8人に4リットルのジュースを分けると1人何リットル?小学6年生の約半数が間違えた理由

 多くの小学生が文章題が苦手になってしまう原因とは。全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で小学6年生の約半数が間違えた算数の問題から、ICT教材クリエイターの玉井満代氏がその原因と解決策を説く。

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  • 「玉井式 公式にたよらない『算数的読解力』が12歳までに身につく本」(KADOKAWA)より

 全国の小・中学生の学力水準を把握するために、文部科学省・国立教育政策研究所によって行われる全国学力・学習状況調査は、「全国学力テスト」ともいわれ、毎年4月に小学6年生と中学3年生を対象に実施されている。

 令和3年度(2021年度)実施の同テストの小学生・算数で出題された「問題4(2)」の「8人に、4リットルのジュースを等しく分けます。1人分は何リットルですか。求める式と答えを書きましょう。」の答えは「0.5または2分の1」となるが、「2」と解答した児童が36.0%、その他の間違いを含め約半数が誤答という結果となった。

 20年にわたる学習塾での指導経験を生かし、「玉井式 国語的算数教室」「図形の極」等、パソコン・タブレットを使用して学習する教材を大手塾や私立小学校等に全国展開する、ICT教材クリエイターの玉井満代氏は、多くの小学6年生が間違えた原因は「問題文の読み取りができていない」「イメージング力不足」であると指摘している。

 「玉井式 公式にたよらない『算数的読解力』が12歳までに身につく本」(KADOKAWA)より、その詳しい解説と解決法を紹介する。(以下、同書本文より一部改変・抜粋して掲載)

文章題から内容をイメージできない子が多い

 玉井式算数方式では「文章を読み解いてイメージする力」を大切にしています。「イメージング力」は算数的な思考力や表現力も育てます。

 たとえば、【「全国学力・学習状況調査」令和3年度(2021年度) /問題4(2)】」の問題、

 「8人に、4リットルのジュースを等しく分けます。1人分は何リットルですか。求める式と答えを書きましょう。

 でいえば、そもそも、もととなる「1リットル4本」のイメージができていない、というのが私の見解です。

 4リットルという数字から1リットルのペットボトル4本と、それを8人で分けるんだとイメージできれば、1人分はボトル1本の半分になると想像できるはずです。特に計算せずとも答えは出てきますね。少なくとも1リットル よりは多くないとわかるはずです。

 ところが、イメージをせず、「8人に、4リットル」の文字(数字)だけで判断し、計算しやすい「8÷4」の式を立て、1人分は「2リットル」と答えてしまう。このような子が36%(約36 万人)もいたのです。

 問題文中にある数字を見て、よく考えることなく機械的に計算式を立てて間違った答えを出してしまう。たった3行の問題文を読み解けていないのです。この原因は、問題文に書かれている内容をイメージできない、イメージをしようとしないことと、そもそも式のもつ意味をしっかりと考える習慣が身に付いていないことにあると思います。

イラスト:のじままゆみ

 真の計算力とは、複雑な計算を速く正解できることだけではなく、計算式のもつ意味の理解ができていることです。この例で言えば、「8÷4」と「4÷8」は式のもつ意味はまったく違います。4リットルのジュースを8人で分けたとき、2リットル(4リットルの半分ですよね)にはならないというイメージング力と式の意味を考える計算力は、ぜひ養っておきたいものですね。

公式や「やり方」による解答方法ばかりを教えると、
計算式のもつ意味を考える力を育みにくい

 では、なぜ多くの子供たちに真の計算力が身についていないのかというと、教え方の手順に課題があると考えています。子供たちは「やり方」がわかって正解できるようになると、計算式のもつ意味は二の次になってしまうものです。

 単純な計算なら正解できるけれども、文章題になると苦手になる子供たちを多く見かけますが、それはその子供たちの勉強や学力が足りないからではなく、先に「答えを出すための技術的なやり方」や「公式を覚えること」を優先してきた教育に起因しているように思うのです。

 本来、すべての子供は豊かな想像力や発想力を備えています。しかし「やり方」や「公式」を教わり、類題の反復練習だけを繰り返していると、「やり方」を忘れたらできなくなる上に、算数に必要なイメージング力や式の意味を考える力を養うことが難しくなるのです。

 もちろん、「公式」や「やり方」を覚えたほうが手っ取り早く答えを導き出すことができますし、子供たちもとにかく正解すれば丸をもらえるので、心理的にはすっきりします。ところが、そのような教え方の繰り返しでは、時間がたつとともに「公式を忘れたからできない」となりがちです。公式を教えるにしてもその意味をよく理解できていない場合、文章題などで少し複雑になってくるともうわからなくなってしまうのです。

 先にやり方を教わってから問題を解くのは、まるで犯人を教えてもらってから推理小説を読むようなものです。「誰が犯人なんだろう」と詳細に注意しなくなるのと同様に、「この問題文はどういう意味なんだろう」と条件を整理し、ていねいに思考することをしなくなるのは無理もない気がします。

 試行錯誤させつつじっくりと考えさせると、子供たちのイメージング力が育ち、「やり方」や「公式」を知らなくても立式できるようにもなります。また公式を習った後でも忘れてしまうということが少なくなり、たとえ忘れてしまっても、考えようとします。

 算数の習いはじめには、速く答えを出す方法ばかり教えるのではなく、計算式の意味を理解したうえで、自分で考えて立式させる習慣づけをしておきたいものですね。






《編集部》

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