アフターコロナ、2024年度小学校受験はどう変わる?

 親世代のころの小学校受験とは違い、小学校受験が身近なものとなっている。昨今の小学校受験の現状と、受験を決めたときの志望校の選び方について、教育図書21の新中義一氏に話を聞いた。

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  • 教育図書21代表取締役の新中義一氏
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 昨今、首都圏を中心に受験者数を伸ばしていると言われている「小学校受験」。その背景には、中学受験の激化や、共働き世帯を受け入れる体制を整える私立小の出現など、時代の変化に連動した理由が推察される。

 「小学校受験が、ごく一部の限られたご家庭が取り組むものというイメージから、選択肢のひとつとして一般化しつつある」と語るのは全国最大の小学校受験模擬テスト「小学校受験統一模試」を主催している教育図書21の代表取締役の新中義一氏だ。今回は、昨今の小学校受験の傾向や、コロナ禍を経て小学校受験はどのように変わるのかなどを聞いた。

増加傾向にある小学校受験、トレンドは「国際教育」

 近年の中学受験の激化やコロナ禍における公教育への不安、さらには首都圏における「パワーカップル」世帯が増えたことなどにより、少子化が社会問題となっているにもかかわらず、小学校受験者数が右肩上がりで増えている印象がある。実際のところを新中氏聞くと「増えている印象はあるが、実は小学校受験者数は中学受験者数と違い入試日が分散しているため、正確な数字をとることが困難」と前置きしつつ「我々の実施している小学校受験統一模試の受験者数や、小学校受験塾である伸芽会やジャック幼児教育研究所、理英会などと数値を持ち合い、推察しています。その数値を見ても、感覚的にも、近年、小学校受験者数は確実に増えています」と語る。

教育図書21 代表取締役の新中 義一氏

 さらに、こう付け加える。

 「受験者数は増加傾向にありますが、特定の学校が人気を独占しているというわけではありません。どこの学校も少しずつ受験者数を増やしているという印象です。2019年に新設され、毎年高倍率となっていた東京農業大学稲花小学校も、2023年度入試は落ち着き、安定した印象です」。

 とはいえ、やはり注目の集まる学校はある。2023年度の小学校受験では青山学院初等部、昭和女子大学附属昭和小学校、西武学園文理小学校の3校は前年度に比べ、志願者を100人以上伸ばした。これらの人気校に共通しているのは、英語教育やグローバル教育を推進していることだと新中氏は言う。実際、伸芽会やジャック幼児教育研究所、理英会、教育図書21が合同で1,500名ほどの小学校受験経験者の保護者に行った「志望校の決め手となった要因についてのアンケート」の結果を見ても、この傾向が見られるという。新中氏は「英語教育に力を入れており、それを保護者に伝える広報活動に実直に取り組んでいる学校に注目が集まっている」と分析する。

 そんな中、国公立小学校の受験は減少傾向にある。以前は全体で5,000人弱の受験者数(実数)が見込まれていたが、昨今では4,000人強くらいの規模感になっているという。ネックとなっているのは抽選制度だ。

 「国公立の小学校受験は、試験の前後で抽選の過程が入ります。抽選は、完全に運次第。せっかく対策をして準備をしても、抽選結果でそれが水の泡になってしまう可能性もあるため、避ける判断をする家庭が多いのではないでしょうか」と新中氏は推測する。

 ただし、国際学級があり2022年に国際バカロレア認定校となった東京学芸大学附属大泉小学校は、唯一志願者を増やした。このように国公立小学校でも、国際教育に力を入れていることが伝われば注目を集めている点から、「昨今の学校選びの傾向が現れており、興味深い」と新中氏は語った。

対面での学校説明会が復活、問われる学校側の情報発信力

 2024年度の入試(2023年実施)は、前年度と比べ、どのような変化があるのだろうか。まずあげられるのが、リアルな場での学校説明会や体験会の実施の復活だ。コロナ禍による影響で、オンライン実施がメインとなっていたが、今後はリアルの場での対面式が増えそうだ。オンラインの場合は気軽に参加できるが、リアルの場合は会場に足を運んでもらうために各学校の情報発信力がますます問われるのではないかと、新中氏は分析する。

 先述の「志望校の決め手となった要因についてのアンケート」調査では、1位には「教育方針・校風」、そして2位が「通いやすさ」という結果が出ている。この結果を紐解くと小学校受験学校選びに変化が見えると新中氏は語る。

 「以前の小学校受験といえば、親や祖父母と同じだからといった『この学校に入学させたい』という志望校ありきで受験がスタートしていました。しかし昨今では、『受験するタイミングを小学校入学時にするか、中学、高校入学時にするか』という判断から、小学校受験を選択するご家庭が増えています。小学校受験が特別なものではなくなってきているのです。そのことはアンケート結果で2位に『通いやすさ』がランクインしていることからもわかります。つまり、これまでのように『ブランド』や『名門校であるか』で学校を決めるご家庭の比率が少なくなっているということです。より良い教育環境を用意し、それが伝われば人気校になるでしょう」。

「小学校受験学校選びに変化が見える」と新中氏

 これは志望校決定のタイミングにも影響している。以前のように親(や親族)が通ったから我が子も、という受験の場合、極端に言えば志望校は生まれた瞬間から決まっていることになる。しかし、昨今はどのタイミングで受験するかを考え、周りのお子さんも受験を考えているからと小学校受験に踏み切る家庭が増えてきたという。このような家庭の志望校選びのピークは年長時、幼児教室に通いだすタイミングも年中児が多いと新中氏は言う。

 「つまり、親世代の考える小学校受験とは、まるで様相が違うと言えます。ご両親に受験の経験がないので、いろいろとわからないことが多いだろうと推察しています。幼児教室に通ってくだされば、塾側からさまざまな『やるべきこと・やらなくて良いこと』をお伝えできます。しかし、小学校受験をするかどうかを考えるために、通塾する前の段階で学校見学などに行く場合は、『お作法』を調べていくことをお勧めします」。

 多くの学校では説明会時の親の服装や、スリッパなどの持ち物などに決まりごとがある。これらを「お作法」と呼んでいるのだが、それを知らずに学校説明会に行き、浮いてしまうといった可能性があるのだ。こうした情報を調べ始めると「お礼状は必須、便箋はこのブランド」などというものまで出てくる。

 「検索をすると、中には真偽を疑いたくなるような情報もあるでしょう。これらは、常識の範囲内で考えれば大丈夫です。先生方もお忙しいので、あまり過敏にならずに判断していただくのが良いと思います。幼児教室に通っている場合は、幼児教室の先生に相談してみることが最善です」と新中氏は述べた。

受験当日に見られるポイントにも変化

 小学校受験の試験といえば行動観察、ペーパーテスト、そして面接だ。行動観察では、集団の中でのふるまいを見ることで、学校の教育方針や校風に合っているかどうかを判断される。コロナ禍では集団行動をすること自体が憚られたため、行動観察の内容が変わってしまったり、とりやめになったりした学校もあった。しかし、2024年度は大きな感染のピークがこなければ復活することが予想されている

 そのほか、昨今の受験問題の傾向として、ペーパーテストではプログラミング的思考が問われる問題が出題されるようになった。これは2020年度に小学校の教育指導要領改訂に伴い、小学校の教育にプログラミング教育が導入された影響だという。

 さらに、行動観察の評価ポイントも変わりつつあるという。新中氏は、「以前であればリーダーシップや協調性というポイントが評価されていましたが、昨今では課題解決能力が重点的に評価されていると感じています。正解のない時代と言われる昨今において、大人にも必要とされる現状の課題の克服能力を見ているのだと思います」と語った。


 ここまでは昨今の小学校受験の傾向・トレンドについて紹介をした。次回は、「わが子に合った志望校選び」について聞いていく。

新中 義一氏 プロフィール


教育図書21 代表取締役 
全国最大の小学校受験模擬テスト「小学校受験統一模試」を、300以上の幼児教室と共同開催している。そのほか、幼稚園・小学校受験情報誌の出版、さらに幼児・小学生学習教材専門の出版、小学校受験の総合ポータルサイト「みつめる21」も運営。

《田中真穂》

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