、学校側の理解を促すきっかけになる内容です。アカデミックな部分と全国組織の親の会「ギフテッド応援隊」にも参加してもらっています。(「はじめに」より一部抜粋)

《編集部》

【注目の記事】

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top